どうも。
管理人のKnee-studyです。
変形性膝関節症(膝OA)のリハビリとして、大腿四頭筋のトレーニングは多くの文献またはガイドラインでも推奨されています。
また内反変形した膝OAに対しては股関節の外転筋力の強化も良く見かけると思います。
では、本当に大腿四頭筋や外転筋だけでいいのでしょうか?
今回に限っては股関節周囲筋の話になりますので、他の股関節筋は何も影響がないのでしょうか?
今回はそういった視点で、変形性膝関節症患者の股関節周囲筋力の関連性について考えていきます。
1.膝OAのガイドラインでの筋力トレーニングの重要性について
膝OAのガイドラインでは、筋力トレーニングは推奨グレードAのエビデンスレベル1と強く推奨されています。
以下は膝OAのガイドライン”筋力トレーニング”の項を一部抜粋した内容になります。
・ 膝OA患者に対し、等速性筋力増強運動、静的ストレッチ+等速性運動、固有受容器神経筋促通(PNF)ストレッチ+等速性運動を行い対称群(運動なし)と比較した。
その結果、全ての群で疼痛、活動(Lequesne’s index)、そしてピークトルクが向上した。
静的およびPNFストレッチ施行群は、膝関節ROMと角速度60度/秒のピークトルクが向上し、さらに PNFストレッチ施行群では角速度180度/秒のピークトルクも向上した。
・膝OA患者に対する12週間の大腿四頭筋筋力増強運動を行った。
その結果、筋力増強は膝関節内反モーメントを変化させず、膝関節のX線上の内反マルアライメントの大小にも関連は無かった。
疼痛軽減に関しては内反マルアライメントの小さい群で有意に効果を認めた(p < 0.001)。
・非荷重下の筋力増強は、荷重下筋力増強と同様に運動機能、歩行速度、筋トルクを向上させるとする中等度のエビデンスがある。
・膝OA患者に対する下肢筋力増強運動の効果に関する複数の論文(9 編)のデータを統合して、メタアナリシスを行った。
その結果、疼痛と身体機能に効果が認められた(それぞれSMD: 0.53、95%CI:0.27~0.79および SMD:0.58、95%CI:0.27~0.88)。
大腿四頭筋に限定した筋力増強(3 編)においても、疼痛と身体機能に僅かながら有意差が認められた(それぞれ SMD:0.29、95%CI:0.06~0.51およびSMD:0.24、95%CI:0.06~0.42)
・大腿四頭筋や下肢筋力増強運動は、安静時・動作時の疼痛を軽減させ、関節可動域、筋力、移動能力やQOLを向上させる。
・筋力増強運動に加え、transcutaneous electrical nerve stimulation(TENS)などを併用することは、効果をより高めるとする中等度のエビデンスがある。
・膝OA患者に対し、8週間の低強度(10% of 1 repetition maximum(RM)×10 回×10 セット)および高強度(60% of 1 RM×8 回×3 セット)レッグプレスマシン運動を行い、疼痛、機能、歩行速度、膝屈伸筋力への効果を比較した。
その結果、どちらの介入方法でも有効性が認められ、両群間に差はなかった。
・膝OA患者に対し、筋力増強運動のみ行なった群と、筋力増強運動および超音波療法(間歇照射、連続照射)を行った群とで効果を比較した。
全ての群で筋ピークトルクが向上し、疼痛や活動制限が減少した。
ROMと歩行速度は、超音波施行群で向上し、運動の継続が困難となったものは超音波の間歇照射群で少なかった。
・運動感覚とバランス運動(逆歩行、踵歩行、横歩き、側方重心移動、バランスボード運動、ミニトランポリン運動など)および筋力強化群と、筋力増強運動のみ行なった群とで比較した。
両群ともWOMAC、SF-36、ADL、大腿四頭筋筋力、固有受容感覚レベルが改善した。
さらに筋力強化のみを施行した群よりも、運動感覚とバランス運動を追加した群で、全ての指標でより改善が認められた。
・膝OA患者を対象として、様々な種類の筋力増強運動(等尺性、等張性、等速性、求心性、遠心性と求心性、ダイナミック)の効果についてメタ解析を行なった。
21編の論文からデータを統合した結果、全ての運動で筋力、疼痛、機能、QOLの改善が示された。
運動方法の違い(等尺性、等張性あるいは等速性)により、下肢筋力、機能、疼痛への効果に影響を与えなかった。
・膝OA患者に対し、functional electorical stimulation(FES)を施行する群、運動群、FES+運動群で比較したところ、全ての群でVAS、WOMAC、6分間歩行が向上した。
・大腿四頭筋筋力は運動群で向上し、FES を併用することで有意な相乗効果が認められた。
・8週間の自宅運動と非ステロイド系抗炎症剤 oxaprozin(1,200 mg/day)投与した群oxaprozin投与のみの群とで、治療効果を比較した。
どちらの群も疼痛、歩行時間、ステップテスト時間、ROM、活動レベルが向上した。
いずれも運動とoxaprozin併用でより効果が大きかった。
特定の筋力トレーニングを効果を示唆する内容は少ないですが、下肢の筋力トレーニングは膝OAに対して有効な訓練になるようですね。
では、今回のテーマである”股関節周囲筋のトレーニング”については実際の所どうなのでしょうか?
