TKA術後の膝のこわばり感と固有感覚受容器の関係性について

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TKA術後の理学療法
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どうも。

管理人のKnee-studyです。

 

以前の記事で、TKA術後の膝のこわばり感やSKGについて記事にしていきました。

変形性膝関節症や人工関節置換術(TKA術後)の歩行時に起こる「こわばり感」について
今回は、変形性膝関節症やTKA術後の患者の異常歩行についてです。膝関節疾患の影響により歩行時に膝がこわばってしまい上手く歩けないという訴えは比較的多く聞かれます。この「こわばり感」に対しリハビリを行っていくわけですが、なかなか改善が得られないこともしばしばあり、患者の満足度に影響したことも経験があります。今回はこの変形性膝関節症やTKA術後に生じる「膝のこわばり感」についてSKGという用語とからめて考えていきたいと思います。
人工膝関節置換術(TKA術後)のstiff knee gait(SKG)に対するアプローチについて(歩行時のこわばり感の解消)
今回はTKA術後の歩行時に生じるstiff knee gait(SKG)に対するアプローチについて紹介していきました。歩行時のSKGになっていることはわかっても実際にどうしたら改善するのか不明なところがありますよね…。実際に文献でもSKGが起こっている原理や対処法など散見されますが、患者さんに対して上手く適応するかどうかはやってみなければわかりません。私自身も今回紹介した内容を臨床に取り入れて行っていますが、やはり効果が出るケースとそうでないケースが存在し、もっと問題点の細分化をしていかなければならないと感じています…。

その中でも紹介したように、TKA術後は固有感覚(知覚機能)の破綻が生じていると報告されています。

この固有感覚機能ですが、膝関節が正常に意図して動くために非常に重要な役割を担っており、その固有感覚受容器がTKA術後には機能低下をきたしてしまうわけです。

そういった点を踏まえ、今回は、TKA術後の膝のこわばり感について”固有感覚受容器のエラー”の観点から考えていきたいと思います。

 

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1.固有感覚受容器とは?

固有受容器とは、位置や動き、力の感覚受容器のことで、関節包や靭帯にある受容器の他、筋紡錘や
腱紡錘のことを指します。

 

固有受容器とは、位置、動き、力の受容器のことで、関節包の受容器、靭帯の受容器のほかに、筋紡錘、腱紡錘、関節上の皮膚の動き受容器をさし、これらの受容器の刺激の方法として、関節の圧縮・牽引、筋の伸張、運動抵抗、PNF運動開始肢位などがあげられる。

(柳澤, 2001)

 

固有感覚受容器の一覧は以下の通りです。

●ルフィニ終末(関節包):運動方向と速さの検出
●パチニ小体(靭帯):加速度の検出
●筋紡錘:他動的伸張による筋緊張の検出
●腱紡錘:他動的伸張および収縮による筋緊張の検出
●皮膚の動き受容器(パチニ小体、ルフィニ終末)

 

 

固有感覚は、筋・腱・関節にある固有受容器により提供される身体の運動や位置についての情報であり、身体がどのように動いたか(変化したか)を捉えるために大きな役割を果たしている。

このように、固有感覚受容器の存在は人が安定して動くために必要な機能であることがわかります。

 

そして、この重要な固有感覚受容器ですが、TKAなどの手術侵襲により固有感覚受容器の切除が行われ、固有感覚情報の減少による重心動揺の増悪などが報告されています。

このように冒頭でも説明したように、

「固有感覚」は筋・腱・関節にある固有受容器により提供される身体の運動や位置についての情報であり、身体がどのように動いたか(変化したか)を捉えるために大きな役割を果たしており、TKAなどの手術侵襲により固有感覚受容器の切除が行われれば容易にバランス面に影響することが予想されます。

 

 

2.TKA術後の固有感覚機能について

TKA術後は手術の侵襲や術前からの慢性的な炎症などにより、固有感覚、つまり知覚機能に異常をきたしている可能性が高いです。
【手術そのものの影響】
●手術による関節包や靭帯の侵襲により固有感覚の求心性フィードバックが変化することで
 中枢神経系の混乱が起こり、それが運動戦略や身体図式の異常を引き起こすと考えられている
【膝OAやTKAと固有感覚(知覚機能)との関係性】
●TKA対象者である変形性膝関節症患者においては、術前や術後において膝の関節位置覚や、触覚
 および運動イメージが低下するなどの知覚機能に変化が生じることが報告されている。
●またTKA対象者は、術前から慢性的な痛みを経験しており、このような慢性的な疼痛が術後痛を
 増大させている可能性や、知覚機能の低下が痛みを変調させることも指摘されている。
このように、TKA術後の固有感覚(知覚機能)の異常を報告する内容が多く挙がっています。
以下にTKA術後に固有感覚機能の破綻が生じる理由を列挙します。
●TKA施行対象者は術前から慢性的な膝の痛みを経験している(固有感覚の異常)
●TKAを施行した場合、関節内の固有感覚受容器は大きく切除される
●術後は手術侵襲により関節周囲組織の著しい腫張を生じる
上記の結果から、術直後は固有感覚の著しい低下が予想されます。
つまり、”膝周囲の感覚に異常をきたす”ということになります。
これが何を意味するのかというと、結果的に「膝のこわばり感増大」に繋がってくる訳ですね。
正常な固有感覚機能が働かないということは、膝関節がどのように動いているかがわからなくなっているわけですから、そこに術後の痛みも追加され(固有感覚の異常による過剰な疼痛も懸念されますが)るために、膝そのものはもう”こわばるしか無くなる”わけですね…。
上述した背景から、TKA術後のリハビリプログラムとして、ただ単に、膝周囲の筋力トレーニングや関節可動域訓練を行っていけばいいわけではありません。
知覚機能の再考を考えた治療プログラムを考えていく必要があります。
TKAの手術により、切除され傷害を受けた固有感覚受容器を有する組織にかわり、残存した筋・靭帯組織が代償として働き、正常な関節の位置覚を取り戻すまでにはある程度の時間を要すると考えられます。
TKA術後のリハビリテーションにおいては、膝関節可動域や膝関節周囲筋力のみならず関節位置覚をいかに早く回復させていくかという視点も重要なポイントになってきます。

3.まとめ

今回は、TKA術後と固有感覚受容器の関係性についてまとめていきました。
TKA術後のリハビリについては多方面からの介入方法が紹介されており、術後の疼痛や歩行時の膝のこわばり感に対してのアプローチ方法が確立しておらず、患者によってセラピストが試行錯誤を繰り返し改善を促している状況にあると思います。
そんな中でここ数年のジャーナルの文献などを見る限りでは、知覚機能に着目した報告が散見されています。
以前のようにTKA術後は膝のROM訓練をして、筋力トレーニングをして歩行訓練やバランス訓練を行って…など目に見える部分の介入ではなく、知覚機能(固有感覚)といった違う視点の介入方法も広まってきているものと思われます。
今後はこういった視点の介入もスタンダードになってくる日も近いのではと思いながら患者さんの症状の改善に臨んでいきたいと思います。
それでは本日はこの辺で。
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました。
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