どうも。
管理人のKnee-studyです。
前回の記事の続きですが、今回も「TKA術後の疼痛について」です。
前回は、Chimentiらの疼痛発生・増悪のメカニズムについて紹介していきました。
前回記事いついてはこちら。
TKA術後に限らず、術後の疼痛を理解する上でどんな疼痛が大きく影響しているのか?について5つのカテゴリーに分類したものを紹介しました。
今回は、前回紹介したChimentiらの疼痛の5つのカテゴリーが術後のどの時期に関与しているかについて考えていきたいと思います。
1.TKA術後と疼痛の関連性について
まずは、TKA術後と疼痛の関連性についてです。
TKA術後は慢性期まで持続する遷延性疼痛が一つの大きな課題となっています。
術後の慢性疼痛への移行に関する研究では、
TKA 患者の 20%および THA 患者の 10%で術後に慢性疼痛を発症するとされています。
満足度の研究結果とも似てきますが、TKA術後は一定数の方が術後も痛みに悩まされているということがわかります。
では、実際にTKA術後にどのように影響しているのでしょうか?
以下に例えを紹介します。
①TKA術後の膝の機能改善との関わり
TKA術後の慢性疼痛は、患者満足度やQOLを低下させる主要因であり、関節可動域制限や膝関節伸展筋力低下などの膝関節機能低下との関連も強いとされています。
②TKA術後の歩容と関連あり
TKA術後の慢性疼痛はTKA後の特徴的な歩容異常としてよくみられる、遊脚前期~中期でのknee actionが消失した歩容「stiff-knee gait」にも関連するとされています。
stiff-knee gaitについての記事はこちらになります。
以上のことより、TKA術後の慢性疼痛は事前に予防する必要性が高く、これには急性期の疼痛管理が非常に重要となってきます。
術後早期から不要な疼痛を与え続けることは、疼痛の遷延化を招くことになり、慢性疼痛を助長する結果に繋がります。
2.Chimentiらは疼痛発生・増悪のメカニズムのおさらい
Chimentiらが提唱した疼痛発生・増悪のメカニズムについてのおさらいです。
①侵害受容性疼痛(nociceptive pain)
②中枢性感作(痛覚変調性疼痛) (nociplastic pain)
③神経障害性疼痛(neuropathic pain)
④運動器由来の疼痛:防御性収縮による筋スパズムや筋力低下に起因する疼痛(motor)
⑤心理社会性疼痛(psychological)
3.TKA術後の経過に沿った疼痛の原因について
ここからが、本題となります。
前回記事からですが、「結局のところ痛みのカテゴリーはなんとなくわかったけど、どの時期にその痛みが出ているのかわからないです…」このような疑問が浮かんでくると思います。
「この時期はこの痛みが出やすいから、介入方法はこうやって工夫しよう」
とか
「この時期はこの痛みが出やすいから、この動きはまだやらないほうがいい」
など自分なりに線引きが出来るようになることが望ましいですよね。
ということで、急性期~慢性期にかけて痛みの出所について紹介していきます。
①急性期時期の疼痛について
急性期の疼痛は手術侵襲・組織損傷、それに伴う炎症由来の侵害受容性疼痛と、膝関節の機能低下や周囲筋の筋スパズムなどによる運動器由来の疼痛の占める割合が大きくなります。
術後早期は、創部周囲の疼痛など侵襲による疼痛が主であり、徐々に大腿周囲筋の筋スパズムや機能低下が生じている部位の運動器性の疼痛の割合が徐々に大きくなると考えられています。
【急性期時期の対策】
●侵害受容性疼痛の抑制⇒炎症の管理
※アイシングや過負荷に注意した動作指導など…
●運動器由来の疼痛の抑制⇒膝周囲筋の筋スパズムの緩和に対する徒手介入
※リラクセーションや相反神経抑制を利用した筋のリリース、良肢位の指導や動作指導など…
ほんの一例ですが、上記のような対策をとっていき、術後の疼痛緩和を図っていきます。
②回復期時期の疼痛について
回復期時期の疼痛については、侵害受容性疼痛や運動器由来の疼痛に加え、痛覚変調性疼痛や神経障害性疼痛、心因性の疼痛の影響も大きくなってきます。
この時期は疼痛の原因が混在するため、急性期時期の疼痛管理次第で、疼痛に関する問題が大きくなってきます。
逆を返せば、急性期時期の疼痛管理が適切で効果が得られていれば侵害受容性疼痛や運動器由来の疼痛が緩和しているため、疼痛の原因がある程度はっきりしやすくなります。
【回復期時期の疼痛対策】
●創部の癒着や長期化している腫脹部位の癒着改善、筋間の滑走不全への介入
癒着の好発部位としては以下の部位が挙げられます。
・創下部(膝蓋支帯など)
・膝蓋上嚢(上包)
・ハムストリングスと腓腹筋の交差部位
●過度の疼痛を控えたROM訓練
・適切なROM訓練を心掛ける
※無理やり関節を動かすというよりは邪魔している要素を取り除くようなアプローチを行い、防御性収縮を極力抑えた状況下でのROM訓練を心掛ける
慢性期の疼痛について
慢性期では侵襲による問題はほぼ解消されていますが、術後の代償性パターンでの活動による他部位の筋スパズム亢進による二次的な運動器由来の疼痛が予想されます。
また、ROM運動などによる、”繰り返しの痛み刺激”による中枢性感作を引き起こしている可能性もあり、その場合は、膝周囲の広範囲に疼痛を訴えることになります。(痛覚変調性疼痛)
このほかに、TKA術後の慢性疼痛には、うつや不安、痛みに対する破局的思考、運動恐怖心などの心因性疼痛のメカニズムが関与することが先行研究より報告されています。
【慢性期時期の疼痛対策】
●運動器由来の疼痛⇒代償性の動作パターンの修正を図っていく
●心理社会性疼痛⇒運動療法+認知行動療法を併用した介入を行っていく
※具体的には、痛みのない動作パターンの学習や痛みについての理解を促していくことが挙げられる(患者教育)
※パンフレットやDVDを用いた患者教育などの研究報告も散見されている
4.まとめ
今回は、TKA術後の疼痛について~術後痛の原因と疼痛の遷延化が及ぼす影響~という内容で記事をまとめていきました。
前回の記事からの続きで、術後の疼痛を理解する上で有益な内容になったと思います。
●術後はアイシングを行う
●TKAの場合は術後に曲げなきゃ硬くなって困るのは患者だから頑張って曲げよう
●この痛みを乗り越えたらあとが楽だから頑張って耐えましょう
このように決まった介入パターンや固定概念を元にした介入方法を続けてしまっていることも考えられます。
一度、術後疼痛の原因について再考してみて、痛みに合わせた介入を検討してみるだけで術後の経過も変わってくるかもしれません。
それでは本日はこの辺で。
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました。
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