どうも。
管理人のKnee-studyです。
今回は、人工膝関節置換術術後の生活を送る上で注意する点について考えていきましょう。
人工膝関節置換術(TKA)といった人工関節系の手術は術後の経過が良いことで知られています。
そんな人工膝関節置換術ですが、術後に注意すべき点は全くないわけではありません。
やはりどんな手術でもリスクは伴いますし、正常の組織に比べて術後は弱くなります。
今回はそんな人工膝関節置換術の術後の生活で注意すべき点を列挙していきたいと思います。
1.人工膝関節置換術の術後のリスクについて
まずは人工膝関節置換術の術後合併症についてです。
術後合併症に、感染、深部静脈血栓症、腓骨神経麻痺、膝蓋骨脱臼、人工関節のゆるみ、疼痛
などが挙げられます。
以下に説明していきます。
感染
人工関節周囲感染発生率は、1.1 ~ 2.2%に起こるとされています。
要因としては、
内因性に低栄養、肥満、糖尿病、関節リウマチ、腎障害が挙げられます。
外因性に手術の既往、ステロイド関節内注射の既往、手術時間等が挙げられます。
発赤、腫脹、熱感、疼痛、関節水腫などの症状に加え、白血球、CRP(C反応性蛋白)
などの血液検査をその都度チェックして管理していきます。
深部静脈血栓症(DVT:Deep Venous Thrombosis)
DVTは、手術中または手術後、血行が悪くなることで血管内に血の塊ができることです。
DVTはTKA術後患者において比較的高い頻度で発生する合併症の一つであり、
その発生頻度は44~80%と報告されています。
このDVTは発生し血栓が飛んでしまうと、肺塞栓症を引き起こすことになり命を落とす可能性があるため注意が必要です。
そのため術後、臥床している最中はフットポンプを装着してDVTの予防に努めます。
また、患者自身でも足関節の底背屈運動を行ってもらうようにし予防を促していきます。
腓骨神経麻痺
腓骨神経麻痺は、基本的に術後の管理が悪いことで生じる問題になります。
術後つま先が外側に倒れるような格好をして長く寝ていると、
腓骨頭の部分で神経が圧迫され麻痺が起こることがあります。
基本的に自然に改善しますが、長期間の加療が必要になることが多いです。
術後の膝蓋骨脱臼
TKA後の膝蓋骨脱臼率は1~12%とされており、その要因にコンポーネントの内旋設置、
転倒などに伴う膝関節の捻転、外反膝の既往が挙げられます。
コンポーネントの内旋設置や外反膝の既往の場合、外側支帯を含む大腿外側の軟部組織による
外側牽引力が加わることで脱臼します。
人工関節のゆるみ
術後、感染などが生じるとインプラントの緩みが生じることがあります。
また、転倒などにより膝を強打した際もインプラントが緩むことがあります。
術後は、「転倒に注意すること」・「感染しないこと」を意識する必要があります。
※「感染しないこと」に関しては患者さん自身および医療スタッフが出来ることには限界がありますが・・・
疼痛
術後の疼痛はほとんど患者さんにみられる症状です。
当然、手術による侵襲があるため炎症が起こりそれが痛みを引き起こす原因になります。
基本的には手術後数日で落ち着いてきますが、術後の管理が行き届いていないと、痛みが長引くこともあります。
術後はアイシングを定期的に行い、痛みの軽減に努めます。
ただし、アイシングも長時間行うとかえって逆効果になることもあるため、必ずアイシングいの実施時間や方法は指導を行う必要があります。
2.人工膝関節置換術の術後の生活で注意する点は?
