TKA術後にも多く認める膝の伸展不全(エクステンション・ラグ(extension lag))について

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TKA術後の理学療法
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皆さんは臨床でよく「ラグがある」と使うことはないでしょうか?

膝に関して言えば、

「他動運動では膝がしっかり伸びるのに、患者自身で膝を伸ばしてもらうと最後まで伸びない」

このような状態を「ラグがある」と言います。

 

そして、この「ラグがある」を専門的に言うと、伸展不全(extension lag)というふうに表現されます。

TKAなどの膝に対する手術後は、疼痛による出力抑制などがかかり、膝の伸展不全が生じやすいです。

臥位では膝の伸展制限は認めないのに、立位になると膝が伸びきらない。

そしてセラピストが膝を伸展方向に押せばしっかり伸展する。

このような現象がある場合は、伸展不全(エクステンション・ラグ(extension lag))を疑います。

 

今回は、この伸展不全(extension lag)についてまとめていきます。

 

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1.膝の伸展不全(エクステンション・ラグ(extension lag))について

膝の伸展不全(エクステンション・ラグ)とは、

簡単に言うと、

「膝関節は他動的に完全伸展可能だが、一般に自動的に努力しても最後の15~20°の伸展が出来ない状態」

を指します。

 

臨床的には、大腿四頭筋の筋力低下による影響が大きく影響して伸展不全(エクステンション・ラグ)を生じるとされています。

 

以前は、内側広筋の機能不全が伸展不全に大きく影響されているといわれていた

膝の伸展不全(エクステンション・ラグ)に関しては、最終伸展域が自力で出せないのが病態であることから、その最終伸展域で活動する筋が原因であるとされてきました。

 

この膝の最終伸展域で活動する筋といえば、「内側広筋」になります。

このことから内側広筋の機能不全により、膝の伸展不全(エクステンション・ラグ)が生じるとされていました。

 

しかし、内側広筋のみに麻酔をかけて膝の伸展運動を行った研究では、内側広筋の機能の有無で最終伸展の活動に差が出なかったとしており、このことから、膝の伸展不全に内側広筋が大きく影響しているとは言えなくなっています。

以前までは、膝関節最終伸展域の活動は内側広筋の貢献度が大きいとされてきたが、内側広筋のみに麻酔をかけても最終伸展が可能であったという研究結果が出てからは内側広筋の機能不全=膝の伸展不全説は否定的な意見が多くなっています。

 

現在では、術後などで生じる膝関節の腫脹や水腫が原因で膝の伸展不全が生じるという意見が出てきている

膝の伸展不全(エクステンション・ラグ)について、近年では神経生理学的な観点で議論されることが増えています。

例えば、術後などに生じる膝関節の水腫や腫脹による大腿四頭筋の活動抑制が関与しているなどの指摘が多くなっています。

 

 

水腫や腫脹は関節内圧を増大させ、それは物理的に膝関節の最終伸展を制限します。

増大した関節内圧は大腿四頭筋の神経活動を反射的に抑制するため、膝関節腫脹を減ずる方法は膝運動療法プログラムにおける重要な役割を果たします。

 

 

TKAと伸展不全(エクステンション・ラグ)の関係性について

TKA術後患者の早期身体機能、および身体能力の回復を阻害する要因の一つに膝の伸展不全(エクステンション・ラグ)が挙げられます。

術後、膝の伸展不全を呈する症例は多く、その改善に難渋する症例も少なくありません。

膝の伸展不全が存在すると全屈曲位での歩行となり、歩容の悪化によって疲労しやすい歩行となります。

そればかりか、屈曲位での荷重が膝関節へのストレスを増大させ、TKA術後では膝前面の疼痛の原因になります。

 

 

膝の伸展不全(エクステンション・ラグ)の原因となる因子とは?

