人工膝関節(TKA)術後のCPM(持続的他動運動)は本当に効果的なのか?

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TKA術後の理学療法
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どうも、久しぶりです。

管理人のKnee-studyです!

 

 

長らく更新をしていなかったですが、これからまた更新を行っていきたいと思います。

 

 

今回は、「TKA術後のCPMについて」です。

 

CPMは術後に一定速度で持続的に膝を動かす機械になります。

このCPMですが、エビデンスレベルでは微妙な立ち位置になります。

 

CPMを推奨する意見もあれば、やっても意味があまりないといった極論を説く意見もあるということです。

 

TKA術後の痛みの訴えを聞く限り、「しなくてもいいのでは・・・?」と思うこともありますが、顕在化しにくい効果も隠れていることを知る必要があると思います、。

 

 

今回はそういったTKA術後のCPMについてメリット・デメリットを踏まえた上で理解を深めていきたいと思います。

 

 

 

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1.CPM(持続的他動運動)とは?

CPMは、機械を使って膝の曲げ伸ばしを行う治療のことを言います。

TKA術後にCPMを施行している施設は多いのではないでしょうか?

 

 

CPM = Continuous passive motion
※持続的他動運動のことをいい、人工膝関節置換術後に膝の屈曲可動域拡大目的に使用される

 

術直後は疼痛と腫脹が強く、自動または理学療法士による他動でのROM運動は困難なことが多いのが現状です。

 

また、リハビリの時間だけでは、1日で換算すると可動域訓練なんてものは微々たるものです。

 

リハビリで可動域訓練を指導して、患者自身が部屋で積極的に可動域訓練を行ってもらうという好循環が生まれれば良好な経過を辿る可能性が高くなりますが、現実は中々上手くいきません。

 

 

そこで、CPM装置を用いることで無理なくROM運動を行うことが出来るわけです。

 

 

術前の可動域にもよりますが、の屈曲角度は50~60°から開始し、1日に10°ずつ屈曲角度を上げ、術後約2週を目途に120°屈曲が得られるようCPMを行っていきます

 

 

 

 

2.CPMのエビデンスについて

 

CPMに関するエビデンスについては、

変形性膝関節症のガイドラインの中に記されています。

 

変形性膝関節症 理学療法診療ガイドラインより引用しています。

※「観血的治療後の理学療法介入」の項より引用

 

CPM(continue passive movement)装置

 

術後短期的使用: 推奨グレード B エビデンスレベル 1
術後長期的使用: 推奨グレード D エビデンスレベル 1

※期間に問わずエビデンスレベルは高い結果となり、長期になればなるほど推奨度は低下する傾向にある

 

●TKA後CPMの使用は、関節可動域に関して有効であるが、臨床的意義に関しては小さい。

また、麻酔下のマニピュレーションの実施数は減少するがエビデンスとしては弱い。

 

通常の理学療法士による介入のみと、それとCPMを併用した場合、術後3か月の時点では

 屈曲角度、腫脹、機能、疼痛に有意な差は認められなかった。

CPM使用の有意性は認められなかった。

 

●自動運動を中心とした理学療法と比較して、CPMの有効性は、短期的にも長期的にも

認められなかった。

 

CPMの使用は、短期的には関節可動域の改善に有効である。しかし、長期成績には影響を

与えなかった。

また、CPMの長期使用は、関節可動域の改善にほとんど影響はない。

 

●TKA術後、通常の理学療法にCPMを併用することによるさらなる効果は認められなかった。

 

●TKA術後、通常の理学療法にCPMを併用することは、患者にとって有益である。

しかし、その使用期間、強度についてはさらなる研究が必要である。

 

ガイドラインの中では、「CPMは短期間の使用はある程度勧められているが、長期的に行うものではない」と記されています。

 

 

 

 

3.TKA術後にCPMを勧める理由

 

上記の内容から、TK術後のCPM施行の良し悪しはある程度掴んだと思われます。

 

そんな中でも、TKA術後にCPMを勧める理由としては以下の理由が挙げられます。

 

 

●CPMのように、等速性(一定のスピード)で膝関節を動かしていくことで防御性収縮の抑制が期待できる

 

●末梢神経の改善や創部治癒の促進、関節軟骨の保護や修復促進効果を示す報告があり、TKA術後早期からCPMを行うことのメリットは大きいと考えられている

 

●繰り返しの運動を行うことで循環動態に影響を与え、深部静脈血栓(DVT)の予防にも効果が期待されている

 

このように、様々な説がある中で上記のような効果を挙げた文献は散見されます。

 

 

 

4.TKA術後のCPMの必要性に疑問を思う理由

 

ここでは前述したTKA術後のCPM実施に対して、疑問もしくは否定的な意見を述べている内容をまとめていきます。

 

●近年のメタ解析においてCPM実施の有無による膝関節屈曲可動域やDVT予防への効果について明らかな差を認めないとする報告がある

 

 

また、別の文献では以下のように記されています。

 

