人工膝関節置換術(TKA)後の炎症症状に対するアイシングの効果について

TKA術後の理学療法について
どうも。

管理人のKnee-syudyです。

 

今回は人工膝関節置換術後(TKA術後)のアイシングについてです。

TKA術後は、予想よりも腫れます。

つまり”炎症が起きている”ということです。

 

この炎症を抑えるために、多くの施設ではアイシングを行っています。

「アイシングの効果については賛否両論ある」といった話を学生時代から聞いており、半ば半信半疑で行っていることもありましたが、実際に急性期時期のリハビリを行うことになって、やはりアイシングの必要性は強く感じる所があります。

ただしケースバイケースな面もあるというか・・・不必要な状況でも漫然と行ってしまっている部分もあるわけですね・・・。

 

今回はそんなTKA術後のアイシングの効果について今一度おさらいする意味を込めてまとめていきたいと思います。

 

以前の記事でTAK術後のアイシングの効果について簡単に触れています。

よかったらこちらの記事もご覧ください。

TKA術後に対する理学療法について~概要編~
膝OAに対し、TKAの手術を受けた後はリハビリを行います。術後は炎症による痛みで膝の可動域制限および歩行障害を呈します。多くは急性期症状が落ち着くのに合わせて徐々にADLも上がってきます。術後のリハビリではこの急性期症状が遷延しないよう管理しながら機能改善や廃用予防に努めます。今回は、このTKA術後の理学療法の流れや注意点などについてまとめていきたいと思います。

 

 

1.アイシングの効果について

学生自体に医療従事者であれば必ずと言っていいほど聞くであろう言葉がありますね。

「RICE処置」のことです。

R:Rest(安静)

I:Ice(アイシング)

C:Compression (圧迫)

E:Elevatoin(挙上)

この4つの行為を

「スポーツ現場などでけがをしたときにやるべき事」

として学びました。

 

この中に「Ice=アイシング」の項目が入っており、やはりケガや術後のような急性期の症状には”冷やす必要がある”というわけですね。

ただし、その長期的効果は不明なところが多く、ほぼ炎症反応の抑制のために用いられているのが現状かと思います。

 

 

そんなアイシングですが、実際に行うことで得られる効果はどうなんでしょうか?

アイシングは神経伝導速度を低下させることで、疼痛を軽減する目的に加え、血管浮腫・血管透過性を低下させ、血清タンパクの血管外への滲出を抑え、腫脹・浮腫を軽減する

などの効果があるとされています。

 

つまり、腫れやむくみの解消に一役買い、冷やすことで痛みを軽減することが効果として考えられています。

しかしこの効果は、適切な指導、管理があっての話であり、実施のタイミングや実施時間を誤れば逆効果になってしまう可能性も理解する必要があります。

 

一つの基準として以下の2つのポイントが挙げられます。

●アイシングによる血管収縮効果は、アイシング除去後30分持続する

●組織温度が15℃まで減少した時には、血管収縮が起こり、血流が減少する。

●一方、組織温度が10℃まで減少するか、寒冷療法を15分以上行うと、血管拡張が起こり、結果として血流が増加する。

●このようなことから、求める生理学的効果が損傷組織周囲の血流を減少することであれば、寒冷療法は15分以下とし、組織温度の減少は15℃程度とする。

 

引用元:Goh Ah-Cheng: 物理療法の EBM 臨床的推論・医療判断学 . 理学 療法学 39巻

4 号 : 253-256, 2012

アイシングは、冷やせば冷やすほどに血流が減少すると思っていましたが、

組織温度を下げ過ぎたり、長い時間冷やしすぎると、かえって血流の増加を

引き起こすんですね。

 

これでは、腫脹の軽減を狙って組織の血流を減少させようとして冷やしてもやり方を間違えれば逆に腫脹が軽減しなかったり痛みが減らなかったりしますよね…。

 

 

 

上記2つの文献の内容からまとめると、アイシングの適切な使用方法は、以下のようになってきます。

●15分以上、10℃以下の低下で血管拡張が起こり、血流が増加することから、アイシングは10~15 分施行し、30分以上間を空けることが推奨される

 

 

2.アイシングに対し否定的な意見

創傷治癒の過程でアイシングがそれを遅延させてしまう可能性があるという報告が散見されます。

 

炎症は必要な反応である

炎症が起こるのは基本的には急性期の状態であるわけで、そこには組織の修復に必要だからこその

反応になるわけです。

組織の修復には十分な栄養が必要になります。

そのためには十分な血流量の確保が重要になってくる訳ですが、循環動態も不良になっている組織に血流が増加するわけなので、そうなると組織はやはり腫れます。

 

アイシングは、この修復のサイクルを遅延させてしまう可能性があるとされ、否定される意見もあるようです。

これを悪とするか・善とするかは捉え方によりますが、組織の回復を促進する上では積極的なアイシングで血流を阻害しすぎるのもおかしな話になりますよね?

 

3.アイシングの適応

アイシングの効果と、アイシングの否定説を理解してもらったところで、ここからは、「実際のアイシングをどのように活用していくか」について述べていきたいと思います。

 

アイシングの実施時間について

上述しましたが、アイシングの必要性はあっても長時間行うことは、かえって組織の血流を増やしてしまい、何のためにアイシングを行っているかが不明になってしまいます。

その点を踏まえて「適切な実施時間」はどの程度なのでしょうか?