以下に、伸展不全(エクステンション・ラグ)を引き起こす可能性のある因子をまとめています。

図:伸展不全(エクステンション・ラグ)を引き起こす可能性のある因子一覧

 

 

2.伸展不全(extension lag)に対するリハビリについて

基本的にラグが生じている場合、膝関節伸展最終域の筋活動を再学習していく必要があります。

なぜなら、伸展不全により伸展最終域での筋活動が抑制されるため、身体は機能を忘れてしまっているからです。

 

では、具体的な方法を以下に紹介していきます。

 

①自動介助運動により最終域の収縮を学習させる

・端座位で膝の屈伸運動を自動介助運動にて実施

・動かせる範囲は自身で動かしてもらう(代償には注意、代償が出るならそこも介助で正確な運動を誘導する)

・伸展が出なくなる手前から介助しながら最終域まで膝の伸展を誘導する

図:エクステンション・ラグの改善方法の一例

ラグがある人は、意外にも最終域での活動を身体が忘れていることもしばしば・・・

ですから、最終伸展域で筋活動を入れていくことで改善が得られます。

 

主に、TKAなど膝関節に対する手術後などにこのような現象は起こりやすいです。

術後疼痛による出力低下などがその要因になります。

 

 

②拮抗筋であるハムストリングスの伸張性を改善させる

拮抗筋が緊張していれば、伸びるものも伸びません。

なので、膝伸筋である大腿四頭筋の拮抗筋であるハムストリングスへのアプローチを行います。

 

方法は2つ。ストレッチもしくはホールドリラックスになります。

 

・ストレッチ

動的なストレッチにて筋の長さを出していく方法が一つです。

図:ハムストリングスのストレッチ方法の一例

 

持続的に膝を伸展させて、ハムストリングスの伸長する方法でも構いません。

この場合は、一定時間膝を伸展させて膝裏から太ももの裏側の伸長感を感じながらストレッチしていきます。

 

 

・ホールドリラックス(最大収縮後の最大弛緩)

あえてハムストリングスの収縮を入れて、その後生じる弛緩を利用して筋を緩めていく方法です。

図:ホールドリラックスによるハムストリングスの伸長方法

この場合、セルフでは困難になります。

適切な抵抗運動を入れてくれる人がいる場合に有効になります。

 

③パテラセッティングにより最終伸展域での筋活動を入れる

膝を伸展する際、パテラ(膝のお皿)は上方に移動します。

逆に言えば、パテラが上方に移動しなければ膝は伸展しません。

その運動を反復することで大腿四頭筋を鍛えることが出来ます。

 

このトレーニング方法は以前の記事でも紹介しています。

膝OAに対するリハビリについて~膝OAの病態から考える治療戦略~
今回は、膝OAに対するリハビリについてまとめています。膝OAにも典型的な姿勢パターンや運動パターンが存在します。それを理解して治療に活かしていくことで痛みや動きの改善に繋がってきます。ガイドラインなんかで示されているトレーニングや指導だけを行うのではなく、膝OAという病態を理解してリハビリが行えるとより効果的にリハビリが進むものと思われます。

 

・仰向けもしくは長坐位になり膝を伸展させる

・膝下にタオルなど入れて、それを膝で押しつぶすようにする

※押しつぶす際は足首を立てる(足関節は背屈位で行うこと)

・しっかりトレーニング出来ているかは大腿四頭筋の収縮感をモニタリングすることで判断

図:パテラセッティングの方法

 

 

3.まとめ

今回は、伸展不全(extension lag)についてまとめていきました。

ラグが生じる原因は様々ですが、比較的TKA術後の膝にもよく見受けられます。

 

術後疼痛からくる出力抑制がかかり、膝が伸びにくい、もしくは最終伸展域での不安定さの訴えが聞かれます。

この反応は無意識下に生じているものであるため、リハビリにてラグの改善を促すアプローチは比較的効果的に効いてきます。

 

逆にこのラグに対してアプローチしていかないと、「いつまでも不安定性を訴える」もしくは「最終伸展域の活動が不要と身体が認識し膝の伸展制限が生じる」などの問題が生じます。

 

ということで、本日は伸展不全(エクステンション・ラグ(extension lag))について紹介していきました。

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました!

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