TKA術後の膝関節のROMに影響する因子について

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TKA
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どうも。

管理人のKnee-syudyです。

今回はTKA術後のROM制限についてです。

 

TKA術後のROMでは、完全伸展から深屈曲が得られることを想定として機種の構成が行われています。

そんな中、TKA術後のROM制限の残存が”患者の満足度の低下”の一因になっているとの報告があります。

今回はそういったTKA術後のROMについて、術前から手術手技、術後のリハビリまでの一連の流れの中で影響する因子についてまとめていきたいと思います。

 

 

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1.TKA術後のROM(可動域)に影響を及ぼす因子

TKA術後のROMに関与する因子としては、以下の通りで多数の因子があります。

※大前提として、術中に十分な可動域が得られない限り、術後も得られないことを認識しておくべきである

※また、術前の可動域が良い症例、変形の程度が軽い症例では、術後も良好な可動域の獲得が期待できる

①疾患・術前の可動域・変形や拘縮など・患者側の因子                  ②人工関節のデザイン(インプラントの種類・サイズなど)                 ③手術手技(インプラントの設置)                            ④術後の腫脹や疼痛、リハビリテーション

詳細をそれぞれ説明していきます。

 

①疾患・術前の可動域・変形や拘縮など・患者側の因子

一般に術前のROMが良い症例は、術後も可動域が良いといわれています。

その理由は、大腿四頭筋などの拘縮や質的変化がない事から、骨構造の改善が見られれば術後の

可動域は限りなく正常に近づくはずであるという概念が根底にあるためです。

 

それゆえ術前にこれらの拘縮の改善が重要になってきます。

改善方法としては、膝関節のROM訓練、膝蓋骨の柔軟性運動や大腿四頭筋の筋力トレーニングなどが代表的な方法として挙げられます。

 

これらの運動を継続することで、膝関節のROMの改善、拘縮の改善、疼痛の改善、血行の改善および皮膚の弛緩性を得ることが期待できます。

 

さらに患者自身も術後の訓練に対する積極的な参加など、モチベーションが高まることから術後成績が期待できます。

 

②人工関節の機種(デザイン)⇒インプラントの種類・サイズなど

インプラントの選択は、術前計画から至適サイズのインプラントを選択すべきです。

アジア人の特徴として、posterior offset(大腿骨後顆)が大きいことを認識しておくことが重要となります。

日本の市場を見るとほとんどが海外からの輸入製品であることから、各メーカーの開発コンセプトをよく理解しておく必要があります。

 

当院では上記の通り、海外メーカーの機種を使用しています。

ただ、最近では同じ人工関節の機種でもインプラントのサイズを変更したりなど行っているようです。(通常サイズとスモールサイズといった形で)

そして、特に女性患者さんになるのですが、ほとんどがスモールサイズが適応されています。

やはり海外メーカーなだけあって日本人には通常サイズが合わない可能性もあるってことでしょうか?

サイズの違いによる術後成績もチェックしていければ…なんて思うこともあります。

 

 

③手術手技(インプラントの設置)

通常の適応症例で、良好な可動域を獲得するための特別な手術手技は存在しません。

①膝関節の解剖学的回転中心を理解して正確な骨切りを行う

②正しい位置に適切なサイズのインプラントを設置する

③適切なアライメントと生理的な靱帯バランスをとる

 

当然といえば当然ですが、以上の一つ一つの手術ステップを確実に行っていくことが重要であるといわれています。

特に膝関節前面の皮膚の可動性を確保することが大切であるため、superficial fascial layerの保護が重要となります。縫合する際、確実に縫合可能になるように処理をします。

この層の下で展開することで皮膚血量の保護がされることから、術後の手術創の問題を減らし、術後の皮膚の可動性を獲得することが出来るわけです。

 

 

【骨切りの重要性】

Measured resection techniqueとmodified gap balancing techniqueが用いられています。

それぞれの目的が異なることを認識しておく必要があります。

Measured resection techniqueは、骨の形状に合わせた骨切りを行い、生理的な構造の再建方法となる(大腿骨後顆部骨切りを先に行い、その後で靱帯バランスを整えるのがmeasured resection technique)
modified gap balancing techniqueは、骨の構造の再現ではなく、インプラントの構造に基づく再建方法となる(靱帯バランスを先に整えて、その後で大腿骨後顆部骨切りを行うのがgap balancing technique)

骨切りの時点では、正面から見た荷重軸から骨切り角度を設定しています。

すなわち回旋位に注意を払わないと、過外旋に挿入されたり、過内旋に挿入されたりするため、回転中心が変化することになり屈曲制限の原因となるようです。

回転中心が移動すると、モーメントアームの長さが関節面からの距離と異なることとなり、屈曲時に短縮して結果としてROM制限をきたすことになるわけです。

 

Gapについての記事はこちら。

TKA術後の膝の可動域制限の原因は術中の骨切りにより生じる「関節Gapの差」も影響する
TKA術後は膝の可動域制限をきたしやすいです。多くは術後の炎症による可動域制限が多くを占め、時間の経過と共に膝の可動域も改善されていきます。しかし、その中で思ったように可動域制限の改善が得られないケースもあります。 この場合、術中の「関節Gap」の影響も視野に入れる必要があります。今回はその点について紹介していきます。

 

