どうも。
Knee-studyです。
今回は「変形性膝関節」についてまとめていきます。
臨床の世界では、変形性膝関節症のことをよく「膝OA」と呼びます。
※OAは、「Osteoarthritis」の頭文字をとった略語であり、「変形性関節症」のことを指します。
つまり膝の変形性関節症のことを「膝OA(ひざオーエー)」と呼んでいるわけです。
厚生労働省の平成 19 年度国民生活基礎調査の結果と、
大規模な疫学研究Research on Osteoarthritis Against Disability(ROAD)プロジェクトにより、
以下のことが明らかとなりました。
①高齢者が要支援になる原因の1位、要介護になる原因の4位が関節疾患であり、運動器の障害が高齢者の生活の質(quality of life: QOL)を著しく障害している。
②日本の変形性膝関節症(膝OA)患者数(40歳以上)を推定すると、X線像により診断される患者数は2,530万人(男性860万人、女性1670万人)となり、膝OAの有症状患者数は約800万人と推定される。
③膝OAは身体的QOLの指標であるphysical component summary値を有意に低下させる。
以上のことより、日本において膝OAの予防と進行防止を目的とした治療方法の確立は急務である。
※ROADプロジェクトとは、2005 年より大規模臨床統合データベースの設立を開始し、この一連の研究活動のことをいいます
このような背景がある膝OAですが、急に起こるものではなく慢性的に生じる疾患とされています。
ある日突然起こる病気とは違って、徐々に進行するものであるため、裏を返せば、予防もしくは進行を遅くすることが出来るということです。
今回はまず、この膝OAの病態について紹介していきたいと思います。
今後の記事で、膝OAにならないための予防法や進行予防に関する内容も紹介していきたいと思っております。
とりあえずはまず膝OAのことについて理解を深めていきましょう。
1.変形性膝関節症(膝OA)とは?
まずは、変形性膝関節症とはなんぞや?というところから説明していきます。
変形性膝関節症による弊害は日常生活を送る上で思っているよりも多く存在します。
ただ単に膝が変形して膝が痛くなるだけではありません。
変形性膝関節症の病態
変形性膝関節症は、関節軟骨、半月板や靱帯といった膝関節の構成体の慢性退行性疾患であり、整形外科において最も頻度の高い疾患の1つとされています。
膝関節は下肢荷重関節の中心的機能を有することから、膝OAによる関節機能の低下はADLやQOLに大きな影響を及ぼすことが知られています。
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変形性膝関節症は加齢と共に発症するものであり多くの方が悩まれています。
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最近、立ち上がる時とか歩き始めるとき膝に違和感を感じるわ・・・
これも変形性膝関節症の症状の一つになるんですね。
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すべてが変形性膝関節症の症状と断定するのは危険ですが、そう思って予防に取り組んでおくことは非常に大事です。
膝OAは、中高年の女性に多く、50歳以降になると患者の数が増加していきます。
時期に応じた病態は以下の通りです。
膝OAの初期の症状
歩き始めの「膝の違和感」が初期症状になります。
この時期では、動作時のみの痛みですが、痛みは長続きせず、しばらく休むと痛みは消失します。
膝OAの中期の症状
徐々に膝OAの進行に伴い、痛みの頻度が多くなり、膝が完全に曲がらない、伸びない状態になります。
日常生活では、正座やしゃがみ込み困難、階段昇降も不便になります。
また、炎症により膝に水がたまったり、熱感を持つようになります。
さらに進行すると、膝の変形がひどくなり、ゴリゴリ、コツコツなどの音を自覚する場合もあります。
この時期からTKAやUKAの適応となってきます。
膝OAの末期の症状
