TKAの手術中と後の出血はどうなっているのか?ターニケットの使用とドレーンの可否について

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TKA
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どうも。

管理人のKnee-studyです。

 

手術全般に言えることですが、

「手術中の出血はどうなっているのか?」

と一度は疑問に思ったことはないでしょうか?

 

手術中の出血については、多くの整形外科の手術でターニケットの使用にて、術中の出血コントロールを行っています。

また、術後の管理には、ドレーンの挿入を行う場合があり、出血のコントロールを行なっています。

近年ではカクテル療法にて止血効果が認められるため、ドレーンの挿入を行う施設は減っているようですね。

 

今回は、上記のような術中から術後の出血のコントロールをどのように行っているかをまとめていきたいと思います。

 

【ターニケット(駆血帯)とは?】

災害時や事故現場における外傷性出血や、整形外科領域における四肢の手術時に出血を止めるために用いられるものであり、駆血装置と呼ばれる

【ドレーンとは?】

ドレーンとは 体内に貯留した血液・膿・浸出液を体外に排出する医療行為を「ドレナージ」といい、その際に使用する管のことを「ドレーン」という

 

 

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1.術後の出血のコントロールについて(結論)

先に結論から述べていきます。

 

TKAの手術中の出血コントロールに関して、ターニケットの使用は賛否両論でありますが、

「ターニケット使用により術中の出血量は確実に軽減されるが、手術からの総出血量には差がない」

といった報告もあります。

つまり、ターニケットを使用しても術後に出血量が多くなり、最終的な出血量は駆血帯の使用の有無で差がないということになります。

ただし、ターニケットの使用による手術中の術野の確保や、セメントの固定が容易で確実に行えるなどのメリットが挙げられています。

 

対して、術後の出血コントロールについてですが、こちらは術後ドレーンの使用が挙げられます。

「ドレーン挿入により、術後の腫脹緩和や可動域制限が期待されるが、ドレーン挿入の有無で差はなかった」

と報告されています。

ドレーン挿入による感染のリスクも想定されるため、今後はドレーンの使用はメリットよりもデメリットの方が大きくなりそうですね。

このように、術後のドレーン挿入はデメリットの方が多く挙げられる結果となっています。

 

 

2.術中の出血コントロールについて(ターニケット使用の是非)

手術中のターニケット使用はTKAの術中の止血には大変有用であるとされています。

しかしながら、デメリットも同様に挙げられており、ターニケットの使用について賛否が分かれる所でもあります。

以下にメリット・デメリットを紹介します。

 

【メリット】

●術野の確保が容易になる

●セメント固定を確実にする

●手術時間の短縮

などの報告が散見されており、多くの施設で取り入れられています。

 

【デメリット】

●静脈血栓塞栓症(VTE)・肺塞栓症(PE)が増加する

●測定出血量(術中出血量・術後ドレーン出血量)は低下するが推定出血量は減らない

などの意見も挙げられています。

また、駆血帯の物理的な作用による筋肉や神経へのダメージによる痛み(いわゆるターニケットペイン)や組織の代謝に影響するとも報告されており、虚血再灌流障害(ischemia reperfusion injury)にも言及する研究もあるが、ほとんどが時間が経てば症状は改善し、臨床的に大きな問題になることは稀であるといわれています。

 

【虚血再灌流障害とは?】

ターニケットは、使用中の血流低下や、使用後の急激な血流再開により障害を引き起こす可能性があり、結果として、毛細血管透過性や筋内タンパク質の分解を亢進させ、浮腫や筋萎縮が生じるといわれており、これを虚血再灌流障害という。

 

このように、駆血帯の使用の是非についてはさまざまな議論が存在しますが、現実的には血管の障害のあるような症例への使用は避け、出来るだけ短時間で開放し、術後、創部の血流には十分に注意を払うことで、ターニケット使用のデメリットは防げるものと思われます。

 

