どうも。
管理人のKnee-syudyです。
今回は、TKAと糖尿病の関係性についてです。
前回の記事で、糖尿病の有無でTKA術後の感染リスクが3~4倍差があり、糖尿病が感染リスクを大きく高めていることを紹介しました。
今回は、同じ糖尿病でも、「疼痛との関連性」について文献を交えて紹介していきたいと思います。
TKA術後の慢性疼痛に至る割合は約20%程度と言われており、比較的高い確率で術後も痛みを抱えることになるという事です。
このTKA術後の慢性疼痛への移行を勧めてしまう一つの原因として「糖尿病」が影響していると明らかにされています。
今回はその背景についてまとめていきたいと思います。
1.人工膝関節置換術(TKA術後)の慢性疼痛と「糖尿病」の関連性を示した文献
まず初めに文献の紹介です。
TKAとTHA患者併せて193名を対象とした研究であり、術後の疼痛遷延化と糖尿病・メタボリックシンドローム・肥満との関係性を調査しています。
研究の目的
TKAとTHA術後の遷延痛と、糖尿病・メタボリックシンドローム・肥満との関係を調査すること
方法
・対象はTHA(74症例中54症例)・TKA(119症例中80症例)であり合計で134名となった
※調査を完了した155人の患者のうち、21人はフォローアップ中にさらに関節置換手術を受けて除外された
・糖尿病、メタボリックシンドローム、空腹時血糖異常、耐糖能異常、肥満などを調査し、術後1~2年時の術後関節痛、術後遷延痛(3か月以上続く痛み)との関係を調査した。
結果
・134人の患者のうち49人(37%)に痛みを伴う関節があり、そのうち18人(14%)に3か月以上持続する術後遷延痛を訴えていた(14%が慢性疼痛に移行した)
・術後関節痛・術後遷延痛ともに、THA後よりTKA後の患者に有意に多く認めた。
・術後の関節痛および術後の慢性疼痛いずれもTHAの患者よりもTKAの患者の割合が高かった
・術前の糖尿病は、THA・TKA術後の慢性疼痛の危険因子となることが示唆された
・メタボリックシンドロームや肥満は術後関節痛・術後遷延痛ともに危険因子とはならなかった
・BMIが30以上の高度の肥満では術後関節痛の危険因子となっていた(慢性疼痛とは関連性なし)
この研究から、糖尿病の存在が術後の慢性疼痛と関連していることがわかりますね。
他に興味深いところとして、「BMI30以上の高度の肥満」の場合は、慢性疼痛との関連性はないものの、術後の関節痛のリスクになるという結果が出ていました。
つまり、高度の肥満患者さんの方が術後の疼痛を訴えやすい傾向にあるということです。
術後のリハビリを行う身としては耳寄りな情報になりますね。
2.人工膝関節置換術(TKA術後)の慢性痛と糖尿病の関係性について
近年、TKA術後の慢性疼痛への移行が表在化してきており、そこに対しての研究が散見されるようになってきています。
疼痛の遷延化が起こる要因には、以前紹介した「痛みの破局的思考」が一つの要因として挙げられると紹介しましたが、
今回はその要因とは違って、「糖尿病」という病気からの影響についてとなります。
「変形性膝関節症による関節痛は糖尿病により増強される」
と結論付けた研究があります。
このように、TKAだから糖尿病により術後の痛みが増悪するというわけではなく、手術する以前の状態から糖尿病により痛みを増強しやすい環境にあるということも考えられるということになります。
実際の研究結果を引用すると、
●糖尿病患者は、非糖尿病患者よりも平均してKnee Injury and Osteoarthritis Outcome Score(KOOS)の痛みスコアが高かった
⇒糖尿病を既往に持つだけで変形性膝関節症による疼痛は増強することが示唆された
●糖尿病患者の膝関節は、非糖尿病患者の膝関節よりも高い平均滑膜炎スコアおよびSFにおけるIL-6の高濃度を示した
⇒糖尿病を既往に持つ方が、滑膜炎スコアも高く情動面ではなく機能的に問題にも影響することが示唆された
3.まとめ
今回の内容をまとめていくと、糖尿病と変形性膝関節症やTKA術後の痛みの関係性がわかったと思います。
介入時の問診時に糖尿病があるか否かはしっかりチェックしていきたいところですね。
それでは本日はこの辺で。
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました。
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