膝の安定化を目的としたトレーニングにSLR運動は不要である理由

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変形性膝関節症(膝OA)の理学療法
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どうも。

管理人のKnee-studyです。

 

今回は前回の続きで変形性膝関節症に対する筋力トレーニング関連の内容になります。

変形性膝関節症やTKA術後のリハビリでは膝周囲の筋力トレーニングは必ず行っていきます。

前回記事はこちらです。

変形性膝関節症に対して大腿四頭筋の筋力トレーニングはなぜ有効なのか?
今回は、変形性膝関節症の理学療法について記事にしていきます。 変形性膝関節症に対して、多くの場合大腿四頭筋の筋力トレーニングを行っているのは実情であると思います。 今回はその変形性膝関節症に対して行う大腿四頭筋の筋力トレーニングはなぜ有効なのか?について考えていきたいと思います。

 

 

その中で、膝の伸展筋力トレーニングとして、SLRトレーニングを行っている場面をよく見かけます。

それ以外に、パテラセッティングも良く見かけるトレーニングかと思います。

 

これらは、「内側広筋に注目して大腿四頭筋の筋活動増加」を目的として行っていることが大半かと思います。

内側広筋は、以前から膝関節最終伸展域にて有意に活動すると考えられていましたが、現在は否定的な報告が多くなっています

 

確かに、大腿四頭筋の筋力は膝の機能に対して非常に重要な役割を持っており、トレーニングの必要性は非常に高いです。

しかし、変形性膝関節症やTKA術後の伸展制限の改善のために大腿四頭筋の特に内側広筋を意識したトレーニングを積極的に行う必要性は低くなっているということです。

 

今回はそういった否定的な側面をまとめた内容を記事にしていきたいと思います。

 

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1.SLRトレーニングでは膝の伸展制限を改善出来ない

SLRトレーニングは膝の伸展筋(大腿四頭筋)のトレーニング方法で有名です。

日本ではこのSLRトレーニングが広く普及していますが、欧米ではSLRトレーニングのみを行っている文献はほとんどないのが現状です。

このように、SLRトレーニングは徐々に膝伸展筋のトレーニング方法として影を潜めてきているといえます。

 

SLRトレーニング時の筋電図学的分析の結果

SLRトレーニング時の膝伸筋の筋活動を筋電図を用いて研究した結果を見てみると、

SLRトレーニングでは、内側広筋よりも大腿直筋の筋活動が高くなることがわかっています。

 

また、単純なSLRトレーニングのみでは、大腿直筋と内側広筋の筋活動量に大きな差は認めませんが、SLRトレーニングの負荷量を上げれば上げるほど、大腿直筋の筋活動が増加し、内側広筋の筋活動は無抵抗時とほぼ変わらないか逆に低下する結果となっています。

 

よって、大腿直筋以外の膝伸筋を鍛えたい場合にSLRの負荷を増やしても効果がないことが予想されます。

 

ここでは「膝関節最終伸展域で働く内側広筋」のトレーニング効果がSLRトレーニングでは思うように得られないということを言いたいわけですね。

 

 

膝の伸展制限の原因は筋力的な問題ではない可能性が強い

関節浸出液が、膝伸展筋に抑制をかけることは数多く報告されています。

つまり簡単にいうと、膝が腫れて水が溜まっている状態では、必然的に膝の伸展筋に抑制がかかり、膝の完全伸展を抑制してしまうということになります。

 

これらの研究の対象は、正常膝や変形のない膝関節、半月板切除術後の膝を対象としたものであり、TKA術後の伸展不全については明確な研究結果は出ていないので、すべてが「関節浸出液」の問題で解決できるわけではないことをご理解ください。

 

 

話を戻します。

このように関節浸出液の存在が膝の伸展不全に関与しているわけですが、膝の伸展位で関節内圧が増加するため、関節浸出液が膝に溜まると、膝伸展位で大腿四頭筋に大きな抑制をかけることになります。

 

このことから、膝関節に腫脹がある場合には、膝伸展位で行うSLRトレーニングは逆に大腿四頭筋に抑制をかけてしまう可能性があることがわかります。

 

つまり、大腿四頭筋を鍛えようとして頑張ってSLRトレーニングを行っているのに、かえって抑制を強めてしまい仕舞には筋力・筋出力の低下を助長してしまう可能性があるということになります。

TKA術後などは膝の腫脹を認めるため、膝伸展筋の抑制がかかっていることが予想されます。

そのため、まずは腫脹などの急性期症状の改善を主眼に置くことが大事になるわけです。

 

 

 

そもそもSLRトレーニングは股関節への影響が大きいのでは?