持続他動運動(CPM)は、TKA直後の機能回復に効果を示さず、術後の膝の腫れはより

 長期に残った。

 

※これは、Journal of Arthroplasty掲載されたインドムンバイのLilavati病院整形外科の

研究で、84名のTKA患者を3つのカテゴリー(CPMなし・1日CPM・3日CPM)に無作為に割り付けたものである。

 

※関節可動域・痛み‐腫れ・ TUGテスト・WOMAC・SF‐12が測定されたが、術前と術後で、どの項目についても3群間に統計的有意差は認められなかった。

 

「膝関節形成術後の持続他動運動(CPM)は無益」Continuous Passive Motion Post-total Knee Arthroplasty (J Arthoplasty. 2012; 27:193-200.) より引用

 

 

この文献からは、CPMにより術後の炎症所見の改善は見込めないという結果に至ったものと予想されます。

 

また、CPM実施の有無を3群間に分けて比較した場合でも、術後の身体機能に有意差は認めなかった。(3群間に大きな差は認めなかった)という結果に至っています。

 

 

 

 

5.まとめ

 

今回はTKA術後のCPMの実施の必要性について考えていきました。

結論からすると、「やる・やらない」はDrの意向にゆだねられる形となるため、「良い・悪い」と言いたいわけではありません。

 

理学療法士として、「TKA術後のCPMが如何ほどの物なのか!?」ということを理解するとか、優先順位を決める上での情報の一部になればと思い、まとめています。

 

そもそも、TKA術後なんてのは侵襲が大きいために、何の刺激が拒絶反応を示すかわからないわけですよね・・・。

「強い刺激が良い人」

「軽く触るもしくは何もしないでほしい人」

なんてのは、術後の問題というより気質的な問題が深く関わっていると思います。

 

そのため、いくら傾向がわかったとしても、全ての人に当てはまるわけではないということですね。

 

 

今回も、TKA術後のCPMは短期的には効果が期待されており、長期的には効果の有無は不明であるといった先行研究が記されています。

 

近年では、「術後の痛み」に対する評価方法も確立されてきていることから、本当に必要な患者にのみ積極的な膝の可動域訓練が行われる時代が迫ってきているのかもしれません。

 

これからは高齢化がより進むことにより、変形性膝関節および人工膝関節を施行する方はこれまで以上に右肩上がりに増えてくることが予想されます。

そうなった場合に、適切に患者を関われるようになっておきたいですね!!

 

それでは本日はこの辺で。

今回も最後まで読んで下さりありがとうございました。

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コメント

  1. nodoka より:

    コメント失礼します。自分で調べていてCPMについての資料が少ないと感じていたため、大変勉強になりました。
    質問なのですが、TKA術後1日目でCPMの角度上限というのはありますか?
    病棟では疼痛の程度を見ながら開始して屈曲120度が目標になっています。たいてい術後1日目だと痛がる方が多いので屈曲60度くらいの方が多いです。ただ今日は術後1日目で全く痛がらない患者さんがいて、車椅子移乗した後にリハビリスタッフから、110度まで屈曲できるのでCPMも100度越えても大丈夫だと思いますと言われました。
    ただ術後1日目で角度を上げすぎると関節がゆるんだり、創が離開するのではないかと心配になり、90度で終了しました。CPMの角度設定は看護師任せなので戸惑ってしまって、、、
    他の文献で見たのは術後1週間で90度、2週間で120度いけたら良いと書いてあるのも見て、ご意見頂きたいです。

    • Knee-study より:

      コメントありがとうございます。
      返信が遅れて申し訳ありません。
      「TKA術後1日目でのCPMの上限角度」に関しては、私自身も明確な基準はわかりません・・・。

      当院でも基本的には60°から開始し、1日Max10°までしか上げていません。
      これはDr指示なので、リハビリとしては特に気にせず経過を見ています。(私自身の見解です)
      ※術後1日目から屈曲110°まで可能であった場合、Epiが効きすぎているか、Gapを広くとっているか、低緊張なのかなどを考え、むしろ安定性を意識したリハビリを行っていきます。
      ※リハビリスタッフさん「110度まで屈曲できるのでCPMも100度越えても大丈夫だと思います」⇒これは「今後そんなに気にせずCPMの角度を上げても大丈夫だと思いますよ」という報告も含まれていたのではないでしょうか?

      近年では術後早期から膝屈曲可動域がスムーズに改善する例も多く見受けられるため、CPMの屈曲角度が全然物足らないという方もいらっしゃいます。
      しかし術後早期から追い詰めるように可動域を広げる必要はないと私自身は認識しています。

      nodokaさんが確認した文献の通りで週を追って順調に可動域が拡がるよう支援して頂ければ・・・と思います。
      CPMもリハビリの一種と捉えますが、どこの施設も大半は看護師主体で動いていると思いますので、術後のケアの一つとして徐々に可動域を広げていくので良いのではと思います。

      まとまりが無くなってしまい、答えになっているか不明ですが返答とさせていただきます。

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