【骨棘切除とposterior clearanceおよびposterior flexion spaceの確保】

大腿骨では、顆間部の骨棘は顆部後方まで連続することが一般的です。

前方から順次切除すると後方まで容易に切除可能となります。

機種がPS型の場合には、自動的にPCLと共に切除されるので問題は無く、脛骨も同様に、内側の骨棘切除とともにPCL周囲の骨棘を切除します。

 

CR型の機種では必須のテクニックとなります。

骨棘によるインピンジメントが避けられることから、正常なPCLの長さと緊張を確保することで優れた可動域が獲得されます。

またposterior offsetの確保も必要であるので、術前計画にて至適インプラントを選択しておく必要があります。

Bellemansらは、大腿骨骨幹部後方皮質から後顆部までの距離をposterior condylar offsetと定義し、この距離が小さくなると大腿骨後顆が脛骨インサートに接触し屈曲角度を減少させる(1㎜減少すると約6.4°の減少)と報告している。

 

【軟部組織の処理】

至適骨切除を行い、インプラントを挿入して靱帯バランスの再確認を行います。

この時点でROMが不良なときは、その原因をさらに追及していきますが、ほとんどの場合、膝伸展機構の腱と筋の問題であるとされています。

※術中に深屈曲できなければ、術後の深屈曲は不可能であることを理解しておく必要がある

 

【縫合時の工夫】

骨性アライメントの改善により軟部組織の適正な緊張が得られたならば、最終的に縫合時の内・外側支帯の緊張状態を確認する必要があります。

 

縫合時に理想的な支帯の緊張状態が望ましいことから、屈曲伸展時の状態を確認して縫合を行います。

屈曲位で縫合すると、術後の屈曲位での軟部組織の緊張位と一致することから、疼痛の軽減に有用となります。

 

縫合に関連する皮切などについての記事はこちら。

TKA施行時の「皮切」について~TKA術後の皮切により起こり得るリスクを理解しよう~
今回は、TKA施行時の皮切のパターンについてまとめていきました。大事なことは、それぞれの皮切ごとのメリット・デメリットを理解して術後にセラピスト自身がどの皮切で手術が施工されているのかがわかるようになることであると思います。万が一術後の異常が起こった際に「皮切が影響する因子」を知っているか知らないかで”対応策の幅”が変わってくると思います。そういった点では、今回紹介したTKA施行時の皮切の理解は術後リハビリを担当するセラピストにも必要な知識ではないかと思います。
TKAの術中進入法は?Medial parapatellar approachが主流?
TKAでは、膝関節の骨切りを行い人工物であるインプラントを挿入する、つまり関節そのものを入れ替える手術となります。膝関節に至るまでには皮切から関節包の切開までを必要とします。皮切の方法に関してもいくつか進入方法が提言されていますが、我々セラピストが術後に知りたい部分としては、皮切から先の軟部組織を含めた膝関節内への進入方法ではないかと思います。

 

④術後の腫脹や疼痛、リハビリテーション

TKAにて最高の臨床成績を求めるには、術後管理が重要となります。

ここは術後のリハビリを担当する理学療法士・作業療法士の適切な介入が望まれます。

 

当然ではありますが、組織の治癒過程での余分な癒着や拘縮を来さないほうが術後の経過はスムーズに行き、ROMの制限も最小限で済みます。

術後の炎症の遷延化により、疼痛の慢性化を来せば即ROM制限の残存に繋がってきます。

まずは術後の炎症コントロールは必須になってきます。

また、「痛みを出してまで屈曲可動域の拡大を目指すべき」or「痛みに留意しながら愛護的に屈曲可動域の拡大を目指す」この話題は施設によって意見がわけれ、2極化しているようにも思います。

 

 

現時点では、愛護的なROM訓練がガイドラインでは勧められていますよね。

 

ここは、「疼痛」がROM制限の主因になることや情動面のリスクを考慮しての判断であると思われますがセラピストによってや患者さんによってやり方に差が出ているように感じます。

いずれにしても、やり方はどうあれ術後の可動域拡大を得ることはTKA術後の患者さんに関わる全スタッフに課せられた仕事となります。

 

 

文献など多くの報告では、膝関節屈曲120°の可動域が一つの基準として求められています。

しかし実際に膝関節屈曲120°獲得できていても日常生活に支障をきたす例は散見されます。

あくまで一つの基準としてですので、120°以上の可動域を獲得できている方がいいわけですよね。

椅子からの立ち上がりなどの諸動作を”自然に行うことが出来る角度は120°以上”であるとも言われており、この”自然に”というところがpointになってくるんでしょうね…

当院でもCPMを術後の施行していますが、最終的な屈曲角度は130°までと決めて達成するまで毎日行っています。

 

 

2.まとめ

今回は、TKA術後のROM制限についての因子をそれぞれの時期に合わせて説明していきました。

TKA術後のROM制限の原因になり得る因子は多くあり、すべてを理解し評価することは困難を極めます。

ただし、理学療法士・作業療法士は術前および術後の状態のみに注視しすぎており、術中の問題や人工関節の機種の問題についてはおざなりになる傾向にあると思います。

「知っている」と「全く知らない」では大きな差が出てしまいます。

術中のことも「ある程度知った」状態で術前・術後の問題に取り組んでいくことが我々セラピストにとって重要なことであると思います。

今回の記事はそういった面で少しでも役に立てればと思います。

それでは本日はこの辺で。

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました。

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