どうも。管理人のKnee-studyです。
久しぶりの投稿です。
中々更新できない日々が続いています…。
今後も自己学習の意味も込めて更新していきたいと思います!
今回は人工膝関節関連の内容になります。
人工膝関節後のリハビリを行う際、膝の屈曲ROMを治療効果の一つとすることがあると思います。
除痛が最もなところですが、膝がスムーズに動くことも満足度に影響を及ぼす一つの因子になります。
膝の屈曲ROMだけでなく、「術後の膝の違和感」という観点からも今回紹介する脛骨の後方傾斜角が関与している可能性があります。
ということで、今回は膝屈曲ROMや痛みにも関連があるとされている脛骨後方傾斜角についてどんなものなのかを理解していきましょう。
1.脛骨の後方傾斜角って?
まずは呼び方から…。
図:脛骨後方傾斜角
このように呼びます。
読んで字のごとく、後方に傾斜している角度のこと言います。
脛骨の後方傾斜角はどれくらいついているもの?
この脛骨の後方傾斜角ですが、一定の角度(後方に傾斜している)がついています。
大体10°傾斜しているとか13°傾斜であるとか…
実際に臨床で脛骨の後方傾斜角をみていくとかなりばらつきが見られます。
ただ脛骨の後方傾斜角がほぼないという症例はほとんどいませんので、「必ず脛骨は矢状面上で後方に傾斜している」という事は理解しておきましょう。
人工膝関節においては、矢状面上のアライメントを取る際の一つの指標となっています。
特に、CR型のTKAでは矢状面における基準として用いられており、過去の報告ではGromovらが至適 PTSは0~7°と報告しており、この範囲外の場合インプラントの生存率が低下するとしています。
脛骨後方傾斜角が大きい・小さいで何が変わるのか?
前述したように、脛骨は矢状面上で必ず後方に傾斜しています。
では、この傾斜角が大きい・小さいとどうなるのでしょうか?
※あくまで明確な答えではなく、推測のレベルも含まれます…。
●脛骨の後方傾斜角が大きい
⇒⇒⇒膝屈曲ROMが拡大する、反面PCLの緊張↑や膝前面のストレス↑となる
●脛骨の後方傾斜角が小さい
⇒⇒⇒場合によっては膝屈曲時に後方のつまりが生じる、靱帯性のストレスがなく固有感覚受容器関連のエラーは少なくなる可能性あり
人工膝関節において脛骨後方傾斜角の意味合いは?
先程も述べましたが、人工膝関節の矢状面アライメントについては脛骨後方傾斜角(PTS)が指標とされ、特にCR-TKAでは変形前のPTS を再現することが望ましいとされています。
●Seoらは術前後のPTSの差が少ない方がPTSの変化が大きい群に比べ有意な改善がみられた報告している。
※研究の限界としてPCO(大腿骨の後顆オフセット)などの因子を含まれていないことを挙げている
PCOについての記事はこちらになります。
●BellemansらはPTS は術後の屈曲角度に影響を与えるとされ、CR型のTKAでは PTSが1°増加すると屈曲角度は1.7°増加するとし、PTSの重要性を報告している。
※ただし、本研究ではPTSとROMの相関を見出すことはできなかったとのこと
2.脛骨の後方傾斜角を測定する方法
では、実際にPTSの測定(診かた)はどのように行っていくのでしょうか?
こちらも統一した測定方法がないようです。(PTS は計測に用いる検査や指標に影響を受ける)
【Yooらの報告】
単純X線像を用いるとPTSは平均10.6°であると報告
脛骨の前面、後面、近位部・中央部の解剖軸、腓骨軸を用いるとそれぞれ13.8°、7.8°、10.8°、12.9°、9.5°であると報告している
※脛骨後方傾斜角の量は患者間で、また測定に用いた解剖学的基準によって大きく異なっていたようです。
【Mericらの報告】
対象は13,546名
CTを用いると平均PTS角度は7.2°±3.7°(範囲-5°~25°)と報告
実際のPTS角度は、4°未満⇒1568人(11.6%)で、10° 以上⇒2581人(19.1%)であった
やはりPTSはバラつきが多いのがわかりますね~
上記のように PTS の計測方法に一定の結論は出ていないようですね。
重要なのは、測定方法の統一を行う事と、前後で必ず基準がズレないようにすることではないでしょうか?
【方法①脛骨中央を通る線を軸に後方傾斜角を算出する方法】
①脛骨骨幹部の横径に2つの平行な線を引き、その2つの線の中点を結んだ線を脛骨の長軸とする
②脛骨内側顆の脛骨天蓋面に接線を引く
③線①に対する垂線③を引き、線②とのなす角を測定し脛骨後方傾斜角を算出する
【方法②脛骨前面を基準として後方傾斜角を算出する方法】
脛骨近位部前皮質と脛骨内側プラトー線の垂直線によって測定
大きく分けて、「脛骨の前面のラインから」と「脛骨中央からのライン」の2パターンに分けられます。
文献ではこちらが見る範囲内では偏りはない印象です…。
個人的には、脛骨前面のラインからPTSを測定すると傾斜角が大きくなる印象を受けます。
また、脛骨の中央のラインを取る際も下肢全長でしっかり見ているか・そうでないかで差が出る印象を受けます。
いずれにしても検査条件の統一が最重要事項であることと、前後での評価(術前後や期間を開けての比較など)を行う際は、必ず初期に行った基準で再評価を行う事が必須になるものと思います。
3.まとめ
今回は脛骨後方傾斜角(PTS)についてまとめていきました。
人工膝関節の患者さんに対しリハビリを行う際、事前に画像所見を確認すると思います。
その際にチェックするポイントの一つに脛骨後方傾斜角を入れると、膝の屈曲ROMや痛みの予測に繋がる可能性が出てきます。
以前紹介したPCOのチェックと合わせて脛骨後方傾斜角もチェックすることが望ましいと思います。
それでは本日はこの辺で。
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました。
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