人工膝関節置換術後の Pseudomeniscus(偽半月様組織) について

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TKA術後の理学療法
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どうも。

管理人のKnee-studyです。

久しぶりの投稿になります。

 

今回は、人工膝関節術後の疼痛についてです。

術後の痛みについての記事はいくつも紹介してきており、リハビリを行っていくうえで改善する可能性のある問題にフォーカスして紹介していきました。

今回はどちらかというと、リハビリでは改善する可能性が困難な人工膝関節術後の痛み(稀なケース)について紹介していきたいと思います。

直接アプローチすることは難しいですが、術後の痛みの原因を解釈する上で知っておきたい情報になると思われます。

 

【痛みの特徴】

●術後に膝の運動を行っていると引っかかる感じがする・クリック音がする

●検査上、問題は無いが術後の痛みが遷延化している

などなど、そういった痛みの原因の一つとなる内容を紹介したいと思います。

 

 

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1.人工膝関節術後の膝痛について

人工膝関節術後の痛みの原因は多岐に渡ります。

セラピストとして介入できる部分とそうでない部分というのは当然存在します。

この判断できる知識は少なからず持っておく必要があると思っています。

 

●軟部組織の問題

●神経系の問題

●内科的(糖尿病など)な問題

●手術自体の問題

●情動面の問題

など、痛みの原因は多岐に渡ります。

 

①時期に応じた術後の膝痛の捉え方

このような痛みが、術後のどの時期に強く出るのかを理解していくことでアプローチ内容は限定されてきます。

逆に言えば、術後からの時期に応じて「やっておかなければならない事」もある程度ははっきりしてくる訳ですね。

TKA術後の疼痛について~術後痛の原因と疼痛の遷延化が及ぼす影響~
Chimentiらは疼痛発生・増悪のメカニズムについて5つのカテゴリーに分類しています。①侵害受容性疼痛②中枢性感作(痛覚変調性疼痛)) ③神経障害性疼痛④運動器由来の疼痛⑤心理社会性疼痛の5つです。TKA術後に限らず、術後の疼痛を理解する上でどんな疼痛が大きく影響しているのか?今回は、Chimentiらの疼痛の5つのカテゴリーが術後のどの時期に関与しているかについて考えていきたいと思います。

このように術後の時期に応じた膝痛の考え方は急性期のリハビリを行っていくうえで非常に重要になってきますね。

 

②情動面と膝痛の関連

上記以外にも、情動面の影響(術後の疼痛と不安との関連性)も多く報告されており、手術前からの患者教育が重要(事前に不安を少しでも和らげる)であるとされています。

TKA術後の痛みの遷延化は「痛みの破局的思考」が影響している
TKA術後患者の約15%は慢性疼痛に移行しているという結果があります。この背景には「痛みの破局的思考」が影響しているとされています。TKA術前から介入するセラピストはこの痛みの破局的思考を評価し、事前に患者の心理状態を把握しておくことは術後の予後予測の一助になることと思われます。

 

 

医療の世界も患者ファーストの時代となっているわけですから、こういった情動面への配慮も術後のリハビリを行っていくうえで必要な能力になってきます。

すべてをここ(情動面)に落とし込むわけではなく、情動面が術後に影響してこないように「事前に対処する」意識をもっておくことが大事なように思います。

 

 

③術後痛の原因を関節だけにフォーカスして考える(関節内と関節外のどちらの問題か…?)

今回紹介してい部分はココになるのですが、術後に膝の痛みが残存している場合、どこに問題があるのかを考えていきます。

ここを考えることで、リハビリを行っていくことで改善する可能性があるのか、そうでないのかがある程度はっきりしてきます。

 

どういうことかというと、痛みの原因が「関節内の問題なのか?」、「関節外の問題なのか?」この2つに振り分けていくということです。

 

【関節外病変】

●神経や血管病変

●腱付着部炎

●軟部組織の問題

 

【関節内病変】

●感染

●アライメント不良

●コンポーネントの設置不良

●非感染性の緩み

 

今回紹介する術後の痛みを引き起こす原因は「関節内の問題」となります。

 

基本的に関節内の問題は痛みの原因としては少ないです。

当然と言えば当然ですが、手術自体が成功していればこういった痛みが出ることは稀なわけです。

 

 

そういった背景がある中でも、手術後の関節内で組織が修復する過程で生じたPseudomeniscusという偽半月組織が関節運動時に関節内で引っかかり痛みを引き起こすことがあるようです。

この場合、関節鏡視下で摘出を行うことになるわけですが、実際の報告では摘出後に疼痛が緩和するようです。(当然、他の要因がないかを判断したうえでの摘出術を行っています)

 

 

2. Pseudomeniscusとは?

偽半月様組織(pseudomeniscus)

pseudo=偽性

meniscus=半月板

日本語に訳すと、「偽半月様組織」と言われるようです。

 

この、Pseudomeniscus の成因として、初回手術時の遺残半月板の再生、滑膜組織の軟骨化生などの機序が考えられています。

 

人工膝関節との関連性としては、以下の研究報告から抜粋します。

Campbell らは TKA 後に Pseudomeniscus を認めた症例を8例報告している
Scherらは TKA 後に屈曲時痛を認める症例に対して,鏡視下に Pseudomeniscus を認め,摘出を行った.病理標本は繊維結合織と繊維軟骨から成る組織を認めたと報告している
初回手術から疼痛の発現までは4ヶ月から5年と幅のある報告がされている

引用元:山本 俊策ら、人工膝関節置換術後の Pseudomeniscus に対して鏡視下手術を施行した2例 整形外科と災害外科 2019 年 68 巻 1 号 p. 121-122

参考文献:Hosam E Matar,Meniscal Regeneration: A Cause of Persisting Pain following Total Knee Arthroplasty 2011;2011:761726. doi: 10.1155/2011/761726. Epub 2011 Sep 20.

 

 

残念ながら、元の英文は抄録のみの閲覧であったため、どのくらいの割合なのかなど詳細は不明です。

 

ただ、ほかの文献をみても、稀なケースであると記されていることから実際に起こる割合としては少ないのでしょう。が、しかし半月板の再生の報告が存在する以上、人工膝関節術後で半月板の遺残がある場合は今回紹介したような症状が引き起される可能性があるという事を理解しておきたいですね。

 

※半月板切除術後の実験および臨床研究で以前から報告されており、またTKA後の再生も以前から報告されている

例えば、TKAないしUKA施行時に内側半月板の切除を行っていきますが、内側の半月板はMCLとの付着があります。

 

ここを上手く切除していくわけですが、この時に少しでも半月板が遺残していたら術後の長く続く膝内側の痛みはもしかしたら偽半月様組織が影響しているかも…?

など考えてしまいますね。

 

 

3.まとめ

今回は、人工膝関節術後の痛みの原因について考えていきました。

術後の痛みがなかなか引かず、考え得るアプローチを行っても上手くいかないケースは誰にでも経験があると思います。

 

今回紹介した痛みの原因は稀なケースとして挙げられますが、

「自家組織を極力残す」よう手術手技が改善される人工膝関節で可能性としては低くないと思います。

 

そういった点では、今回のような痛みの原因もあることを理解しておきたいですね。

それでは本日はこの辺で。

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

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