どうも。
管理人のKnee-studyです。
今回は、人工膝関節置換術後の入院期間について触れていきます。
どの疾患もそうですが、診療報酬改定の度に、入院システムとは大きく変わってきているように思います。
今現在、厚生労働省は医療費の適正化対策の一つとして平均在院日数の短縮などを挙げています。
故に、人工膝関節置換術(TKA)に限らず入院期間は短縮傾向にあることがわかります。
※急性期・回復期・維持期それぞれで違いますが、今回は急性期のことを述べています
特に、人工膝関節置換術(TKA)および人工股関節置換術(THA)に関しては、術後成績が良いため早期の退院を勧めている病院が多くなっているように思います。
今回は、そういった背景を考えつつ人工膝関節置換術後の入院期間について考えていきたいと思います。
1.人工膝関節置換術後の入院期間の目安
人工膝関節置換術は、変形性膝関節症による痛みや運動機能の低下の改善を目的に施行され、その件数は年々増加傾向にあります。
高齢化社会が進む昨今では、今後もこの人工膝関節置換術の件数は増加することが予想されています。
この人工膝関節置換術の入院期間は平均的にどの程度なのでしょうか?
諸外国と比べて我が国の人工膝関節置換術の入院期間は非常に長い
我が国の人工膝関節置換術術後の入院期間は平均35日ほどとされています。
対して、諸外国の入院期間は文献でみる限りは1週間以内と非常に短くなっています。
諸外国では、術後翌日の退院などが平均的になっています。
どうやって生活しているんでしょうか・・・
諸外国の経過を見る限り、日本の入院期間は非常に長いことがわかります。
これは日本の医療体制の仕組みなどの影響もあると思われるため、短ければ短いほど良いわけではないと思いますが、まだ入院期間を短縮できる余地があることを示唆しています。
施設にごとに独自のクリティカルパスやプロトコールを作成しており入院期間が明確に定められてはいない
人工膝関節置換術は多くの施設で施工されており、それぞれ独自でクリティカルパスやプロトコールを作成し、それを運用して入院から退院までをどの患者さんでも大きくズレないように調整しています。
故に、施設の状況によって運用内容に違いがあるため、明確な入院期間というのは定められていないのが現状です。
術後3~5週程度で退院する施設が多い
こういった現状の中、多くの施設は術後3~5週で退院を迎えるように調整しているように思います。
大体術後1~2週目までは急性期症状を強く認めるため、管理が必要になってきます。
そして、術後3週目からは比較的スムーズに動けるようになってきて自宅での生活が可能になってくる時期に差し掛かります。
この時期で多くの施設は退院を勧めているわけです。
早い施設では術後1週間以内に退院することもある
施設によっては、術後1週間以内に退院するところもあります。
こういった施設の場合は、ある程度手術対象者を限定して行っているためにこのような運用が可能になっています。
例えば、以下のように手術対象者を限定して運用しています。
●比較的若年層で、内科系の疾患などを既往にもっていない患者さんなどを対象としている
●片側のTKAであり初回の手術であること(両側TKAや再置換術は×)
やはり、内科系の疾患やその他の既往歴を持っている場合は、入院期間が長引く因子となりやすいですね。
また、片側TKAに比べ両側TKAになると、床上動作や階段昇降などで健側(良い方の足)を作ることが出来ないため動作の獲得に時間を要す可能性が出てくるため入院期間が短い施設では両側TKAはあまり勧められません。
※文献では、片側TKAと両側TKAの機能改善の差はなかったと報告がいくつかされています
※あくまで動作獲得のプロセスで両側の場合は不利になることが多いということを言っています
2.人工膝関節置換術後の入院中のゴールの目安は?
これまで話した通り、人工膝関節置換術術後の入院期間の明確な基準は定められていません。
一つ言えることは、今現在では手術から退院までの期間は短縮する傾向にあるということです。
その事を踏まえて、人工膝関節置換術を受けた患者さんは入院中に何を意識する必要があるのかについて考えてみましょう。
ちなみに以前の記事で人工膝関節置換術後の経過について述べています。
大方のリハビリの流れについてはこちらをご覧ください。
日常生活に支障をきたさないレベルまで改善したら退院を検討
人工膝関節置換術術後に退院を決定する一つの基準として、
「日常生活に支障をきたさないレベルまで改善できたか」
が挙げられます。
寝返り・起き上がり、立ち座り、歩行、階段昇降、床上動作etc…
こういった動作が一人で安定して行えるようになったかを一つの判定材料になっています。
この動作レベルの内容も施設ごとに作成されたクリティカルパスやプロトコール
に組み込まれており、それに沿って適切な時期に必要なリハビリを行って、退院を迎えるといった流れになります。
つまり、人工膝関節置換術を受けられた患者さんは入院期間中には自宅での生活が可能になるように意識してリハビリを行っていく必要があります。
●自宅に階段はあるか?
●自宅は和室がメイン?洋室がメイン?和室なら床に座る動作が必要になる
●浴室の洗い場の椅子の高さはどうか?低い椅子から立てるか?
●杖もしくはなにも頼らず歩けるようになっているか?
などが考えられますね。
□膝の痛みがまだ残っている
□膝に違和感が残っている
□まだ手術したばかりなので不安
などの患者さん主観の訴えは「退院の基準」にあまり反映されなくなってきている状況です。
その後のリハビリは外来リハビリや介護保険分野で対応
入院期間の短縮が勧められている背景で、残った機能の改善やADL改善に関しては、外来リハビリでのフォローや介護保険分野(訪問リハビリ・通所リハビリetc…)でのフォローを行っていく流れが出来つつあります。
現代の医療の仕組みとしては、こういった形で入院期間を短縮して、退院後は在宅でのケアを勧められています。
3.まとめ
今回は、人工膝関節置換術の入院期間についてまとめていきました。
人工膝関節置換術に限らず、どの疾患もそうですが、時代の流れに伴って入院期間は短縮する傾向にあります。
日本の人工膝関節置換術の入院期間の平均は35日程度とされており、諸外国と比較すると非常に長い入院期間となっており、まだ入院期間の短縮する余地があることがわかります。
施設によって入院期間は様々ですが、今後はさらに入院期間が短縮されることが予想されます。
※当然施設ごとのベッドコントロールの兼ね合いもあるためそうなるとも限りませんが・・・
入院期間の短縮される中でも必要なリハビリを提供し、入院期間の短縮が術後の満足度低下に繋がらないように我々理学療法士や作業療法士は考えていきたいですね。
それでは本日はこの辺で。
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました!
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