さらに進行すると、日常生活に支障が起こるほどの痛みになります。
この段階では、骨の変形が進むため、外見的に関節変形が目立つようになります。
同時に筋力低下が著名になり、他部位に痛み(腰痛など)を引き起こすことが多くなります。
変形性膝関節症の症状
膝の変形が進行していくにつれ、徐々に膝OAの症状は強くなってきます。
変形性膝関節症の主な症状は以下の通りです。
膝の疼痛
※内反変形の場合は主に「膝内側の疼痛」で外反変形の場合は主に「膝外側の疼痛」を認めます
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変形性膝関節症の場合、関節の裂隙(大腿骨と脛骨の間)部分を押したら痛みを感じます。
膝のROM制限
※正座が困難になったり、膝が伸びなくなったりします
※歩き始めや急に動いた際に膝がスムーズに動かずこわばりを感じることがあります
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屈曲制限よりも伸展制限が臨床上問題視されることが多いです。
膝周囲筋の筋力低下
※膝周囲は、主に大腿四頭筋の筋力低下が問題視されています
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大腿四頭筋の筋力低下により膝OAが進行するとされています。
歩行障害
※膝OAにより歩行能力は低下します
※歩幅の減少や両脚支持期の延長などの問題が出てきます
※変形に伴って、外側スラストも出現します
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膝の変形が進行すると、上体を横に振りながら歩く様子がうかがえます。
変形性膝関節症のリスク因子
変形性膝関節症を助長する主なリスクについては以下の項目が挙げられます。
●肥満
●膝外傷の既往
●女性であること
●年齢(高齢)
以下は変形性膝関節症のガイドラインから引用した内容になります。
上記で挙げたリスク因子の詳細を記しています。
・日本人の膝OAのリスク要因は、肥満、膝の外傷、肉体労働であった。女性と男性間に性差は存在せず、リスク要因は同じであった。
・膝OAの発症に関与するリスク要因として、遺伝、年齢、女性、へバーデン結節と手指のOA、肥満、高い骨密度、外傷、半月板損傷、鏡視下半月板部分切除術後、靭帯損傷、靭帯再建術後、内反・外反弛緩性、職業・スポーツ経験、大腿四頭筋筋力低下が報告されている。
進行に関与するリスク要因として、肥満、低い骨密度、ビタミン CとDの低摂取、インドメタシンの使用、不安定性、内反・外反のマルアライメント、軟骨石灰沈着症、カルシウム・ピロリン酸沈着症、膝関節水症、熱感が報告されている。
・558人(女性494人、男性64人)の経過観察から、膝OAの発症と進行因子は、年齢、女性、肥満(body mass index(BMI)> 25)であった。
変形性膝関節症の診断方法
変形性膝関節症の診断方法には主に画像診断が用いられます。
●単純 X 線検査(Kellgren-Lawrence grading: K-L 分類)
●MRI検査
Kellgren-Lawrence 分類: K-L 分類とは?
Kellgren-Lawrence 分類⇒ケルグレン-ローレンス分類と呼びます。
略して”K-L分類”と呼びます。
K-L分類は、重症度を4段階(グレードⅠ~グレードⅣ)に分類した基準であり、グレードⅡ以上が変形性膝関節症の診断となります。
重症度の分類は、主に関節軟骨の減少具合と骨棘の程度によって判断します。
図:Kellgren-Lawrence分類(K-L分類)
少しかみ砕いた内容がこちらのサイトで紹介されており、わかりやすいので紹介しておきます。
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変形性膝関節症に対する治療方法
変形性膝関節症に対する治療法に関しては、大きく分けて、「外科的療法」と「保存療法」に分けられます。
外科的療法(観血的)
外科的療法に関しては、関節鏡(内視鏡)で行う手術と、膝を開放して骨切りもしくは人工物に取り換える手術があります。