2.膝OAに対する股関節筋力のトレーニングの必要性について
股関節周囲筋の問題が膝OAに影響するかどうかについてですが、実際に研究され、結果が出ています。
今回紹介する文献では、膝OAと股関節周囲筋の関連性が認められており、2017年に掲載されたジャーナルの中でも、「股関節周囲筋の機能低下が膝OAと関連するためトレーニングの重要性は高い」と紹介されています。
※南角 学 松田 秀一 人工膝関節置換術後における機能障害に対するリハビリテーション Jpn J Rehabil Med 2017;54:201-204より引用
以下に、股関節周囲筋の重要性を説いた文献を紹介します。
内反型の膝OA患者の股関節の筋力について、無症候性のコントロール群と比較した研究となります。
方法ですが、対象者は”膝OA患者89人”・”健常者(50歳以上)23人”となっています。
評価対象として、股関節外転筋・内転筋・屈筋・伸筋および内外旋筋が挙げられています。
結果ですが、変形性膝関節症の人では、評価したすべての股関節筋群で有意な筋力低下を認めていました。
コントロールと比較して、膝OA患者の股関節筋力は有意に低下を認めるという結果となりました。
※参考までに、文献から引用しています。
・股関節屈筋 26%
・股関節伸筋 16%
・股関節内旋筋 20%
・股関節外旋筋 27%
・股関節外転筋 24%
・股関節内転筋 26%
※健常者と比べての差を「%」で表示
パッと文献などを見るだけでは、股関節の外転筋に意識がいきやすく、そこだけが極端に筋力が落ちるものと思ってました・・・
上記の数値を見ると、膝OA患者は、股関節周囲筋すべてに健常者より筋力低下をきたしていることがわかりますね。
突出して特定の筋が弱化するわけではないようですが、思っているよりも他関節への影響が大きいことがわかります。
結論として、変形性膝関節症の人は、無症候性のコントロールと比較して、股関節周囲の筋力の著しい弱さを示す結果となりました。
股関節の筋力低下が膝OAの発症を助長するのか?、それとも膝OAが股関節の筋力低下を引き起こしているのか?については明らかになっていませんが、この研究の結果から、膝OAに対するリハビリテーションプログラムに股関節強化運動を含めることを支持すべきであることがわかりました。
今後は、股関節も広く評価し、トレーニングしていく必要がありますね。
3.まとめ
今回は、変形性膝関節症(膝OA)に対する”股関節周囲筋のトレーニング”の可否について考えていきました。
参考書などをさらっと見ていく限り、股関節への意識も必要ではありますが、どうしても膝周囲筋への介入が先行してしまうのが現状でしたが、こうやって実際に数値として結果を見ていくと、やはり股関節への意識は非常に重要なのだということがわかりました。
なかなか改善しない膝の痛みや歩行状態などなど・・・もしかしたら股関節の影響があるかも?と視野を広げれるように意識していきたいですね。
また、TKA術後のリハビリでも同様の事が言えると思います。
TKAでアライメントに変化が起こっても周囲の軟部組織は変わっていません。つまり動作パターンや姿勢パターンは術前のままである可能性が高いわけです。
その場合、術前に股関節の筋力低下をきたしていた場合、そのまま術後引き継いでいる可能性が高いわけですから、当然、TKA術後も股関節への意識は重要になるということですね!!
ということで、本日はこの辺で!
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました。
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