膝蓋下脂肪体と膝の疼痛について

膝関節について

どうも。

管理人のKnee-studyです。

 

今回は、膝関節の前面に存在する「膝蓋下脂肪体(infrapatella fat pad:IFP)」について記事にしていきます。

膝蓋下脂肪体って意外と痛みを感じやすい組織であり、膝の痛みの原因になり得る組織となっています。

今回はそんな膝蓋下脂肪体の解剖からその働きまでをまとめていきたいと思います。

 

 

1.膝蓋下脂肪体の解剖

図:膝蓋下脂肪体の解剖について

人工膝関節全置換術[TKA]のすべて改訂第2版より引用

 

膝蓋下脂肪体は線維性滑膜に覆われた脂肪組織であり、膝蓋靱帯の深部の間隙を埋めています。

膝蓋下脂肪体は関節内脂肪体に分類され、膝関節の関節角度の変化に応じて機能的に変形します。

 

膝蓋下脂肪体は膝蓋靱帯や膝蓋支帯の深層にあり、膝蓋骨関節面、大腿骨顆部、脛骨上端、前十字靱帯、後十字靱帯によって形成された区画内に存在します。

 

膝蓋下脂肪体の役割

膝のお皿の裏側に膝蓋下脂肪体という脂肪組織があり、膝のクッションの役割膝の内圧を一定にする役割をしています。

 

機能的な変形により膝蓋大腿関節の緩衝作用や、関節軟骨と膝蓋靭帯の摩擦を軽減する作用を担
います。

 

膝蓋下脂肪体の動態(どこにどう移動する?)

膝伸展位から深屈曲位にかけて区画内は動態変化します。

それに伴って膝蓋下脂肪体もそれに対応するように機能的に変形しつつ、膝関節腔内や膝蓋骨の裏側へと滑り込みます

 

これは膝蓋下脂肪体が柔軟な組織ゆえに、膝関節を緩衝剤や潤滑油として深部から効率化している現象であるとされています。

 

【膝関節の屈伸運動に伴う膝蓋下脂肪体の動態】

膝関節屈曲位⇒膝蓋下脂肪体は後方へ移動(パテラ後方に滑り込む)⇒体表から触知困難

膝関節伸展位⇒膝蓋下脂肪体は前方へ移動(後方組織より押し出される)⇒体表から触知可能

 

 

膝蓋下脂肪体は痛みを感じやすい組織である

この件に関しては後述しますが、

膝蓋下脂肪体は膝関節構成体のなかで最も疼痛閾値が低い(痛みを感じやすい)ことが研究によって報告されています。

 

疼痛閾値が低い要因として膝蓋下脂肪体には毛細血管や神経終末が密に存在することが挙げられます。

 

●膝前面痛を有する患者の膝蓋下脂肪体で神経伝達物質であるSubstance-Pの増加が報告されている

※Substance-Pは神経終末から放出され、血管拡張や毛細血管透過性を亢進させる作用があり、それにより膝蓋下脂肪体は、神経原性炎症や浮腫が生じるとされている

●浮腫による膝蓋下脂肪体の慢性肥大化は、関節運動による膝蓋下脂肪体の圧迫を助長し、虚血や慢性炎症を生じさせる

 

膝OAの膝蓋下脂肪体は”線維化”している

膝OAの場合、度重なる炎症のため、膝蓋下脂肪体は線維化し柔軟性を失ってしまう傾向にあります。

このように、膝OAでは膝蓋下脂肪体の線維化により、膝屈曲に伴う区画内の動態変化の対応が困難となります。

また、内反変形脛骨の過外旋が生じていると、膝関節外側のスペースが狭小化し、結果的に膝関節内側部に膝蓋下脂肪体はシフトしそこで線維化してガチガチに固まっていることがあります。

これが膝内側部の痛みに繋がっている可能性があります。

 

 

2.膝蓋下脂肪体に関連する文献

以下に膝蓋下脂肪体に関連した文献を紹介します。

膝蓋下脂肪体は痛みを感じやすい組織であることが理解できる文献をいくつか紹介しています。

 

膝関節内の神経感覚マッピング

引用文献

Dye SF , et al:Conscious neurosensory mapping of the internal structures of the human knee without intraarticular anesthesia.Am J Sports Med 1998;26:773-777

こちらの研究は、多くの文献や参考書、または研修会で引用されています。

故に知っている方も多くいらっしゃるかと思います。

 

