膝の痛みの原因とは?~膝周囲の組織の影響を考える~

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膝関節について
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どうも。

管理人のKnee-studyです。

 

今回は膝の痛みについてまとめていきます。

 

膝の痛みの原因って思っているより多くありますよね。

医療現場でみる膝の痛みの多くは、変形性膝関節症(膝OA)や半月板損傷、ACL損傷などの靭帯損傷

などが多いです。

スポーツ現場などでは、鵞足炎や腸脛靭帯炎、成長期であればオスグット・シュラッター病なども考えられます。

 

このように、疾患名で捉えていくとなんとなく痛む場所や原因については想像がつくと思います。

では、その膝の痛みの原因となっている組織は何なのか?についてはどうでしょうか?

 

・・・意外と飛んでしまっている方もいるのではないでしょうか?

 

今回は、こういった膝の痛みの原因となる組織を少しだけ掘り下げて考えていきましょう。

 

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1.膝の痛みの原因について

今回紹介する膝の痛みの原因については以下の通りです。

①変形性膝関節症が原因の膝の痛み⇒⇒関節の問題

②膝蓋大腿関節が原因で生じる膝の痛み⇒⇒関節の問題

③膝関節周囲の筋由来の膝痛⇒⇒筋の問題

④伏在神経が原因で生じる膝の痛み⇒⇒神経の問題

⑤鵞足炎が原因で生じる膝の痛み⇒⇒筋の問題や姿勢からくる問題

⑥膝蓋下脂肪体が原因で生じる膝の痛み⇒⇒膝の組織の問題

⑦半月板が原因で生じる膝の痛み⇒⇒膝の組織の問題

このように、膝の痛みを引き起こす原因は多岐に渡ります。

臨床以外の通常の生活場面でも聞くような膝の痛みの原因から、少し専門的な痛みの原因まで簡単に説明していきます。

 

①変形性膝関節症が原因の膝の痛み

変形性膝関節症(膝OA)は、関節軟骨の変性、摩耗が生じそれに続発する関節辺縁、軟骨下骨の反応性増殖を伴う慢性退行性疾患です。

 

慢性的で退行性の疾患であることから、徐々に長い時間をかけて膝が変形し痛みを引き起こす問題であることがわかります。

 

この膝OAでは、軟骨や半月板の損傷などが基盤となり、滑膜炎を併発し疼痛を生じます。

 

単に変形が強度の場合でもそれに比例して膝の痛みが強くなることはなく、変形は軽度でも強い痛みを訴えるケースは非常に多いです。

膝の変形による関節の衝突が直接変形性膝関節症の痛みの原因ではないことを理解しておきましょう。

 

 

②膝蓋大腿関節が原因で生じる膝の痛み

膝蓋大腿関節由来の疼痛は、軟骨編成や滑膜ヒダが原因となる場合もありますが、高齢者における障害では、必ずしも明確な所見がない場合もあり、”anterior knee pain(AKP:膝前面の痛み)”とも称されています。

 

AKPは若年層の女性に多いとされているが、しばしば高齢者でも認められ、特に階段昇降時に多く、膝蓋骨と脛骨との接触圧の上昇が関係しているといわれています。

また、外側膝蓋支帯の拘縮が階段昇降の後段時の痛みと関連しているとの報告もあり、このAKPと繋がってくる部分があります。

 

【AKPの原因になり得る因子】

●膝関節周囲の組織は、筋膜、内外側膝蓋支帯、膝蓋骨周囲の靱帯と層構造になっている→膝OAに伴炎症が波及→癒着の形成→疼痛発生

上記の組織の柔軟性低下接触圧が上昇→膝前面痛の出現

●内側広筋と外側広筋の不均衡な収縮や柔軟性低下→膝前面へのストレス↑→膝前面の疼痛の出現

●大内転筋や腸脛靭帯に移行する大腿筋膜張筋、中殿筋のタイトネス→膝蓋骨のストレス↑→膝前面の疼痛の出現

 

 

③膝関節周囲の筋由来の膝痛

高齢者で膝の痛みを訴える場合、歩行様式は膝関節屈曲位のままで、double knee actionの破綻を認めます。

そのため膝関節完全伸展にて収縮能が高まる内側広筋の機能低下を生じ、結果的に膝関節不安定性が想起されるため、非常に単純ですが、膝関節周囲組織への過負荷が加わります。

 

この影響がさらに膝伸筋群の過剰収縮を招き、疼痛出現の負のスパイラルへと陥ってしまいます。

膝が伸びにくくなる高齢者は特に、

膝関節の伸展可動性と伸展域での筋出力の確保が重要になってきます。

 

また、膝関節屈曲拘縮により、後方の筋組織の柔軟性が低下することで、膝後方部痛が出現することもあります。

 

TKA術後もこの膝後方線維の伸長性低下が影響する痛みに悩まされることも多々あります。

変形性膝関節症の場合でも膝の伸展制限を作らないことが大事になってきますね。

 

 

④伏在神経が原因で生じる膝の痛み

伏在神経は、大腿神経から分岐する知覚枝であり、大腿動静脈と並走してHunter管(内転筋管)に入り、さらに遠位では、膝蓋下枝内側下腿皮枝にそれぞれ分枝して膝前内側および下腿内側の皮膚知覚を支配します。

Hunter管は、前内側を内側広筋、後方を長内転筋大内転筋、内方を縫工筋によって構成されています。

さらに、Hunter管の前方には、内側広筋と大内転筋の腱部の一部が合流し腱膜となる広筋内転筋板が存在し、同部を伏在神経が貫通するため、絞扼性神経障害を呈しやすいとされています。

図:伏在神経の絞扼部位について

 

