変形性膝関節症や人工関節置換術(TKA術後)の歩行時に起こる「こわばり感」について

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どうも。

管理人のKnee-syudyです。

 

今回は、変形性膝関節症やTKA術後の患者の異常歩行についてです。

膝関節疾患の影響により歩行時に膝がこわばってしまい上手く歩けないという訴えは比較的多く聞かれます。

 

この「こわばり感」に対しリハビリを行っていくわけですが、なかなか改善が得られないこともしばしばあり、患者の満足度に影響したことも経験があります。

 

今回はこの変形性膝関節症やTKA術後に生じる「膝のこわばり感」についてSKG(stiff knee gait)という用語とからめて考えていきたいと思います。

 

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1.歩行時の「こわばり感」について

変形性膝関節症患者やTKA術後の患者は歩行時に「膝がこわばって上手く動きません」という悩みをよく聞きます。

ではそのこわばり感ですが、一体どの時期に生じているのでしょうか?

それは歩行周期の中の「立脚後期~遊脚初期」の間になります。

 

このこわばり感が生じることで、

立脚後期から遊脚期にかけて膝の動きが消失し、伸展位のまま次の立脚期を迎えること

になります。

 

手術を施行する前の変形性膝関節症の時にもこの「こわばり感」は認めることが多く、これは膝の屈筋と伸筋の同時収縮が関与しているという報告もあります。

 

この同時収縮による「こわばり感」はTKA術後にも生じることが報告されており、これをstiff knee gait(スティフ二―ゲイト);SKGと呼ばれるようになってきています。

 

2.SKG;stiff knee gait(スティフ二―ゲイト)とは?

これは脳血管疾患の痙性からくる歩行時の膝伸展位での歩行のことを言います。

以前は脳血管疾患にのみ通用する用語でしたが、近年、膝関節疾患の異常歩行に対してもこのSKGという言葉が用いられ始めています。

では、このSKGですが一体どういった原因で生じるのでしょうか?

 

1)SKGの原因

SKGの原因は軟部組織の問題など挙げられますが、それを統括する神経機能の問題も大きく関わっているように思います。

①前遊脚期の大腿直筋の過活動

蹴りだし後は膝関節の制御というよりは振り子の原理で勝手に膝が屈曲ー伸展運動を行い、次の踵接地に繋がってきます。

これが大腿直筋の過活動(持続的な収縮)によって阻害され、膝伸展位のままでの遊脚期を迎えることになるわけです。

立脚期から遊脚期に切り替わる際、急に足が空間上に浮くことから膝関節のコントロールが上手くできなくなってしまい、膝を固めてしまう事もあります。

 

 

②疼痛に伴う膝関節周囲筋の防御性収縮

①と同様の流れですが、TKA術後などは侵襲による膝の痛みにより上記のような過緊張が起こります。

これは「膝を曲げると痛い」というネガティブな思考も関わってきます。

術後直後は特に膝関節周囲の感覚は過敏になっていることが多く、膝関節を動かすとこに対し嫌悪感を持っていることが多いですね。

 

 

③TKA術前の学習された歩行様式の残存

これは膝関節に限っての話ですが、SKGは術後だけに生じるものではなく、変形性膝関節症の患者にも認める問題です。

この場合も、①のような二関節筋での制御が影響して生じているものと考えられていますが、これに加え、TKA術後では侵襲による膝の疼痛がさらにSKGを強固なものにしていることが考えられます。

手術前に膝関節のこわばり感が強く、すでに歩行時にSKGを認める場合は術後の歩容もチェックしより早期からSKGに対するアプローチを検討する必要がありますね。

 

④膝関節自体の不安定性

TKA術後は手術の侵襲による出力抑制により一時的に膝関節の安定性は低下します。

それをどうにか制御するために、筋の過剰収縮が生じ、結果的に屈伸の同時収縮といった形で安定性を担保しようとするわけです。

そうなると膝関節を円滑に動かすことが困難となり、歩行時のSKGが完成されてしまいます。

大腿直筋の過活動や、疼痛に伴う防御性収縮はそれを統括する感覚機能に問題があるとも捉えられるわけですね。

固有感覚受容器の異常によりエラーが生じていることが予想され、ここの適正化が生じない限り膝のこわばり感の改善は見込めないと思われます。

 

