TKA術後のpatellar clunk syndrome(パテラ・クランク・シンドローム)について

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どうも。管理人のKnee-studyです。

今回は、TKA術後のインピンジ様の痛みについてです。

 

代表的なところで、patellar clunk syndrome(パテラクランクシンドローム:PCS)という呼び名がありますが、これはTKA術後に膝を自力で伸ばすときに引っかかる感じがしたり異音が生じたりする現象のことを言います。

 

これは主に初期のPS型TKAに合併していたようですが、現在使用しているTKAの機種ではこのpatellar clunk syndromeに対する対策を行っており、発生する確率は低くなっています。

 

それでも、TKAないしUKA術後のリハビリを行なう際、痛みがないにしても膝蓋骨付近のクリック音などを感じることが多々あります。

 

 

実際の臨床場面ではTKA術後のリハビリとして、大腿四頭筋のエクササイズは欠かさないと思います。

その際、まずは等尺性の運動から開始し、痛みの緩和に合わせて徐々に積極的な膝伸展運動を取りいれていくと思いますが、その際に関節の轢音を感じることが多々あります。

(特にPF関節(膝蓋大腿関節)部の轢音)

 

 

このように、TKAのデザインが改善されたり、インプラントの改良が重ねられたことにより今回紹介するpatellar clunk syndromeはTKA術後の問題にならなくなってきているようですが、臨床の場面ではやはり術後も関節の轢音を感じることが多いのが現状です。

 

今回はTKA術後のクリック音を感じる場合に考えられる因子の一つとしてpatellar clunk syndromeについて紹介していきたいと思います。

 

 

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1.patellar clunk syndromeについて

2006年の報告では、以下のように記されています。

人工膝関節全置換術(TKA)の術後に約1~3%の頻度でpatellar clunk syndrome(PCS)に代表される膝蓋大腿(PF)関節周囲の軟部組織インピンジメントを生じることがある。

 

このように、一定の割合でpatellar clunk syndromeが生じるケースが存在していたようです。

こういった背景を受けて、TKAのインプラントの改良がなされ2022年の現在ではその発症率は軽減しているようです。

 

実際に、TKAのインプラントを設計している各業者の紹介分にもpatellar clunk syndromeに対する対策が記載されています。

【膝蓋骨のトラッキングの向上】

Optetrak Logicの膝蓋大腿骨関節面の形状は、屈伸時における膝蓋骨の自然なトラッキングを可能にし、接触応力の低減、膝蓋骨亜脱臼、patellar clunk syndrome、および膝蓋支帯の緊張を抑えるように設計されています

EXACTECH KNEE – イグザクテック社 TKAカタログ「」より一部抜粋

 

では、実際にpatellar clunk syndromeとは何なのでしょうか?

以下に説明します。

 

patellar clunk syndromeとは?

【patellar clunk syndromeとは?】

Patellar clunk syndromeはTKA術後に膝関節屈曲位から伸展する際にパテラコンポーネントの有痛性の異常動作とclunkやcrepitation(捻髪音・轢音)と表現される異常音を生じる症候群を指す

 

TKAの合併症として、膝蓋大腿関節の障害は重要な問題であり、Thorpeらは5-30%に生じると報告しており、その原因のひとつとして、patellar clunk syndromeが挙げられています。

 

patellar clunk syndromeの歴史

●1989年Hozackらは、膝蓋骨コンポーネントの中枢側に生じた線維性の腫瘤が原因となった3例の膝蓋大腿関節のインピンジメントを報告し、patellar clunk syndromeと命名

(TKA術後の軟部組織による膝蓋大腿関節障害の報告は、1982年のInsallらによるものが最初)

※PS型TKA後に膝蓋骨コンポーネントの中枢側に増殖した線維性結節が屈曲時に大腿骨コンポーネントの顆間窩に挟まり込み(clunk)、伸展時にはじけることで異常音(crepitation)や痛みを生じるものをPatellar Clunk Syndrome(PCS)と報告

 

●patellar clunk syndromeとしての報告は、Hozackらが最初で、まとまった症例数の報告からその頻度は数%以下と考えられている

 

●patellar clunk syndromeで膝蓋骨近位に腫瘤を形成する病態には、四頭筋腱への機械的刺激、滑膜炎の再燃などが考えられている

 

2020年の報告でもpatellar clunk syndrome の報告は挙がっており、線維性結節の問題だけでなく、滑膜炎の問題も指摘されています。

 

【参考文献】Ali H Chamseddine Patellar Clunk Syndrome Following Posterior Stabilized Total Knee Replacement: Report of Two Cases Cureus. 2020 Nov; 12(11): e11435.

 

 

 

大腿骨および膝蓋骨コンポーネントでのインピンジメントを起こす原因

ここまでは、Patellar clunk syndromeについてまとめていきました。

ここでは実際にpatellar clunk syndromeを含めたインピンジメントが生じる原因について紹介します。

 

原因は以下の4つ挙げられています。

①患者因子の問題

●術後の可動域が大きい場合、四頭筋がより大腿骨顆間窩へ引き込まれることになりPCSの発生率が上昇すると報告

●膝の手術歴がある場合、関節内の瘢痕が増え組織の柔軟性が低下することで、組織にかかる負担が強くなり炎症を起こしやすくなると報告

 

②人工関節のデザインの問題

●PS型TKAの特徴はインサート中央部にポストが存在するため、大腿骨コンポーネントの顆間窩がCR型TKAを比較してより近位まで切り込まれていることである

●顆間窩が近位まで切り込まれていると屈曲時に浅い角度でインピンジし、機械的刺激が増加することとなる

⇒ここはTKAデザインの改良により問題となる確率は低減しているものと思われます。

 

③Joint lineの上昇・膝蓋骨低位

●Joint lineが上昇し、膝蓋骨低位となると顆間窩から大腿四頭筋腱への機械的刺激が増加することになる

 

④膝蓋骨コンポーネント(サイズ・設置位置)

●膝蓋骨周囲に機械的刺激が増加することになる。膝蓋骨の厚さが薄くなると四頭筋県と顆間窩の間位でインピンジしやすくなりPCSのリスクが増加する

 

 

2.まとめ

今回は、TKA術後のインピンジ様の痛みについてまとめていきました。

 

●症状は主にPS型TKA術後に生じる(1年以内の発症)

●原因は線維性結節や滑膜炎が挙げられる

●膝屈曲位から伸展する際に、異音や引っ掛かり感を感じる(patellar clunk syndrome)

●対応としては関節鏡視下での切除術が推奨されている

●TKAデザインの改良により出現する確率はほぼないとされているが、近年の報告でもpatellar clunk syndromeが挙がっていることから我々の臨床場面でも遭遇する可能性は高い

 

以上のようなまとめになります。

TKA術後で関節のクリック音や轢音が聞かれ痛みを訴える場合は、このpatellar clunk syndromeが影響している可能性があるということを理解しておきたいですね。

 

それでは本日はこの辺で。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

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