TKA施行時のターニケットの有無を比較する研究について

以下の報告は、TKAを施行する対象者をターニケット使用群と非使用群の2群に分けて術中および術後の経過を研究したものになります。

この報告では、ターニケット使用を推奨する結果となっています。

【概要】

人工膝関節全置換術(TKA)を施行する患者200人を対象に、術中のターニケット使用による術後の機能的転帰への影響などを前向き二重盲検無作為対照試験で検討

【評価項目】

主要なアウトカム指標は、Timed Up&Go(TUG)テストと視覚的アナログ尺度(VAS)の疼痛スコアを使用した機能評価テストが選択されており、二次的な結果の測定には、階段登りテスト、失血量、術野の視覚化、関節可動域が挙げられています。

【結果】

・ターニケット非使用群(100人)はターニケット使用群(100人)より失血量が多く(966.64mLと比較して1,148.02mL  p <0.001)、手術野の視覚化が困難だった(P<0.0001)。

・ターニケット使用群は非使用群より、最初のフォローアップでの膝の伸展度が大きかった(-9° と比較して-7° P=0.044)。

【結論】

TKA中のターニケット使用は、失血を大幅に減少させ、術後早期の転帰に悪影響を及ぼさない事が示唆された。

引用文献:Goel R, et al. Tourniquet Use Does Not Affect Functional Outcomes or Pain After Total Knee Arthroplasty: A Prospective, Double-Blinded, Randomized Controlled Trial. J Bone Joint Surg Am. 2019 Oct 16;101(20):1821-1828. doi: 10.2106/JBJS.19.00146.

 

 

3.術後の出血コントロールについて(ドレーンの是非)

術後の出血については、目に見えないものです。

術後のHb値の推移をみていると、術後翌日と術後1週後のHb値を見ると、術後1週の時点の方がHb値が術後翌日よりも低下していることがほとんどです。

この数値の変化は、術後1週間時点でも出血が認められているということを示しています。

 

当院では術後のドレーン挿入を行ってはいませんが、以前ドレーンを挿入していた際は、術後しばらくは排液として血液の流出が比較的多かったことを記憶しています。

このように、術後創部を閉じた後も、しばらくは関節内部での出血が続いており、そこに対してドレーンを挿入し腫脹の軽減を図っているわけです。

 

ここで一つ、文献を紹介します。

Quinnらの報告になりますが、TKA術後のドレーン使用の是非について検討しています。

 

6つのランダム化比較試験(RCT)のメタ解析を行い、TKA後のドレーン使用の是非について、術後可動域、腫脹の回復、入院期間、術後血中ヘモグロビン値の観点で比較を行い、いずれの項目でも両群間に差がなく、ドレーンは必要ないと報告しています。

引用文献:Quinn M,Bowe A,Galvin R,et al.The use of postoperative suction drainage in total knee arthroplasty : a systematic review.Int Orthop 2015;39:653-8

 

この結果は、ドレーン使用の必要性を否定する結果となっており、実際にも今回の記事の主でもある術後の出血量に関しても、Hb(ヘモグロビン値)の結果から、ドレーン使用の有無で差がない事が確認されています。

つまり、術後にドレーンを挿入しても出血量に変化はなく、さらに腫脹の回復や可動域にも変化がないという結果になっていることから、無理にドレーンを挿入する必要性は低いことが考えられます。

 

さらに、術後の患者QOLを考えると、極力”管”が身体についていないほうが望ましく、エピネフリン含有多剤カクテル注射の止血効果を勘案すると、今後ドレーンの使用はますます減少すると考えられています。

 

4.まとめ

今回はTKA術中から術後の出血コントロールについてまとめていきました。

当院では、術中にターニケットは使用しており、術後はドレーン挿入はしていません。

 

術後の腫脹がひどいとき、ドレーン挿入すれば少しは減るんじゃないかな?と思うこともありますが、今回の文献の情報を考慮するとさほど変化はないのかな・・・と思うところになります。

 

文献の情報がある・ないでは「選択肢の幅」と「間違った選択のリスク」が確実に減ってきます。

 

確実に理解しておきたいことは、

●手術中に生じた侵襲からの出血は、術後もしばらくは続いていること(ターニケットの使用により変化なし)

●そのことで腫脹は簡単には減って来ないこと(患者さんへの指導に繋がる)

●ドレーン挿入の有無で腫脹の変化や可動域の変化は得られないこと

などが挙げられます。

上記の内容を理解して、今後の臨床に臨みたいですね。

それでは本日はこの辺で。

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました。

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