どうも。
管理人のKnee-studyです。
今回は、TKA術後の日常生活について記事にしていきます。
TKA術後は膝の可動域制限を認め、一定期間は思うように膝が動かない・曲がらないなどの問題が生じます。
そんな中、患者さんによっては「床に座りたい」・「家ではコタツに入って過ごすわ」などの訴えが聞かれ、床上動作の訓練を行っていく例も少なくありません。
セラピストによってはリスクを考慮して、床上動作は勧めない方もいると思います。
かと思えば、患者さんのQOLを尊重しどうにか動作の獲得を目指すセラピストもいると思います。
日本の文化は徐々に西洋のスタイルが入ってきていますが、まだまだ和式での生活が根底にあるように思います。
つまり、床上での生活を送る頻度は高いということです。
今回は、このようなTKA術後に起こる悩みについて文献を交えながら考えていきたいと思います。
ちなみに私はTKA術後でも積極的に床上動作訓練は行っています。
それではよろしくお願いいたします。
1.TKA術後の和式生活での苦労と課題
日本は和式文化であり、西洋文化が浸透してきた今でも和式での生活スタイルは根強く存在します。
和式生活を送る上で大きな障害となるのは、膝関節の大きな可動域が必要になるということです。
これは当然、洋式生活と比べると、膝の屈曲角度は大きくなってきます。
和式生活からみたTKA術後の課題
和式生活では主に床上での活動が多くなってきます。
つまり、しゃがみ込んだり、床に座り込んだりなどの動作が多くなり、膝の大きな屈曲角度が必要になるということです。
和式生活を送る上で、膝の屈曲角度はある程度必要になります。
また、「膝を着く」頻度が洋式生活を比べると格段に増えることから、膝を着くことに恐怖心を持っている場合や痛みが残存している場合は、和式生活を送ることが困難になってきます。
TKA術後に困難もしくは大変になる動作
以下の動作がTKA術後に和式生活を送る上で課題となりやすい動作になります。
●しゃがみ込み
●膝立ち
●四つ這い
●正座
●割座
動作一覧は上記の通りです。
これに加え、上記の動作になる過程でも非常に苦労する場面があります。
ただ単純に”膝が良く曲がればいい”わけではなく、「協調的に動けるか」、「膝がこわばっていないか」なども重要なポイントになってきます。
2.TKA術後に”床上動作を勧める”VS”勧めない”で機能にどう影響が出るか?
上記でTKA術後の和式生活(床上動作)の課題や苦労について紹介してきました。
では、実際にそんな状況でもTKA術後に床上動作訓練を勧めるべきなのか否かについて検討していきましょう。
TKA術後の床上動作について検討した文献を一つ紹介します。
この文献では、TKA術後に”床上での生活を勧める群”と”椅子などの洋式での生活を勧める群”の2群に分けて両者に違いが出るかを検討しています。
研究の対象
●TKA術後1年以上経過し、筋量と運動機能検査を行えた167例(男15名・女152名)
●年齢は47~91歳
●術後経過期間(術後12~131か月経過した患者)
評価内容(効果判定の材料)
●JOA Score:日本整形外科学会変形性膝関節症治療成績判定基準
治療者が行う膝OA患者の運動機能の障害程度を評価する尺度のことを指します。
評価シートは以下から参照できます。
●JKOM(Japanese Knee Osteoarthritis Measure):日本版膝関節症機能評価尺度
※日本整形外科学会、日本運動器リハビリテーション学会、日本臨床整形外科医会によって提唱された膝OAに疾患特異的な評価尺度のことを指します。
評価シートは以下から参照できます。
●膝関節屈曲角度
●下肢筋量
●膝伸展筋力
●20㎝の台からの起立が可能な否か
以上の6項目で効果判定を行っています。
結果(”床上での生活を勧める群”と”椅子などの洋式での生活を勧める群”のどちらが良好な結果となっているか?)
●JOA ScoreとJCOMの結果は、”床上での生活を勧める群”の方が有意に良好な結果が得られた
●膝関節の屈曲角度、下肢筋量、膝伸展筋力には有意差はなく、”床上での生活を勧める群”と”椅子などの洋式での生活を勧める群”に差は認めなかった
●20㎝の台からの起立に関しても有意な差は認めなかった
このことから、機能的な部分(ROMや筋量・筋力)には有意な差は認められなかったものの、臨床成績では”床上での生活を勧める群”の方が良好な結果が得られたことになります。
まとめ
●長坐位からの起立・着座動作はやり方次第では、膝の深屈曲や過剰な筋力は必要ない
●TKA術後でも床上での生活をあえて抑制する必要はなく、床からの起立・着座動作を適切に指導することが重要である
この文献の結果から得られた情報は、
「TKA術後の生活を送る上で極端なリスク管理は機能低下を引き起こす可能性があり、必要であれば床上動作の獲得は目指していくべきである」
という点です。
ただし、あくまでTKAへの負担を考慮し、適切な床上動作の方法を指導することが大前提となります。
間違った方法で床上動作を行えば、TKAのインプラントへの負荷増大(最悪の場合破損など・・・)や転倒に繋がる可能性があるため注意が必要になります。
3.まとめ
今回は、TKA術後の床上動作に関して積極的に獲得するべきか否か、について文献を交えながら検討していきました。
当然、患者のバックグラウンド(そもそも床上動作が必要な環境なのか、リスク管理が出来る認知機能はあるのかetc…)をまずは優先して考えるべきではありますが、
出来るなら、床上動作の獲得は勧められるという結果になりました。
近年TKAの手術自体が、「傷ついた関節を入れ替えるだけの手術」から、いかに「正常の膝関節と同じような状態に持っていけるか」という思考にシフトしてきています。
つまり、生活面に関しても同様に「手術する前と同じような生活を送る」ことを意識してリハビリも行っていくことが重要ではないかと思われます。
ということで、必要な方には是非、床上動作の訓練を提供いきましょう!
それでは本日はこの辺で。
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました!
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