どうも。
管理人のKnee-studyです。
今回は、膝関節の痛みについてまとめていきます。
前回は膝の痛みの原因について一覧を提示していきました。
今回は、その中でも紹介した伏在神経由来の痛みについてまとめていきます。
伏在神経由来の痛みは主に膝前内側部に痛みを引き起こします。
その他の特徴としては、膝前内側部の痛みに加え、下腿内側近位部から足関節内果までの知覚異常が挙げられます。
膝OAの膝痛や人工膝関節術後の膝内側痛で比較的多く遭遇する原因になると思われます。
伏在神経由来の痛みを理解していないと、関節の問題や筋の問題などに固執してしまい、なかなか痛みの改善が得られず、結果的にメンタルの影響も考えられるといった思考に陥る可能性があり、注意が必要になります。
といった形で、知っているようでちゃんと理解できていない伏在神経由来の痛みについてまとめていきたいと思います。
1.膝内側の痛みの原因となる伏在神経の解剖について
伏在神経の絞扼性障害は日常よく見られる病態であり、その反面、よく治る疾患であるといわれています。
我々が思っているよりも、伏在神経が影響する膝内側の痛みは身近なところで起こっており、知らない間に改善されている可能性があるということですね。
勝手に治ってくれるなら気にしなくてもいいですが、悪化する例であったり伏在神経由来の痛みが長引くことで二次的な障害が引き起こされる可能性もあります。
そんなことになれば、問題を複雑化してしまうし、何より患者のQOLが著しく低下します。
そうならないように、我々セラピストが事前に伏在神経由来の痛みを理解し、より早期から対処できればもっと膝内側の痛みは減ってくる可能性を秘めているということになりますね。
伏在神経の解剖
伏在神経は大腿神経の終枝であり、大腿動静脈と並走して内転筋管(Hunter管)に入ります。
大腿神経とは大腿中間から遠位1/3辺りで分岐し、膝内側部から下腿内側から内果までの感覚神経を司ります。
伏在神経は膝関節周囲の感覚を司る神経の一つであり、途中で分岐して”膝蓋下枝”と”内側下腿皮枝”に分けられます。
”膝蓋下枝”⇒膝前内側部の感覚を支配
”内側下腿皮枝”⇒下腿内側から内果までの感覚を支配
このようになっています。
図:伏在神経の解剖(走行と支配領域)について
上記のように、伏在神経は膝関節内側から下腿の内側の皮膚神経を支配しています。
伏在神経の走行としては大腿神経から分岐し、大腿内側を走行し、内転筋管を通過して下腿内側を走行するといった解剖学的特徴をもっており、股関節外転、膝関節屈曲にて伸長されます。
このことから、股関節外転位での膝関節屈曲時に疼痛が増強し、内転位にて疼痛が軽減する場合、膝関節屈曲時痛は伏在神経が関与していると考えられるわけです。
伏在神経の主な絞扼部位
伏在神経は走行上、主に2か所の絞扼部位が存在します。
一つ目は内転筋管(ハンター管)になります。
そして二つ目は、縫工筋貫通部になります。
図:伏在神経の絞扼部位
内転筋管(ハンター管)での絞扼
図:内転筋管と広筋内転筋(腱)板の位置関係
内転筋管(Hunter管)は大腿の中1/3辺りに位置し、前内側を内側広筋、後方を長内転筋と大内転筋、内方を縫工筋にて区画されています。
伏在神経の膝蓋下枝は主に膝前内側部の皮膚を支配しているため、内側型の膝OAによる疼痛や鵞足炎による症状と混同されることがあります。
内転筋管(Hunter管)の前方で内側広筋と長内転筋の間には、線維性隔壁である”広筋内転筋板”が存在し、同部を伏在神経が貫通しています。
内側広筋の過剰収縮は広筋内転筋板の緊張を高めることで伏在神経を絞扼していると考えられています。
※広筋内転筋板は、参考書によっては”広筋内転筋腱板”とも呼ばれています。
縫工筋貫通部での絞扼
伏在神経膝蓋下枝には様々な走行(分岐のタイプ)があり、特に縫工筋を貫くタイプでは、縫工筋の過剰収縮によって膝蓋下枝が絞扼されやすいとされています。
【伏在神経膝蓋下枝の縫工筋周囲の走行】
①縫工筋又は同筋腱部を貫通するか
②縫工筋後縁を回り同筋表面を前方に向かうか
③縫工筋下を同筋に覆われて前方に向かうか
上記3つのパターンで走行し、大腿筋膜を貫き膝蓋骨内下部に至り、その部位の皮膚知覚を支配するようになっています。
ただし、伏在神経の走行には変異が多いとの報告があり、膝蓋下枝の起始、膝蓋下枝分岐の高さ、走行、内転筋管の出方、縫工筋との関係など個人により異なることがあるということ理解する必要があります。
以下は文献からの情報です。
Sirangは屍体66肢を調べ、縫工筋後縁を回るもの13肢(19.7%)、縫工筋の筋腹を貫通するもの34肢(51.5%)、縫工筋の下を前方に進むもの19肢(18.8%)の3パターンに分かれたと報告
V Sirang H: Ursprung, Verlauf und A ste des N. saphenus. Anat Anz 130: 158-169, 1972より引用
Arthornthurasookらは屍体37肢で縫工筋後縁を回るもの23肢(62.2%)、縫工筋を貫通するもの8肢(21.6%)、縫工筋の下を前方に進むもの1肢(2.7%)、縫工筋後縁に沿って走った後に前方に進むもの5肢(13.5%)と4パターンに分かれたと報告
Arthornthurasook A, Gaew-im: Study of the Infrapatellar nerve. Am J Sports Med 16: 57-59,1988より引用
文献の結果から、縫工筋を貫通する例と縫工筋後縁を回る例が多く見受けられています。
2.伏在神経の絞扼により生じる主な症状について
ここまでで伏在神経の走行から絞扼部位までのイメージはついてきたと思います。
では、次は伏在神経の絞扼が起こった場合に生じる症状についてです。
前述していますが、伏在神経の絞扼による症状は膝前内側部から下腿内側から内果にかけての症状になります。
膝前内側の痛み
膝前内側部の痛みは伏在神経による症状として挙げられます。
伏在神経の中でも、”膝蓋下枝”の方が影響して生じます。
【責任神経】
・伏在神経膝蓋下枝
【症状】
・膝前内側部に生じる鋭い痛みやピリピリ・ビリビリする症状など
※鈍痛よりも表在性の鋭痛が特徴
・階段の昇りで膝前内側部に痛みが出現する
下腿内側まで波及する異常感覚
伏在神経の症状は下腿内側部まで波及します。
こちらは”内側下腿皮枝”の影響を受けて症状を引き起こします。
【責任神経】
・伏在神経内側下腿皮枝
【症状】
・下腿内側部の重だるさの訴え
3.まとめ
今回は伏在神経の解剖から絞扼症状についてまとめていきました。
伏在神経は膝から下腿にかけての感覚枝であり運動とは関係のない神経になります。
しかし、伏在神経は絞扼部位が存在し、絞扼によって症状を引き起こした場合は、膝前内側の痛みや下腿内側部まで重だるさの症状を認め、不快な症状として悩みの種となります。
次回は伏在神経由来の症状を改善するためのアプローチ方法について触れていきたいと思います。
それでは本日はこの辺で。
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました!
次回をお楽しみください。
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