どうも。
管理人のKnee-studyです。
今回は膝関節の構成体の一つである「半月板」についてまとめていきます。
半月板は膝の関節の間で内外側にそれぞれ存在し、ショックアブソーバーをして機能します。
そんな半月板ですが、多くの組織と同様に退行変性を起こします。
つまり加齢と共に半月板に関連する疾患は増加するということです。
また、変形性膝関節症との関連も指摘されており、半月板の損傷が変形性膝関節症の進行を早める可能性があるということです。
今回はそういった膝関節にとって重要な役割を果たす「半月板」についてまとめていきます。
1.半月板損傷の疾患概念
半月板は膝関節内に存在する線維軟骨組織です。
以下に半月板損傷の特徴を記します。
図:半月板損傷のイメージ
●半月板は、膝関節の運動に伴って形態を変化しながら脛骨関節面上を移動するため、損傷すると膝の屈伸や回旋動作時の痛み、膝崩れ感、引っかかり感やロッキング、関節可動域制限などの自覚症状を呈する
●他覚症状として、関節裂隙の圧痛、関節水腫、McMurraytest陽性などが認められる
●半月板の血行は関節包側の外側縁1/4~1/3に分布し、内側縁には分布しないため、内側縁の損傷は治癒しにくい
図:半月板の血管分布について
●半月板損傷は靭帯損傷に合併する二次的な損傷と単独損傷とに分けられる
●単独損傷は、膝に大きな力が加わることで生じるもの、繰り返す微小外傷によるもの、円板状半月のように形態の特徴を原因とするもの、加齢による変性によるものに分類できる
半月板の痛覚分布
このため、半月板外側縁の損傷では疼痛を生じることがあっても、内側縁の損傷自体は疼痛を生じないということがわかります。
内側縁の損傷でみられる疼痛は、半月板の損傷に伴う炎症や物理的圧迫・牽引により関節包に分布する侵害受容器を刺激し、Aδ線維が興奮することや、関節液の貯留により関節内圧が上昇し、自由神経終末のC線維を刺激することにより生じると考えられています。
2.高齢者の半月板損傷の特徴
高齢者の半月板損傷は、半月板の変性を背景として発症する単独損傷が多く、加齢と共に有病率が増加する傾向にあります。
変性半月板は、病理学的にコラーゲン線維の断裂や配列の乱れ、プロテオグリカンの減少などが見られ、X線ではわずかな関節裂隙の狭小化、MRIでは半月板実質内の高信号域や位置異常、関節鏡像では半月板実質線維の多断裂などの所見が認められます。
半月板の変性の要因は、必ずしも外傷を伴わず、加齢に伴う微外傷の蓄積、生活習慣病に伴う代謝変化、下肢アライメント変化など複合的なものと考えられています。
外側半月板に比べて内側半月板の損傷が多く、「水平断裂」や、「内側半月板後角」の損傷が多い。
半月板の変性損傷における危険因子として、60歳以上、BMI高値、性別(男性に多い)、跪く仕事、しゃがみ込み動作、1日30段以上の階段昇降などが報告されている。
高齢者の半月板損傷には、変形性膝関節症が併存することが多い。
半月板損傷の有病率は関節裂隙の狭小化の進行と関連し、変性損傷の程度は、関節軟骨の変性と相関するとされている。
早期膝OAにおいては、軟骨欠損や軟骨下骨の骨髄病変、滑膜炎および関節液貯留に加えて、半月板損傷や逸脱が見られる。
半月板の逸脱は、膝OAの発症や進行にも相関するとされている。
3.高齢者に多い半月板損傷の形態
前述しましたが、高齢者の半月板損傷では「水平断裂」や、「内側半月板後角」の損傷が多いとされています。
以下に病態を説明していきます。
内側半月板水平断裂
●内側半月板水平断裂は半月板の上下に分割されるうように裂ける損傷
●多くは変性の結果として生じる
●MRIでは半月板内に水平方向の線状の信号強度異常域を認める
●患者はしゃがみ込み・正座・あぐらなどの膝深屈曲位での痛みを訴える
損傷の大きい水平断裂では膝屈曲時に断裂部が大きく開大するため、関節包に過度の牽引力を生じて疼痛の誘因になる可能性があります。
内側半月板後根損傷
●内側半月板後根損傷は中高年の女性に多く、膝後内側部や膝窩部の激痛と歩行障害が動作に伴い急に起こる
●段差を踏み外す・階段を下りる・小走りをするなどの比較的軽負荷の動作で発症し、そのエピソードは患者が明瞭に記憶していることが多い
●理学所見に膝深屈曲時の膝窩部痛・関節裂隙の圧痛、McMurray test陽性などが見られ、時にロッキング・膝崩れ症状・腫脹を認める
●MRIの冠状断像では半月板の途絶像、矢状面像では半月板後角部がT2協調像にて高輝度に描出されるwhite meniscus signが認められる。
力学的には半月板切除と同様に軟骨への荷重負荷を増大させ、膝OAを惹起させ、また、大腿骨内側顆部に特発性骨壊死を続発することも報告されています。
4.高齢者の半月板損傷による疼痛
半月板の痛みについては先述しましたが、高齢者の場合、様々な要因が混在し痛みを引き起こします。
以下の文献では高齢者で半月板由来の痛みの研究を行っています。
【Englundらの報告】
平均62.3歳(50~90歳)の991名のうち、X線像でK‐L分類のGrade2以上の対象において、膝痛やstiffnessなどの症状を有する対象の63%、症状のない対象の60%にMRI上で半月板損傷を認めた一方、X線像で膝OAのない対象のうち、膝関節症状を有する対象の32%、症状のない対象の23%にMRI上で半月板損傷を認めたと報告している
膝の痛みに関わらず、半月板損傷が起こっていることがこの研究で明らかになっています。
つまり、半月板の変性損傷は運動時痛、関節裂隙痛、水腫などの症状を引き起こす一方で、無症状のこともあるということがわかります。
そして、高齢者で変性半月板損傷の場合、膝OAに起因する疼痛や、膝周囲筋や軟部組織の疼痛も併発していることが多く、特に膝OAの場合、滑膜炎や関節軟骨の障害、骨髄病変など、さまざまな因子が混在する複合的な疼痛を呈するため、半月板損傷単体で痛みを考えるのは適正ではないことがわかります。
このように、半月板の変性損傷を有する高齢者の膝痛の原因は、半月板・関節軟骨・軟部組織など、多様で複雑なことがあり、様々な角度から評価する必要があるということになります。
5.まとめ
今回は、高齢者の膝関節痛の一つの原因となる半月板損傷についてまとめていきました。
当院でも半月板の切除術や縫合術を頻繁に行っていますが、痛みがすっかりとれる方と、そうでない方で分かれる傾向にあります。
多くは痛みが軽減し、早期からADLが自立されますが、痛みが残存するケースでは結局、人工膝関節を置換することもあります。
こういった術後の痛みに対し我々セラピストがどのように介入するかで痛みの程度も変わってくると思われれます。
痛みの原因を特定し、徒手介入もしくは運動療法での改善が期待できるかを模索できるようになりたいですね。
それでは本日はこの辺で。
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました!
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