では、次は人工膝関節置換術の術後の生活で注意する点とは?になります。
術後に注意する点としては、基本的には「膝に負担のかかる動作全般」に注意する必要があります。
これは当然のことを言っているだけで何のインパクトもありませんが、以下に「どういった動作が膝に負担をかけてしまうのか?」を紹介していきます。
正座・あぐら・割座はNG
正座・あぐら・割座は膝を深く曲げることになるため人工膝関節置換術術後は基本的に禁忌になります。
正座と割座は患者自身も出来る気がしないと思うでしょうから、そこまでリスクにはならないと思います。
しかし、”しゃがみ込み動作”とか”床からの立ち上がり動作”などで正座のような状態になろうとする方もいるため注意は必要になります。
動作の最中に”それ以上曲がらないような感じ”を自覚すると思いますが、
動作の勢いや弾みで深く曲げすぎたらTKAのインプラントの破損などに繋がる可能性があるため注意となります。
あぐらに関しては、結構動作が可能な方がいます。
十分な膝関節の可動域を確保できていれば動作自体は可能ですが、
膝外側への負荷や長時間行った場合のこわばり感の増悪に繋がってくるため、
あぐらをかくなら短時間で行うことをお勧めします。
基本的には床に座った際は、長坐位(足を真っすぐ伸ばした姿勢)で過ごすことをお勧めしています。
その長座位になる過程に関しては以前の記事で紹介しています。
過度な運動は避ける
これはどの手術後で同じことが言えますが、過度な運動は禁忌です。
ウォーキングなどは退院後すぐに始めていい運動になりますが、それ以外のスポーツに関しては主治医の許可が必要になります。
基本的には、「接触がないスポーツ(コンタクトプレー)」や「走る・ジャンプの要素がないスポーツ」は可能とされています。
※ゴルフ・ゲートボール・ダンス・水泳など・・・
急な方向転換など「膝を捻じるような動作」には注意が必要
膝関節の構造は「曲げ伸ばしに特化した関節」になります。
回旋運動は膝の屈伸に伴って出現しますが、周囲の組織の制動下で起こっているものになります。
このことから、膝を捻じるような動作はインプラントの緩みの原因は破損のリスクになるといえます。(一回や二回ではなく、反復した回旋ストレスや強力な回旋ストレスのことを言います)
”急な方向転換”や”振り向き動作”は膝の回旋ストレスを強めるリスクがあるため、術後早期は特に注意が必要になります。
低い椅子からの立ち座り動作では膝の負担が懸念される
立ち座り動作は膝関節に対して負荷が強くなります。
人工関節自体は強度もしっかりしているため、立ち座り動作が原因で問題が生じるリスクは非常に低いものと思われます。
しかし、椅子の高さ次第(椅子が低い場合)では膝そのものの負担が増大する可能性があり場合によっては環境の調整を行うことをお勧めすることもあります。
良く多い事例では、浴室の洗い場にある椅子が低くて「座る時に膝に痛みが出現する」or「立ち上がれない」といった例です。
膝が深く曲がれば曲がるほど、そこから伸ばすときに必要なパワーは大きくなります。
こういった場合は、あえて椅子を使わずに床に座って身体を洗うことを提案したり、高さのある椅子に変更するなどを提案していきます。
高さのある椅子はこんな感じですね。シャワーチェアを使うと楽に身体を洗うことが出来ます。
階段の後段や下り坂は注意が必要
坂道を下る際は、ブレーキを掛けながら歩かなければならないことから膝への負担が増大します。
たまにであれば問題ないですが、自宅環境やその周囲環境によっては高頻度に行うことも考えられます。
その際は、歩行補助具の使用を検討するとか、自宅内であれは手すりを利用するなどの補助的な調整を検討する必要があります。
3.まとめ
今回は、人工膝関節置換術術後の日常生活で注意する点をまとめていきました。
術後のリスクの多さは手術によってまちまちです。
人工膝関節置換術の術後リスクや生活で気を付ける点は今回説明した通りです。
膝関節は可動性の大きな関節であり、日常生活での使用頻度は非常に高いです。
故に術後に生活のしづらさを感じることが多くなると思われます。
しかし時間の経過と共に、その生活のしづらさも改善されてきます。
その間、どのように折り合いをつけて日常生活を送るか、膝に過剰な負担がかからないように生活するかがポイントになります。
今回はそういった部分について記事にしていきました。
それでは本日はこの辺で。
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました!
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