膝OAに対するリハビリについて~膝OAの病態から考える治療戦略~

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変形性膝関節症(膝OA)の理学療法
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こんばんは。

管理人のKnee-studyです。

 

今回は、変形性膝関節症(膝OA)に対するリハビリについてまとめていきます。

 

近年の高齢社会では膝OAに対して理学療法士が関わる例は非常に多いです。

関節疾患、特に膝OAは退行変性で多くの高齢者が膝の痛みを抱えており、その大半が変形性膝関節症に罹患しています。

 

そのため、理学療法士の方の大半は、膝OA患者に対してリハビリを行った経験は必ずあると思います。

膝OAに対する研究も進んでおり、リハビリのガイドライン存在します。

 

しかしガイドラインで示されていることだけを提供しても表面的なアプローチして出来ません。

ガイドラインの内容は念頭に起きつつ、しっかり膝OAの病態からリハビリの介入方法を検討していくことが大切になります。

今回はそういった膝OAのリハビリについてまとめていきます。

 

 

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1.変形性膝関節症(膝OA)の病態~バイオメカニクスの観点から~

まずは膝OAの治療に必要な知識を理解していきましょう。

膝OAの変形の種類

膝OAには膝の内側・外側の2種類に分けられます。

●膝内側の関節に変形・異常⇒内反変形(内側型のOA)⇒O脚

●膝外側の関節に変形・異常⇒外反変形(外側型のOA)⇒X脚

 

それぞれについて簡単に説明します。

内反変形(O脚)

膝関節の変形に伴い、裂隙の内側部分が狭小化していきます。

痛みは、膝の内側部分に強く出現し、歩行障害や階段昇降困難など訴えとして多いです。

また立位姿勢では膝同士が離れ、O脚が強くなり、歩行時にはラテラルスラスト(膝が外側にブレる)が出現します。

 

外反変形(X脚)

内反変形の反対で、膝関節の外側部分の狭小化を認めます。

痛みは膝の外側部に出現します。

 

立位姿勢では、膝同士がくっつくようになりX脚が強くなります。

また、立ち座りの際などに膝が内側に入り込むKnee-inを認めるようになります。

 

 

日本人で多いのは内反変形型の膝OA(O脚)

膝OAには内側・外側それぞれに問題が生じることがわかりました。

日本人ではほとんどが内側の関節裂隙の狭小化が生じる内反変形型の膝OAを呈します。

 

これは、和式の生活が多いことが一つの原因になっています。

椅子とは違い、床上での生活になると必然的に骨盤は後傾位に傾きます。

そのため運動連鎖的に

骨盤後傾⇒股関節外旋位⇒下腿外旋⇒足部内反

となり、結果的に膝もO脚優位となります。

 

 

内反変形した膝の周囲に生じている問題~運動連鎖から考える~

実際の問題点を抽出するためのヒントになるような内容になります。

下肢の運動連鎖

膝の内反変形が生じている場合の他部位の運動連鎖になります。

当然、そうなっていない場合もありますが、通常の一連の運動連鎖は以下の通りになっています。

 

腰椎後弯-骨盤後傾-股関節外転・外旋-下腿外旋-足部内反(膝は軽度屈曲位になる)

ちなみに、逆の場合は以下の通りです。

腰椎前弯-骨盤前傾-股関節内転・内旋-下腿内旋-足部外反(膝は反張傾向になる)

 

運動連鎖に伴って生じる筋機能異常

≪前額面上の問題≫

●内反変形により荷重支持が腸脛靭帯のハリで保っているような状態になる

(外側の張力で姿勢保持を行う)

図:前額面上の問題

 

≪矢状面上の問題≫

●骨盤後傾し膝が軽度屈曲位になるため、大腿四頭筋は過伸長され、ハムストリングスは短縮する

図:矢状面上の問題(大腿四頭筋とハムストリングスの関係性)

 

●膝が軽度屈曲位となるため、大腿四頭筋の中で大腿直筋の活動だけが過剰になり、内・外側広筋・中間広筋の機能は低下する

 

●骨盤後傾となることで、立位時の外側支持機構が破綻する

(中殿筋での支持ではなく、大腿筋膜張筋-腸脛靭帯での支持に切り替わる)

図:矢状面上の問題②(外側支持機構の問題)

 

 

姿勢アライメントや運動連鎖による筋機能異常から治療のヒントを得る

●内反変形により骨盤後傾位となり、股関節伸展域の活動↓↓

●立位時も股関節屈曲位になり、中殿筋後部線維の活動↓↓

●膝の完全伸展が出にくくなり、大腿四頭筋の中の単関節筋の筋機能が低下する(特に内側広筋)

●上半身の質量中心は後方に偏位するため、必然的に下半身の質量中心は前方へ偏位し、結果的に膝前面へのストレスになる

●足部内反位による外側縦アーチの異常(立方骨の落ち込み)

 

 

 

2.変形性膝関節症(膝OA)に対するリハビリについて

上記の膝OAの病態を理解したうえで、リハビリについて述べていきます。

主に3つの問題に分けて説明していきます。

 