この話をすると元も子もない気がしますが、

SLRトレーニングは、膝関節の伸筋の筋力トレーニングというよりも股関節屈筋のトレーニングの要素が強いことが言われています。

 

上述しましたが、SLRトレーニングでは膝関節最終伸展域で働く内側広筋よりも、股関節の屈曲作用も持った大腿直筋の筋活動が大きくなることが筋電図学的所見ではっきりと結果が出ています。

 

このことは、SLRトレーニングが膝のトレーニングよりも股関節のトレーニングになっているという一つの根拠になると思われます。

 

 

 

 

2.臨床で経験するSLRトレーニングの落とし穴

ここまでで、SLRトレーニングが膝の筋力トレーニングに不向きではないのか?という疑念が生まれたと思います。

 

当然、大腿四頭筋自体のトレーニング効果は得られるので、単関節筋や二関節筋など意識せずに鍛えたい場合は、SLRトレーニングも一つの種目になるので、SLRトレーニングを積極的に行うのも一つかと思います。

 

それを踏まえた上で、ここでは臨床で経験するSLRトレーニングをためらうポイントについて紹介します。

 

①膝の伸展運動を促したいけど、結局途中で膝が屈曲したまま、股関節の屈曲でSLRをおこなってしまっている

これは結構多くあるケースかと思います。

膝関節伸展位でSLR運動を行うことが狙いなのに、股関節の屈曲で代償して肝心の膝は屈曲位となってしまっており、膝伸展筋のトレーニングにならない

このように、膝が完全伸展した状態でSLRが理想であるのに、膝屈曲位のままSLRを行っている例が多いように思います。

結局何のトレーニングを行っているのか?明確になっていないように感じます。

 

 

 

②股関節屈曲+膝関節伸展の複合運動になるため、必然的に二関節筋の影響が強くなる

これに関しては単関節筋と二関節筋の関連性を意識していなければスルーする内容ですが、各関節の安定化を考える上では重要な要素かと思います。

 

SLRトレーニングは単関節の運動ではないため、どうしても二関節筋の影響が大きくなり、関節の安定化に寄与する単関節筋の強化は得られにくくなる

上述した筋電図学的所見でも同様の結果が出ています。

SLRトレーニングは内側広筋(単関節筋)よりも大腿直筋(二関節筋)の筋活動量が多くなり、負荷を上げても大腿直筋の筋活動だけが上昇するため、「膝関節の安定化」という観点から考えるとSLRトレーニングは否定的な運動になります。

 

③トレーニングを続けると、股関節の付け根が疲れてくることが多い

これは、結構多くの患者さんから聞く訴えになります。

膝関節の伸展に加えて股関節屈筋の作用も持つ大腿直筋の過活動があると、膝周囲よりも股関節周囲の筋疲労を起こしやすくなる

 

代行で介入した場合や他院でリハビリをしていた患者さんが自主トレやリハビリでSLRトレーニングを行っている場合です。

この場合、一度SLRトレーニングを実際に行ってもらうようにしています。

実際の回数をこなしてもらい、どこに意識がいっているかを聞くと多くの方が鼠径部(足の付け根)

と答えます。

 

膝を鍛えるためにやっているトレーニングなのに、股関節が疲れるってどうなんでしょう?と思ってしまう事も・・・

 

確かに、SLRの角度や頻度、そしてしっかりトレーニング指導を行えば、場合によっては上記のような症状は無くなるものと思われますが、臨床で経験する例の多さを考えたら、他のトレーニングを指導したほうが効率的であるように思います。

 

3.まとめ

今回は、SLRトレーニングのデメリットについて主にまとめていきました。

マイナス面の話ばかりを述べましたが、あくまで、「膝の安定化を図るため」を考慮した場合の話になります。

 

SLRトレーニング自体は必要な場面はありますし、SLRトレーニングがダメなわけではありません。

必要な機能に見合うトレーニングが大事ってことです。

SLRトレーニングは、一昔前までは膝の伸展筋のトレーニングの効果的であり、完全伸展を促すために必要なトレーニングとして指導されてきました。

しかし、近年ではそれが覆され膝完全伸展の制限因子の最もな原因が変わってきています。

 

これには私自身も驚きましたし、医療は日進月歩であることを改めて感じさせられました。

リハビリの内容も人によって千差万別であり、考え方も様々ですが、知識の更新は誰にでも必要であるということを実感するいい機会になりました。

 

それでは本日はこの辺で。

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました!

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