変形性膝関節症に対して行うTKA(人工膝関節全置換術)について+機種の特徴について

TKAについて

どうも。

管理人のKnee-studyです。

 

今回は、変形性膝関節症に対する治療法で大きな成果を上げているTKA(人工膝関節全置換術)について記事にしていきます。

 

人工関節の分野は手術の中でも改善度が高く、術前よりも身体機能が上がるといわれています。

故に費用対効果が高いとされています。

 

このように効果の高い人工関節は、今後より進むであろう高齢社会において急増するものと思われます。

 

TKAの性能に関しては日進月歩で、多くの機種が研究・開発されており、もとの膝の動きに近い状態を再現できるようになってきています。

 

このように一口に「TKAの手術を受けた」といっても、”どんな機種なのか?”について理解しておく必要があります。

これは当然ですが、術後のリハビリにも影響することであり、人工関節の機種によって理学療法アプローチも完全ではありませんが多少は変わってきます。

 

そのため、医療従事者は当然ですがある程度、理解を深めておく必要があります。

 

ということで今回は、変形性膝関節症に対して行うTKAについて記事にしていきたいと思います。

 

 

1.TKA(人工膝関節全置換術)とは?

TKAとは、変形性膝関節症によって変形した関節を人工の関節(人工関節)に置き換える手術のことを言います。

痛みの原因になる部位を手術で取り除くため疼痛の改善に大きな効果があります。

 

人工膝関節の手術件数は年々右肩上がりであり、10年前と比較すると件数だけ言えば5~6倍程度まで増えています。

詳細はこちらのページでみることが出来ます。

TKA/UKA/PFAレジストリー統計

 

この結果を見れば、現代医療において人工膝関節の需要は非常に高いと解釈できますね。

では、なぜそんなに人工膝関節の需要が高いのかを考えてきましょう。

 

TKAを受ける対象(適応)

TKAの適応基準は存在しますが、絶対的な適応はありません。

※膝が悪いことで命が失われるわけではないので、受ける側が拒否すれば受けなくてもいいわけです

 

このように絶対的な適応基準はありませんが、手術することを強く勧める基準は存在します。

 

□膝の痛みにより歩行障害となり、満足に歩けない方

□膝関節の動きが悪い方(まっすぐ伸びない、あまり曲げられないなど)

□痛みがひどく、日常の生活に支障をきたしている方

□薬や運動などの保存的な治療では痛みが改善されない方

□レントゲン検査で、骨が著しく変形している方(K-L分類でグレードⅡ以上は基本的に適応となる)

 

TKAの手術を受けるタイミング(時期)

以下の症状があれば、TKAの手術を受けるタイミングとなります。

 

□関節が固くなっている、あるいは腫れているor水が溜まる

□湿っぽい天気の日に痛みが強くなる(気圧の変化で痛みが出る)

□思いどおりに動けなくなった、歩けなくなった

□薬や杖を使用するだけでは痛みを十分に和らげることができない(薬だけでは対処できない)

□痛みのためによく眠れない(痛みによる夜間不眠)

□体を一定時間動かさずに休めていると関節が固くなる(膝がこわばる)

□関節の動きが悪くなっている、膝の曲げ伸ばせる範囲がせまくなった

□歩いたり階段を上ったりするのが困難になった

□過去に膝を怪我したことがある(靱帯損傷や半月板損傷etc…)

 

TKAを受けることで得られるメリット

TKAを受けることで多くのメリットがあります。

●膝の痛みが消失する(術後の疼痛はあります)

●術前と比べて歩行能力が劇的に改善する

●曲がって固まっていた膝が伸びるようになる

●膝の変形が矯正されて見た目も良くなる

●膝の動きが悪いことで生じていた他部位の機能障害(腰痛など)も解消する可能性がある

 

などなど比較的メリットの多い手術になります。

メリットが多い点も需要の高さに繋がっているんでしょうね。

 

TKAを受けることで起こり得るデメリット

TKAを受けることで多くのメリットを受ける反面、デメリットも存在します。

 

●膝の屈曲可動域は120~130°程度に留まるため、和式生活に支障をきたす

●術後、痛みが残存するケースがある

※慢性的な疼痛に移行するケースは全体の1~2割と報告する文献あり

●片側だけ手術をした場合、変形が矯正されて脚長差を生じる可能性がある

●術前に膝の伸展制限が強い場合、手術により矯正されてもまた戻ってしまう可能性がある

 

デメリットに関しては、メリットと違って必ず生じるものではありません。

術後、非常に可動域が得られる例や痛みが全くない例もあります。

ただし、可動域に至っては人工関節の許容可動域がありますので”動きすぎ”もリスクになるためいずれにせよ多少なりとも和式生活には支障をきたします。

※和式生活が可能になるかどうかは術後リハビリが大切になります。動作指導とそれが可能になるための身体機能の改善がポイントになります。

 

2.TKAの機種一覧とそれぞれの特徴について

ここまででTKAとは一体なんぞや?、どういう人がどんなタイミングでTKAの手術を受けているのか?などご理解いただけたかと思います。

 

ではここからは、

知っているようで意外と知らない、

あまり理解する必要がなさそうで意外と重要である

「TKAの機種」について理解していきたいと思います。

 

TKAが普及し始めたころは、膝の関節すべてを人工物に置換してしまうタイプ(機種)が当たり前のように勧められていました。

しかし研究が進むにつれ、徐々に靱帯を切除せずに温存させるタイプ(機種)も普及しだし、それぞれの施設もしくは患者の状態に合わせて扱うタイプ(機種)が違ってきています。

 

このようにTKAの機種を理解することで、執刀するDrの思考と患者の状態もほんの少しだけわかるようになります。

 

では実際にTKAの機種はどんなものがあるのでしょうか?