こちらの研究では、簡単にまとめると以下のようになります。

●局所麻酔を用いて自らの膝関節内をプローブで強く圧迫して疼痛閾値をマッピングした

●退行性変化がある関節軟骨の疼痛は軽微であり、膝蓋上嚢靭帯付着部滑膜膝蓋下脂肪体に激痛を感じた

このような内容になっています。

 

Dye SF , et al:Conscious neurosensory mapping of the internal structures of the human knee without intraarticular anesthesia.Am J Sports Med 1998;26:773-777より転載

 

上記の結果から、膝蓋下脂肪体は「4A」にあたり、段階でいうと”最も痛みが強い組織”であるということがわかりました。

 

TKA術後の膝前面痛に対して膝蓋下脂肪体を切除したことで疼痛緩和を認めた例

引用文献

TKA術後膝前面痛に対する関節鏡視下脂肪体切除の効果

こちらは、TKA術後に膝前面痛が出現した症例に対し膝蓋下脂肪体を切除したことで疼痛の軽減を認めたという内容になります。

この研究は2005年と少し古い文献になりますが、”TKA”と”膝蓋下脂肪体”の関係性を説いた文献として比較的わかりやすい内容になっています。

 

●術後屈曲角度は良好であるが膝前面痛が出現した症例に対して、関節鏡視下の脂肪体切除術を行い、その効果を検討

●対象はTKA207例中、120°以上の屈曲角度を得たのは152例であり、その中で、術後膝前面痛が持続して関節鏡視下の脂肪体切除術を行ったのは8例8膝

●8例8膝のTKAはすべてPS型

●鏡視所見としては膝蓋下脂肪体の発赤、繊維化、肥厚、一部出血が認められ、膝蓋下脂肪体の膝蓋 骨および脛骨コンポーネント間でのimpingementが確認できた

●術後、全例で膝前面痛は消失

●術後の屈曲可動域も変化はなく(膝蓋下脂肪体除去前後)、また膝蓋骨低位の進行も認めなかった

●術前の屈曲角度と関節鏡手術までの期間の相関を調べると、屈曲角度が良好のものほど関節鏡手術 までの期間が短い傾向があった

●深屈曲における膝蓋下脂肪体は、正常膝では膝蓋骨を幅広く覆い、緩衝材としての役割を果たして いると考えられる。

●人工関節置換膝ではポリエチレンインサートー膝蓋骨コンポーネント間に挟み込まれてしまい、このような状態で深屈曲を繰り返すと、膝蓋下脂肪体に慢性的な炎症を引き起こす可能性が高い

●膝蓋下脂肪体には、本来知覚繊維が多く存在するとの報告もあり、今回の症例では船山らも報告しているように、脂肪体が繊維化、肥厚を起こすことによりimpingementが悪化するという悪循環が起 こり、痛みの増強につながったと考えられる。

●今回、術後屈曲角度が良好なものほど、術後膝前面痛の出現、関節鏡手術までの期間が短い傾向を認めたことも、膝蓋下脂肪体impingementの発症に、TKA後の深屈曲が深く関与していることを示唆する。

●特にPS型人工膝関節は、深屈曲時大腿骨コンポーネントが後方ヘロールバックするため、前方において膝伸展機構と脛骨コンポーネントとのimpingementが生じやすい。

 

 

今現在のTKA機種では、膝前方impingementが生じないような設計になっており、今回紹介したような問題は生じにくくなっていると思われます。

また、膝蓋下脂肪体に関しても、執刀医によっては術中に除去してしまうこともあり、術後リハビリを行う前に事前に確認する必要がありそうです。

 

 

3.まとめ

今回は、膝蓋下脂肪体についてまとめていきました。

●膝蓋下脂肪体は痛みを感じやすい

●膝屈伸運動に際し、膝蓋下脂肪体は移動する(膝屈曲時はパテラの後方に滑り込むように動く)

●膝蓋下脂肪体は本来柔軟性に富んでおり、膝の可動に伴って膝蓋下脂肪体も形状の変化が生じる

●膝OAでは度重なる炎症や外的刺激により、膝蓋下脂肪体の線維化および肥厚化が生じ、膝の可動域制限の原因となる

●膝OAによって内反変形および下腿の過外旋が生じていると、膝前外側のスペースが狭くなり、必然的に膝前内側部に膝蓋下脂肪体が押しやられることになり、そこで線維化および肥厚化が生じることで膝前内側部の痛みとして出現することがある

 

以上の内容が今回のまとめになります。

それでは今回はこの辺で。

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました!

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