①大腿四頭筋の筋力トレーニング(特に単関節筋を意識して)

一つ目は、大腿四頭筋の筋力トレーニングです。

大腿四頭筋に関しては膝OAのリハビリにとって切っても切れない関係にあります。

 

エビデンスレベルでも膝OAに対し大腿四頭筋の筋力トレーニングは有効であるとされています。

またTKA術後の場合も同様で、大腿四頭筋の影響は非常に大きいようです。

 

前述しましたが、膝OAの場合、大腿四頭筋の中でも単関節筋である内・外側広筋の機能低下が生じるということを説明しました。

ということは、SLRトレーニングや重錘を使った膝の伸展運動などの大腿直筋を賦活するようなトレーニングよりも、膝伸展位でのトレーニングを心掛ける必要があります。

 

具体的には、パテラセッティングのように膝伸展位で出来る限り大腿直筋の活動を抑制した状態でのトレーニングが効果的になります。

図:パテラセッティングの方法

【注意点】

●膝を押しつける際に、膝ではなく殿部周囲に力が入ってしまうことがある

※この場合、膝周囲に収縮が入ってこないため、しっかりパテラが上方に牽引されているかを確認しながらトレーニングを行う

●足関節は必ず背屈位で行う

 

 

②ハムストリングスの短縮への介入

次は、ハムストリングスの短縮への介入です。

このハムストリングスですが、ガイドラインなどでは表立って出てきませんが、臨床上では非常に重要な筋になります。

というのも、大腿四頭筋と相対する関係にあるためです。

●大腿四頭筋は膝を伸ばす筋(膝の伸筋)

●ハムストリングスは膝を曲げる筋(膝の屈筋)

このように、お互いがお互いの働きによって影響される関係にあるわけです。

 

つまり、大腿四頭筋が過活動にある場合、相対的にハムストリングスは機能低下をきたしているということになり、逆にハムストリングスが過活動にある場合は大腿四頭筋は機能低下をきたしているということになります。

 

 

で、この関係を膝OA患者に落とし込んで考えると、

膝OA患者は骨盤後傾位で膝屈曲位になっているため、ハムストリングスは短縮位になっていることが予想されます。

ということは、ハムストリングスは機能低下を引き起こしており、大腿四頭筋は過活動(過伸長)になっていることが考えられるわけです。

 

この場合、大腿四頭筋も過伸長されて収縮力を失っているとも考えられます。

要するに、

ハムストリングスは短縮して伸長する能力を失い、大腿四頭筋は伸びきってしまい収縮する能力を失っている

ということです。

 

となると、ガイドラインでもあるように大腿四頭筋の収縮力を改善するための筋力トレーニングは確かに有効であると想像できます。

 

しかし、それだけではなく、相対するハムストリングスの短縮にも目を向ける必要があると思いませんか?

 

片側だけ補修しても、反対側が治ってなければまたすぐに壊れるように、

大腿四頭筋だけでなくハムストリングスの機能改善も同時に行っていくことが膝OA患者には必要であると考えます。

 

では、実際にハムストリングスの短縮の改善に向けたトレーニングについてです。

方法はいくつかあります。

 

1)タオルを使ったストレッチハムストリングスのストレッチ

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※足裏にタオルをかけて、太ももの裏・膝裏をストレッチしていきます。

 

2)階段などの段差を利用したハムストリングスのストレッチ

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※階段やベンチなどの段差に足を乗せて、上体を倒すことで太ももの裏をストレッチすることが出来ます。

 

3)ジャックナイフストレッチ

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※この画像の状態で膝を少し曲げたり伸ばしたりを繰り返します。

 

 

③外側支持機構の改善への介入

立位や歩行時の横ブレを抑制するのは、主に中殿筋の役割です。

しかし、膝OA患者の場合、多くは骨盤後傾位となり中殿筋の機能低下をきたしています。

 

そして代償として大腿筋膜張筋-腸脛靭帯の張力を利用した姿勢保持がメインとなります。

 

大腿筋膜張筋-腸脛靭帯は本来姿勢保持の役割は有していないため非効率的な姿勢保持となります。

 

この外側支持機構の改善には中殿筋の後部線維の機能改善が必要になります。

 

方法としては、股関節中間位~やや伸展位での外転保持(中殿筋)トレーニングが有効になります。

※股関節中間位~伸展位にすることで大腿筋膜張筋の働きを抑制します。

トレーニングの正式名称は、”ヒップアブダクション”です。

 

 

トレーニング中にしっかり中殿筋の後部線維に収縮が入っていればOKです。

 

 

3.まとめ

今回は、膝OAに対するリハビリについてまとめていきました。

膝OAにも典型的な姿勢パターンや運動パターンが存在します。

それを理解して治療に活かしていくことで痛みや動きの改善に繋がってきます。

 

ガイドラインなんかで示されているトレーニングや指導だけを行うのではなく、膝OAという病態を理解してリハビリが行えるとより効果的にリハビリが進むものと思われます。

 

それでは本日はこの辺で。

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました!

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