人工膝関節術後の創傷治癒を遷延させる要因について

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どうも。

管理人のKnee-studyです。

今回も前回に引き続き、人工膝関節置換術後の創傷治癒に関する内容を紹介していきます。

【前回記事】

人工膝関節術後のリスク管理について~皮膚の治癒過程について~
今回は人工膝関節術後の皮膚の治癒過程についてまとめていきました。治癒過程にはいくつかの段階があり、調べる教科書や参考書によって異なります。大まかなベースは変わらないため、今回は4つの段階でまとめています。 【皮膚の治癒過程4つの段階】①血液凝固期②炎症期③増殖期④再構築/成熟期 実際に、臨床の場面でここまで意識してリハビリをおこなうことは少ないかもしれませんが、治癒過程を一度簡単でいいので頭に入れるとそうでないとでは、安心感が違うと思います。

 

前回は創傷治癒がどのような過程で進んでいくのかをまとめていき、今回はそれを遷延させる因子についてまとめていきたいと思います。

人工膝関節術後の創部管理は理学療法士としても重要な課題となります。

というよりも、術後に創部を見る機会が最も多いのが理学療法士であるわけ(リハビリ中創部を観察することが多く、その時間も長い)なので、創傷治癒に関する理解は重要かつ必須であると思います。

 

今回はそういった創傷治癒を過程を見ていく中で、それを阻害する因子についてまとめていきましょう。

 

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1.人工膝関節術後の創傷治癒を遷延させる因子について

人工膝関節術後の創傷治癒遷延化に関与する原因についてまとめていきます。

①手術部感染

②血液供給(循環機能)

③栄養状態

④疾患

上記4つが術後の創傷治癒を遷延化させる要因になるとされています。

以下に細かく説明していきます。

 

①手術部感染

まずは手術部感染についてです。

理学療法士としてあまりなじみのないワードかもしれませんが、執刀医からはよく聞かれるワードになります。

手術後の感染は術後成績を著しく低下させる要因になるため、感染兆候がないかのチェックはどこの施設でも行っていると思います。

※CRP値やWBCなどが代表的な指標になります。

 

人工膝関節術後を始めとする人工関節は、感染リスクは他の手術と比較しても高いことが報告されています。

一度感染すると、治療は難しく人工関節のゆるみを引き起こす可能性が高くなります。

その結果、再置換の施行や抗菌薬入りのセメントを一定期間、直接膝に入れて過ごすなど長期的な治療の必要性が出てきます。

ちなみに、

深部手術部感染の発生率は、初回人工関節手術で0.2~3.8%、人工関節再置換術で0.5~17.3%

と報告されています。

引用元は、骨・関節術後感染予防ガイドラインとなっています。

清潔手術野におけるSSI発生率は、表層SSIと深部SSIを含め0.1~17.3%程度である。

初回人工関節置換術で0.2~3.8%程度、人工関節再置換術で0.5~17.3%である。

日本整形外科学会診療ガイドライン委員会編:骨・関節術後感染予防ガイドライン,改訂第2版,南江堂,東京 2015 より一部改変し抜粋

感染の主なリスクファクターとして、高血圧、低体温、喫煙、出血、輸血が挙げられており、これらの要因は血流量を低下させ、殺菌能を低下させることが示唆されています。

 

※以下の”血液供給”に繋がる内容になりますが、血流量の問題は創傷治癒には必須で、治癒が正常に起こるためには循環動態はしっかりチェックしていきたいところですね。

 

②血液供給(循環機能)

次は、循環機能についてです。

上記でも少し触れましたが、創傷治癒のためには十分な栄養や酸素が必要になることはイメージできると思います。

その必要な要素を運搬してくれるのが血液になります。

つまり、創傷治癒=血液(血管・循環)といった構図が成り立ちます。

炎症反応における血管由来細胞の炎症部への移動、創部への栄養、酸素供給において、血管機能は極めて重要となります。

 

創部おける酸素分圧の低下は線維芽細胞の遊走やコラーゲン合成を抑制し、組織修復能を低下させます。

周術期の酸素補充は創縁の酸素分圧を増加させ、感染の発生率を低下させるとされています。

 

③栄養状態(低栄養)

次は栄養状態についてです。

低栄養による創傷部へのエネルギー供給不足は組織修復に大きく影響します。

 

低たんぱく血症では創傷治癒が遅延し、創離開や縫合不全といった術後合併症の可能性が高くなります

 

単一栄養素の欠乏も組織修復に影響し、ビタミン類(A・B・C・D)、ミネラル(亜鉛・マグネシウム・銅)の不足は線維芽細胞の増殖やコラーゲン合成を低下させ、創傷治癒に影響を与えると報告されています。

 

④疾患(糖尿病など)

糖尿病によって高血糖が持続するとHbA1Cが上昇しますが、HbA1Cの増加は赤血球からの酸素放出を抑制するため、創傷部の酸素濃度は低下し、修復の条件は悪化します。

つまり、

糖尿病=創傷治癒の遅延リスク↑

となります。

また、糖尿病は感染のリスクも高くなると報告されており、

糖尿病でかつコントロール不良の場合は、

術後の管理には通常以上に配慮が必要になります。

※以前の記事でも紹介しています。

人工膝関節全置換術(TKA術後)の適応と”感染リスク”など注意すべき点について
TKAの適応は年々広がっており、中高年層から高齢層まで幅広く行われている手術になります。また高度の肥満に対しても適応があり、リウマチなどの関節の炎症性疾患に対しても良好な治療成績が得られています。そんなTKAですが、適応が広い反面、そこに潜むリスクを十分に把握する必要があります。特にTKA術後のリハビリを行っていく理学療法士としては「リスクの把握」はしっかり行っておきたいところですね。

 

その他、インスリン不足による細胞の栄養枯渇、免疫機能低下などといった複数の要因により正常な治癒機転が生じないことで創傷治癒は遅延します。

 

また、閉塞性動脈硬化症やバージャー病といった局所循環障害を引き起こす疾患では血管新生、肉芽形成が障害され、易感染となることで創傷治癒過程が遅延します。

 

 

2.まとめ

今回は、人工膝関節術後の創傷治癒を遷延させる(阻害する)因子についてまとめていきました。

低栄養状態や糖尿病の影響は、なんとなくイメージが出来ると思いますし、人工膝関節術後に限らずその疾患に対する術後でも起こり得るリスクとなります。

今回、より理解しておかなくちゃいけないのが、手術部感染(SSI)かと思われます。

表在性の感染であれば比較的生じやすいリスクになり、正常な創傷治癒過程を壊すことになります。

理学療法士として、術後創部のチェックは必ず行うと思いますが、合わせて血液データ(CRP値やWBCの数値)のチェックは必ず行い、感染の兆候が無いかを経時的に見ていく必要があると思います。

 

ということで、今回は以上になります。

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました!

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