以下に一覧表を載せております。

表:TKAの機種一覧とその特徴について

 

それぞれの詳細な特徴は後日紹介する予定です。

今回は、このそれぞれの機種の特徴を簡単に紹介します。

 

①PS型のTKA

PS型は十字靱帯どちらも切除し、すべて人工物で膝の動きをコントロールしています。

 

自身の組織を極力取り除いて、人工的に膝の動きを再現している(ポストカム機構)わけなので、エラーが生じにくくなっています。

そのため治療成績および適応はこのPS型のTKAが最も高くなっており普及率も高い状態をキープしています。

 

CR型やBCR型と比較して注意すべき点が少ないため、再現性は高くなるものと思われます。

そして、CS型やBCR型と比べてPS型の手術件数は非常に多いです。

 

②CR型のTKA

CR型のTKAは、後十字靭帯を温存し後方安定化は自身の組織で行うようになっています。

自身の靱帯により制御を行うため、術後違和感なく膝を動かすことが出来るであろうとされています。

靱帯の固有感覚も残存するため、膝の微妙な動きも再現される可能性があります。

 

ただし、そういったメリットは後十字靭帯が”正常”であることが大前提です。

後十字靭帯の変性や拘縮などがある場合は、術後膝のロールバック機構が破綻し膝の可動域制限および可動時に疼痛が生じる可能性があります。

 

ロールバック機構についてはこちらの記事をご覧ください。

膝関節のロールバック機構とは?~膝の屈曲を正常に行うために必要な機能~
今回は、膝関節のロールバック機構についてまとめていきます。このロールバック機構は後十字靭帯(以下、PCL)の機能により生じる膝の正常な動きのことを指します。ロールバック機構が機能することで、膝の屈曲がスムーズに行えるわけです。正常の膝だけでなく、TKAにもこの機構を生かした機種が多く使われており、術後のリハビリを行う上で重要なチェックポイントになります。

 

また、前十字靭帯は切除するため、その状態で後十字靭帯が正常に機能するのか?といった意見もあるようで、そういった背景からPS型を使用する施設も多いわけですね。

 

CR型の普及率もPS型同様に高くなっており、CS型・BCR型と大きく差が開いている状態です。

 

③CS型のTKA

CS型はインプラントの構造によって十字靱帯の働きを代用するというものになります。

ちなみにこのCS型の場合は、後十字靭帯を”温存するorしない”が選択できる機種になっています。

 

CS型の場合、膝の回旋運動を正常に近い形で再現してくれるためメリットは大きく感じますが、

挿入するインサートが厚すぎて、膝の可動域制限が生じる可能性が高くなるのがデメリットになります。

 

CS型はまだまだ普及が進んでおらず、効果判定のための症例数も少ない状態です。

 

 

④BCR型のTKA

BCR型のTKAでは、前十字靭帯と後十字靭帯両者とも温存するタイプになります。

前十字靭帯はこれまで必ず切除されてきましたが、このBCR型で温存することが可能になっています。

このように十字靱帯をどちらも温存するため、膝の制御がより正常に近い形で行えるというコンセプトになっている反面、術後の痛みや膝の可動域制限が残存しやすいというデメリットも散見されています。

 

どの機種が優れているとかそうでないとかで判断できない

上記4種類の機種を簡単に紹介しましたが、じゃあ結局どれが最も優れているの?と思いがちですが、実際は患者の状態次第で適応が変わってくるため、一概にどの機種がよくて、こっちは悪いなどの判断は出来ないということです。

 

●PCLが変性しているならPS型のTKAを選択

●PCLの機能は十分に残っていると判断されたらCR型のTKAを選択

●ACLの機能も良好と判断されたらBCR型のTKAを選択(ただし手術可能なDrはまだ少ない)

●極端な膝の可動域制限をきたしている場合はPS型のTKAを選択

 

などの基準はある程度あるのかもしれませんが、あとはDrの判断次第というところになると思います。

当院でも、CR型のTKAは基本的に第一選択とし、検査結果次第でPS型のTKAやBCR型のTKAを選択されているようです。

※CS型のTKAは当院では取り扱っていないため、私自身もリハビリで携わったことがありません・・・

 

ということで、人工膝関節は単純そうに見えて意外と奥深い分野であることが少しご理解いただけたでしょうか?

 

リハビリの世界では、ガイドラインやエビデンスが先行してしまっているため、基本的にTKAと聞けば、一まとめにして治療アプローチを検討しがちです。(そうでないスタッフ・施設も当然ありますが・・・)

そのため、術後の治療経過もバラつきが出てしまいがちです。

それぞれの特性を理解することで、見えてくる問題もあるかもしれないってことですね。

 

 

3.まとめ

今回は、変形性膝関節症に対して行うTKAについてと、TKAの機種一覧とその特徴についてまとめていきました。

TKAについては年々手術件数が右肩上がりとなっており、今後も増加する見込みであること、なぜこのようにTKAを受ける方が急増しているのか?などについて触れていきました。

そして、そのTKAにはどんな機種があるのか?、それぞれで違った特徴・特性があり患者の状態に合わせて適応があるといった内容をまとめていきました。

 

変形性膝関節症による問題(機能障害)を考えていくことも非常にやりがいを感じますが、

TKAのように、それぞれの機種の特性を理解してそれを元に訓練をすることで想定通りの反応が得られるとこちらも中々やりがいを感じるものですね。

 

術後だからといってルーティン化しすぎると、イレギュラーな問題が生じた時に何も対処できなくなります。

そうならないように少しでも自分のベースとなる知識を取り込んでおきたいものですね。

 

それでは本日はこの辺で。

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました!!

 

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