①半月板切除術
②高位脛骨骨切り術(HTO)
③人工膝関節置換術(TKA・UKA)
上記3つに分けられます。
①半月板切除術(関節鏡視下手術(内視鏡))
【適応】
関節の変形が高度ではなく、半月板の損傷や滑膜炎が痛みの主な原因となっている場合
※関節内の清掃をする手術
【手術内容】
痛んでいる半月板を部分的に切除したり、炎症性の滑膜を切除する
【メリット・デメリット】
・半月板由来の症状がなくなり、膝の痛みや引っ掛かりなどが解消される
・関節鏡であり侵襲が少ないため術後の経過が早く早期退院が可能
・関節内組織に影響を与えることから、長期的にみると膝OAを助長してしまう可能性がある
②高位脛骨骨切り術(high tibial osteotomy: HTO)
【適応】
・比較的若年者で活動性の高い症例
・外側大腿脛骨関節や膝蓋大腿関節に疼痛源が無く、内側大腿脛骨関節に主たる疼痛源がある症例
【手術内容】
高位脛骨骨切り術(HTO)は、O脚を矯正して、X脚気味にして、内側の傷んだ関節にかかる力を外側の健常な関節に分散させて、内側の痛みを改善させる目的で行われる
【メリット・デメリット】
・活動性の高い競技への復帰が可能になる例が多い
・人工関節手術に比べて後療法に時間を要する事
③人工膝関節全置換術(total knee arthroplasty: TKA)
片側単顆人工膝関節置換術(unicompartmental knee arthroplasty: UKA)
【適応】
・膝の痛みにより歩行障害をきたしている例
・膝の変形が強く、生活に支障をきたしている例
【手術内容】
・変形性膝関節症や関節リウマチなどにより変形した関節に対し、金属やセラミック、ポリエチレンなどでできた人工関節と入れ替える手術である
・患者の年齢や骨の形状や質により、骨セメントを用いる場合とセメントを使用せずに直接骨に固定する場合とがある
【メリット・デメリット】
・下肢のアライメントが改善され、見た目も良くなる
・費用対効果が高い手術(術後の予後が非常に良いとされている)
・長期成績が安定している
・術後、正座やしゃがみ込みなど膝を深く曲げる動作が困難になる
保存治療
保存療法は、運動や装具(サポーター)、服薬や注射が選択肢として挙げられます。
①運動療法
主に、大腿四頭筋の筋力トレーニングが挙げられます。
筋力をつけることで、関節への負担や衝撃を和らげる効果が期待できます。
また、痛みの軽減や症状の進行を抑制する効果もあります。
②装具療法
膝の安定性を高める目的で膝の装具を装着します。
膝の装具の種類も様々ですが、主に”膝の支持性の補強”・”膝への負担軽減”・”膝の安定性向上による除痛”などの目的で使用されます。
また、膝の変形に対して、”足底板”を挿入する方法もあります。
日本人で多いのは内反変形でありO脚に変形が進行するため、足の外側を上げる足底板を挿入することが多いです。(外側ウェッジ)
③関節注射
変形性膝関節症は症状が進むと関節内の潤滑油で、軟骨の栄養である滑液が減ることから、 滑液の主成分であるヒアルロン酸ナトリウムを関節の中に直接注射し補う治療法です。
薬物療法
膝関節に起きた炎症を消炎鎮痛剤(痛み止め)で抑える治療法です。
湿布や軟膏の外用薬も併用して使う場合があります。
2.まとめ
今回は変形性膝関節症(膝OA)の病態について記事にしていきました。
高齢社会が進む日本にとって、退行変性である変形性膝関節症はこれからも増え続けることが予想されます。
そのため、「予防への意識」が非常に大事になり、症状が出てから考えるのではなく、「変形性膝関節症で膝が痛くならないためにどうするか?」を考えていく必要があります。
いつまでも健康に自分の足で歩けるように早い段階から対策を立てていくことが大切になります。
このブログでは今後、予防的観点からの記事も更新していきたいと思っております。
興味を持たれた方は今後とも定期的にご覧になって頂けたらと思います。
それでは本日はこの辺で。
最後まで読んで頂きありがとうございました!!
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