Medial pivot motionを取り入れた人工膝関節の方が術後の満足度が高い

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TKA
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どうも。

管理人のKnee-studyです。

 

前回は、メディアルピボットモーション(Medial pivot motion)について記事にしていきました。

Medial pivot motionは、正常な膝関節の屈曲運動時に生じる動きの一つです。

膝の屈曲に重要な役割を果たすメディアル・ピボット・モーション(Medial pivot motion)って?
膝の屈曲・伸展共にただ単に膝が伸びたり曲がったりしているわけではありません。膝屈曲運動時にはメディアル・ピボット・モーション(Medial pivot motion)という動きをもとに膝の屈曲運動が起こっています。簡単にいうと、膝の屈曲運動時は膝の内側を軸にして曲がっていくとうことです。

 

このMedial pivot motionですが、1980年台から、正常膝のMedial pivot motionを再現すること

を目的とした人工膝関節が開発されてきており、今現在はこのMedial pivot motionがほとんどの人工膝関節で再現されるようになっています。

 

人工膝関節でも再現されるくらいですから、膝関節の動きにとって非常に重要な機能であることがわかります。

 

今回は、そのMedial pivot motionがどのように人工膝関節の成績に影響しているのかをまとめていきたいと思います。

 

 

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1.TKAとメディアルピボットモーション

近年の人工膝関節デザインはMedial pivot motionを再現するための構造になっています。

つまり、インサートの厚みやインプラントの作りも内側と外側で違っているということです。

 

では、なぜこのように人工膝関節も年々正常の膝関節に近づけようとしているのかについて考えていきましょう。

 

人工膝関節の課題~安定性と可動性~

一昔前の人工膝関節デザインの多くは、安定性を優先する思考が強く、膝関節の自然な動きが損なわれていました。

併せて膝の可動域も極端に狭く、ぎこちなさが残ることが頻発していました。

また、その反対に、自然な動きを優先するあまりに膝関節の安定性が損なわれるといった問題も同時に抱えていました。

 

人工膝関節の術後に満足できない人もいる?

上記の課題が影響してか、人工膝関節は優れた長期成績を有しているにもかかわらず、術後の機能は十分だと感じていない患者が一定数存在していることは事実として挙げられます。

 

TKAの術後の状態は、どうしても人工物が入っているという認識が強くなり、「馴染む」までには思っているよりも時間がかかる課題となります。

 

実際に、TKA後の患者の約20%が満足でないと回答しているとの報告もあります

逆に言えば、80%の患者は満足しているともいえるため、決して外科的手術の中では低い値ではないことがわかります。

 

人工膝関節の術後の満足度の向上には「関節の安定性・適合性」が重要なポイントとなる

「PS型人工膝関節では、ポストカムが接触する屈曲70~80度以降でないと安定が得られていない」

などと言われるように、人工関節には全可動域間での安定性の確保が必要とされています。

 

このように、膝関節の屈伸全可動域で安定性が得られるだけの接触面積を獲得できていないと、術後の不安定性を感じることとなり、満足度の低下に繋がります。

 

近年では、大腿骨と脛骨の適合性が強化されることで、膝関節の安定性と安心感が向上しています。

そして、適合性が向上した結果、接触面が大きくなり接触応力が軽減されています。

 

このように、関節の適合性や安定性のためには、より正常膝に近い動きが必要とされ、

膝内側部の拘束性やMedial pivot motionの再現が必要と考えられるようになり、Medial pivot motionを人工膝関節術後の膝にも再現できるよう開発が進められてきました。

 

Medial pivot motionを取り入れた人工膝関節のポイント

Medial pivot motionを人工膝関節に取り入れる以前は、全て左右対称(内外対称)の1軸性でした。

大腿骨のインプラントも間にはめ込むインサートも左右対称(内外対称)であり、当然Medial pivot motionやロールバック機構は完全に無視した構造となっていました。

 

Medial pivot motionの機能が取り入れられてからは以下の構造に変化が見られています。

●インサートの形状の違い

正常膝と同様に内側を凹状、外側を凸状ないし平坦に作られています

●インサートの厚みの違い

正常膝では膝の内側部の拘束性が高くなり、外側部は自由度が高い構造になっています。

そのことでMedial pivot motionやロールバックが発生する仕組みになっています。

そのため、インサートも、内側に厚みを持たせ、外側は内側に比べ薄いつくりになっています。

●大腿骨は非対称性の顆部でデザインされている

インサートだけでなく、インプラントも内外側で非対称になっており、自然なMedial pivot motionを再現するようになっています。

 