また、膝関節の不安定性も影響しており、TKA術後など侵襲や疼痛によって筋出力の抑制がかかっている場合、安定性の担保のために二関節筋の過活動が生じます。

これが大腿直筋やハムストリングスの過剰収縮の原因となり、さらには同時収縮が引き起こされ、膝関節のこわばり感に繋がってくることが考えられています。

 

 

2)SKGにより起こり得る問題

SKGの問題点として、以下のことが挙げられます。

①足尖の引っ掛かりによる転倒リスクの増大

本来は歩行中の遊脚期時に膝関節は屈曲運動が生じます。

しかし、SKGとなると上記運動が生じず伸展位での振り出しとなり、すり足のような歩行状態になります。

つまりクリアランスの確保が出来ず、容易に躓く可能性が出てくるわけです。

TKA術後はすり足での歩行になるか、軽い分回しでの歩行になるかの2極に分かれやすいです。

当然そうでもない方もいらっしゃって、そうなる人とならない人の差ははっきりしていないのが現状です…。

 

 

②歩行速度や歩行エネルギー効率の低下を招く

膝関節は本来double knee actionと言って、一歩行周期中に2回膝の屈曲運動が生じるとされています。

歩行時は位置エネルギーを運動エネルギーに変換して効率的な歩行を得ているわけですが、このdouble knee actionが消失してしまうことで十分な位置エネルギーの確保が困難となり、非効率な歩行となってしまいます。

つまりエネルギー効率も悪いし、前方への推進力を引き出すためにエネルギーの変換も行えないため歩行速度も低下するという悪循環に陥るわけです。

歩行時の重心の上下動は思っているより重要な役割を果たしていると痛感させられます。

 

③SKGは関節の異常なバイオメカニクスを招き、インプラントの摩耗を早める危険性が指摘されている

SKGにより、本来生じるはずの膝関節の動きが破綻するわけなので、思わぬところでの膝への負担増大が懸念されます。

膝の屈伸が生じないということは衝撃吸収機能も破綻するわけで、それがTKA術後であれば関節内に入っているインプラントへの負担増大に繋がるわけです。

このような話を聞くと、歩行にSKGが生じるということは変形性膝関節症患者にとってもTKA術後患者にとっても好ましくない状態であると理解出来るかと思います。

 

 

④TKA術後の場合、術後の満足度低下の大きな要因になる

TKAであれTHAであれ人工関節を希望される患者の大半は「痛みの軽減」や「歩きやすくなりたい」という願いがあって手術を受けることを決めていくわけです。

その大きな希望を持って手術に臨んだのに結果的に、SKGが生じてしまった場合、術後の満足度は当然ですが大きく低下することが予想されます。

 

歩けるようになりたくて手術したのに、まだ膝が痛いし、歩くときに思うように足でなくてこわばるのよ…どうにかならないの?

実際にこのような訴えを聞くことが、術後のリハビリを担当しているとよくあります…。

これが、術後の満足度が一定数低くなっている原因なのかと思わされます…。

こういったケースでも、退院後に改善することもあり、必ずしも永遠に続く問題ではないといえます。

 

 

3.まとめ

今回は、変形性膝関節症やTKA術後に生じる「膝のこわばり感」についてまとめていきました。

脳血管疾患の異常歩行でよく使われていたSKG(stiff knee gait)という用語ですが、近年では膝関節疾患に対しても使われるようになっており、それだけ変形性膝関節症やTKA術後の歩行もこのSKGが大きな問題になっているという事を指します。

 

現代の人工関節は膝関節であれ股関節であれ、術後の疼痛緩和だけでなくいかに正常に近い形で生活が出来るようになるかに主眼を置くようになっており機器自体の性能の改善が進んでいます。

 

そんな中、TKA術後に歩行時のこわばり感を感じる例が一定数存在し、これが術後の満足度低下を引き起こす大きな要因になっているものと思われます。

 

今回はその歩行時の膝のこわばり感について深掘りしていきました。

改善策の案については次回の記事にしていきたいと思います。

それでは本日はこの辺で。

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました。

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