 

●一度に行うアイシングの時間は15~20分間

●一度実施したら次にアイシングを行うまで30分間のインターバルをとる

※ここで注意しておきたいのが、タオルで巻いたアイスノンなどの場合は、冷却の効果が低いためにここでいう実施時間に当てはまりません。実際の氷を用いたアイシングを推奨しています。

 

「長く冷やしすぎない」・「空き時間を作ること」を意識していきたいですね。

 

アイシングが必要な状況とは?

ここでは、TKA術後のアイシングの必要性について述べているため、スポーツ現場などとは若干捉え方が違ってくると思います。

 

以下の3つの状況下の場合は、アイシングを積極的に行っていきます。

●患部からの明らかな炎症が認められるとき(安静時の時点から炎症が強い場合)

手術で膝を切ってるから痛すぎて全く膝を動かせないわ…

これじゃあベッドから起きれないしトイレにも行けないわ…

上記のような訴えは、術後のリハビリを担当するときによく聞かれます。

 

運動も関節の運動も何もしていないのに、膝が腫れている・熱を持っている時はアイシングを実施していきます。

 

こういった場合は、大抵強い痛みを訴えており、他の機能や活動への影響が懸念されるためアイシングを行い症状の緩和を図ります。

 

 

●痛みにより必要な運動が行えないとき(例:腫れが強すぎて膝の屈曲ROMが行えない)

こんなに膝が腫れてるのに膝が曲がるわけないわ!

痛い!痛い!

曲げないでちょうだい!

このような訴えも多く聞かれます。

こんな状況下で膝関節のROM訓練の必要性を説いたところで信頼関係を崩しかねない事態に陥ってしまいます。

 

アイシングを行って、組織の血流を減少+腫脹の緩和を図った状況下での訓練を検討していきます。

 

ただし、アイシングを常習化(リハビリ以外の時間も常に冷やしている状態)させてしまうと、組織の粘弾性低下などを招き、軟部組織性の可動域制限を引き起こしてしまうリスクを高める為、注意が必要になります。

 

●腫脹により筋出力が発揮できていない場合(膝折れが生じるなどリスクがある場合)

膝が腫れていて、なんだか力が入らないわ

上手く立てるかしら…

TKA術後のエクステンションラグは腫脹の影響もあるといわれています。

 

膝関節の最終伸展域の筋出力が著しく低下することで膝折れのリスクが高まり、それを認識せずに安易に歩こうとすると膝の痛みと膝折れを起こすことになり、転倒に繋がってきます。

 

そうならないように、事前にSLRが可能であるのか?とか膝関節最終伸展域での自力での保持が可能なのか?などを評価していきます。

 

また、歩行補助具を調整して安全に歩ける環境も検討していきます。

 

 

 

アイシングが必要なくなったかな?と思われる状況は?

アイシングを行うタイミングは理解できたと思いますが、それだけでは漫然といつまでもアイシングを行ってしまうことになりかねません。

患者さんは、「アイシングが重要」と認識したら早く良くなりたいし痛みを取りたいから、どんどんアイシングを行ってしまいます。

そうなると先程も述べましたが、血流の増加を招き腫脹の遷延化が生じたり、組織の粘弾性低下による軟部組織性の可動域制限を生じ、中々膝が曲がらないなどの問題を引き起こすことになります。

 

以下の3つが「積極的なアイシングから必要があればアイシングを検討するレベルに引き下げる基準」になります。

 

●フラットな状態でさほど熱感を感じなくなった場合

だいぶ膝回りの熱がなくなってきたわ

さすっても痛くないし。

安静時の状態で熱感を感じなくなったら、大抵の場合、腫脹も減少しています。

その場合は、積極的にアイシングを行わず適度な血流の確保を意識して様子を見ていくこととします。

 

さほど熱感や腫脹がないにもかかわらずアイシングを行うと、組織の治癒のために必要な血流まで阻害してしまうことになり、創部の治癒の遷延化を招く可能性があります。

 

●安静時の痛みがほぼなくなった場合

もう膝を深く曲げるとき以外は痛く無くなってきたわ。

だいぶ楽になってきたわ。

急性期の症状が緩和してくると、安静時の痛みは減少してきます。

 

正常な反応であるため、そういった訴えが聞かれたらアイシングは段階的に減らしていき、自主的なトレーニングの指導や運動を積極的に指導していきます。

 

その過程で膝が痛む場合や熱を持つ場合は、その時だけアイシングを行なってもらいます。

 

 

●痛みと動きの相関が無くなった時

普段はそんなに痛くないのに、なんだか動くときぎこちなくなるのよね…

膝周囲に熱感や腫脹がさほどないのに、膝関節の可動域制限や歩行時のこわばり感がある場合は炎症以外の問題が予想されるため、アイシングの選択肢は下がってきます。

 

逆にアイシングを行うことで機能障害を助長してしまっていることも考えらえるため、一旦アイシングをストップして変化をチェックすることもあります。

 

 

4.まとめ

今回は、人工膝関節置換術(TKA術後)のアイシングの必要性についてまとめていきました。

アイシングについては誰しもが馴染みのある行為(熱が出れば冷やすという行為)であるために漫然と行ってしまう傾向にあります。

これは医療の現場でも言えることで、具体的な実施時間や必要性の可否を判断する基準は曖昧かと思います。

実際に、文献上でも賛否両論であり、近年ではアイシングを否定する意見が多くなってきているようです。

今回の話でも何度が出てきましたが、すべての状況にアイシングが不要なわけではなく、アイシングが必要な状況もあるということを理解すべきかと思います。

 

それを踏まえて、不必要な場合はしっかり中止が出来て、本当に必要な状況では適切にアイシングが行えるようになると幸いですね。

 

それでは本日はこの辺で。

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました。

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