治療としては、内側広筋や大内転筋の柔軟性改善による広筋内転筋板の緊張軽減と、これらの筋の過剰収縮を抑制するためのアライメント調整を検討する必要があります。

 

また、縫工筋自体のストレッチングや大腿遠位部を中心とした縫工筋周囲の柔軟性改善が有効です。

 

さらに、股関節の内外転と膝関節の屈曲伸展を組み合わせた伏在神経の滑走を促していくことも効果的な治療アプローチになります。

 

 

⑤鵞足炎が原因で生じる膝の痛み

鵞足炎は、薄筋・縫工筋・半腱様筋の3つの筋の付着部に、牽引ストレスが加わることで生じる腱付着部障害(enthesopathy)とされています。

さらに、内側側副靱帯と鵞足構成筋との間には滑液包(鵞足包)が存在するため、同部での摩擦による炎症が生じ、疼痛が出現することもあります。

 

鵞足付着部では、縫工筋腱は平坦な腱膜となって扇状に広がっており、その深層に薄筋腱、半腱様筋腱が位置しています。

さらに縫工筋腱と腓腹筋に付着する下腿筋膜が連結しているため、腓腹筋の過緊張は鵞足付着部の緊張を高める事にも留意する必要があります。

あえて腓腹筋の収縮を促して鵞足部の疼痛が再現されるかを一つの評価基準にするのもアリですね。

話は少し変わりますが、

鵞足炎と膝OAの関係性は思っていたよりも密接であり、膝OA患者の半数以上は鵞足炎を併発していたという報告もあります。

 

膝OAの痛みに対しても鵞足炎は一つの因子として理解しておく必要がありますね。

 

 

⑥膝蓋下脂肪体が原因で生じる膝の痛み

膝蓋下脂肪体は膝蓋靱帯の深層に位置し、後方は横靱帯で上方は膝蓋骨、下方は前十字靭帯と繋がっています。

図:膝蓋下脂肪体の解剖について

プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第3版より引用

 

膝OAでは、関節内の炎症が膝蓋下脂肪体へ波及することで線維化が生じやすく、膝関節の動きに伴う緩衝作用が低下することで圧が高まり疼痛が生じるようになります。

 

階段昇降やしゃがみ込みで疼痛が出現することが多く、屈曲拘縮が存在する場合、歩行時にも疼痛が出現する可能性があります。

 

この場合、大腿四頭筋の収縮による膝蓋骨の上方への牽引と、それに伴う膝蓋靱帯および膝蓋支帯の緊張により、線維化した膝蓋下脂肪体が十分に変形できないことが影響しているといわれています。

大腿四頭筋の収縮により膝蓋下脂肪体のスペースが縦に長く伸びるようになりますが、その際に膝蓋下脂肪体の線維化が起こり、上手く適合できなくなっていると、膝前面の痛みとして表出されることになるわけですね。

 

この場合は、膝蓋下脂肪体への直接的な徒手介入(柔軟性改善)が有効であることが多いです。

膝蓋靱帯の両端から指を深く沈みこませ、膝蓋下脂肪体に対しコンタクトしていきます。

 

膝蓋靱帯や膝蓋支帯などの膝周囲の靱帯についてはこちらの記事にまとめているため、「?」と感じる場合はこちらをご覧ください。

膝関節の安定に関わる靱帯の一覧とそれぞれの機能について
膝関節には比較的多くの靱帯が存在し、膝関節を支えていることがわかります。そもそも膝関節とは大腿骨と脛骨で構成された関節であり、関節の接する面積が他の関節と比較して少ないのが特徴です。そのため膝関節は安定のために、広範囲かつ多くの靱帯に頼らなくてはならない状況にあります。こういった背景を考慮すると、膝関節周囲の靱帯は膝にとって非常に重要な役割を果たしていることがわかります。

 

 

⑦半月板が原因で生じる膝の痛み

半月板は、荷重伝達や衝撃吸収と安定性に寄与している線維軟骨組織です。

膝関節の屈曲、伸展、回旋の動きに対して、受動的、能動的に可動することにより、脛骨大腿関節における適合性を維持しています。

半月板損傷は年齢の増加と共に比例することが報告されているが、必ずしも疼痛など何らかの症状を呈するとは限りません。

 

半月板の移動量を研究した文献を一部紹介します。

この研究では、膝関節屈曲に伴う内側半月板および外側半月板の関節運動に伴う移動量を調査しています。

結果は以下の通りです。

●内側半月板は前節が6.0㎜、後節が4.6㎜

●外側半月板は前節が7.0㎜、後節が7.0㎜

このように、それぞれ後方へ移動したと報告しています。

 

この半月板の移動は関節運動を円滑に行うためには非常に重要な反応になり、あるべき運動が生じない場合、インピンジメントなどの症状を引き起こす可能性が出てきます。

 

この半月板の移動を考える上で、半月板に付着するいくつもの組織の存在を理解する必要があります。

【前方移動】

内側・外側半月膝蓋靱帯、横靱帯、内側側副靱帯、半月大腿靱帯の緊張によって半月板の移動が引き起こされる

【後方移動】

内側半月板に付着する半膜様筋、外側半月板に付着する膝窩筋の収縮によって半月板の移動が引き起こされる

これらの組織に対してアプローチを行うことで膝の痛みの軽減が得られる可能性も視野に入れておく必要があります。

 

2.まとめ

今回は、膝の痛みの原因についてまとめていきました。

痛みの原因となる組織についてはイメージが先行してしまい、知識が曖昧になることもしばしばかと思います・・・

 

こうやってみると、膝の痛みについて見落としている所見も多々あることに気づかされます。

痛みを短絡的に捉えることなく、原因の追究が出来るようになるとより臨床が面白くなってきますね。

 

それでは本日はこの辺で。

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました!

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