 

 

2.Medial pivot motionが人工膝関節に好影響を及ぼしていることを裏付ける文献

 

従来のCRあるいはPS型人工膝関節を片方に置換し、もう片方にMedial Pivot型人工膝関節を置換した患者において、約76%の患者がMedial Pivotを置換した膝の方が良好と答えた

引用文献:Pritchett JW “Patients Prefer A Bicruciate-Retaining or the Medial Pivot Total Knee Prosthesis”, The Journal of Arthroplasty, 2011.

海外の文献ですが、このようにMedial pivot motionを取り入れた人工膝関節が従来のCR型(PCL温存)やPS型(ACL・PCL切除)よりも術後の膝の状態が良好と答えたとしています。

 

以下にキーワードだけを抜粋して紹介します。

 

対象と方法

492人の対象者の内、440人の患者は、両側に異なる人工膝関節を置換。

術後のリハビリメニューなどは同じ条件で実施。

2年間のフォローアップ後、「最も状態がいい膝はどちらか?」を聴取。

 

【置換された人工膝関節の種類】

●前後の十字靭帯保持(ACL-PCL)⇒BCR型のTKAのこと言います

●後十字靭帯保持(PCL)⇒CR型のTKAのことを言います

●内側ピボット(MP)⇒Medial pivot motionの機能を持ったTKAのことを言います

●後十字靭帯置換(PS)⇒PS型のTKAのことを言います

●可動ベアリング(MB)⇒mobile bearingの機能を持ったTKAのことを言います

 

結果

・人工膝関節のタイプ間で、平均疼痛スコア、可動域、膝スコア、または機能スコアに重要な違いはなかった

このことから、人工膝関節のタイプによって、術後の成績に大きな差はない事がわかります。

あとは患者の満足度など主観的な違いになります。

 

・2年間の評価で、「全体的に膝が良いのはどれですか?」と質問に対して以下の結果が得られている

●PSとACL-PCLの比較(89.1%はACL-PCLを好んだ)

●PSとMPの比較(76.2%はPSよりもMPを好んだ)

●MPとPCLの比較(76.0%はPCLよりもMPを好んだ)

●MBとMPの比較(61.4%がMBよりもMPを好んだ)

●ACL-PCLとMPは同等に優先された

 

 

上記のような結果となっています。

 

このことから、従来のCR型およびPS型の人工膝関節と比べて、MP型(Medial pivot motion型)の人工膝関節を置換した場合の満足度が優位に高い(約76%)ことがわかります。

 

以上のように、人工膝関節のタイプによる機能改善に大きな差はないものの、術後の満足度や違和感の差には違いが出ていました。

 

満足度が優位に高かったのは、ACL-PCL(ACLとPCLを温存する最近ではBCR型のTKA)とMP(Medial pivot motionの機能を持つTKA)の2つになりました。

 

満足度が高くなった要因として、階段昇降時の安定性や膝の屈曲運動時の安定性が高い(膝関節運動全般で不安定性を感じることがない)・クリックなどの異音がしないなとが挙げられています。

 

いずれも正常の膝関節により近い状態の動きを再現したタイプの人工膝関節になり、

やはり正常膝の動きに近づけた人工膝関節の方が良好な結果が得られるということが示唆されました。

 

 

3.まとめ

今回は、前回からの続きで、メディアルピボットモーション(Medial pivot motion)について記事にしていきました。

ただし、今回はMedial pivot motionが人工膝関節にどのように好影響を及ぼしているかに焦点を当ててまとめていきました。

 

文献からも分かるようにMedial pivot motionを取り入れた人工膝関節の方が、より術後の満足度を高める結果になっていることがわかりました。

 

近年ではほとんどがこのMedial pivot motionを再現するデザインが人工膝関節に採用されており、それに伴って、術後のリハビリも膝関節を1軸の動きではなくもっと3Dで捉えていくことが重要になっていることがわかりました。

 

この辺が知識として頭に入ってくると、TKA術後のリハビリの捉え方も大きく変わってきそうですね。

 

それでは本日はこの辺で。

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました!

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