どうも。
管理人のKnee studyです。
以前の記事で、膝内側部痛の原因として、伏在神経が関与していることもありますよ!と記事にしました。
このように関節性の問題だけではなく、神経系の関連性もあるという事実があります。
今回は同じ神経系でも”閉鎖神経”が主因とした症状についてまとめていきたいと思います。
1.今回参考にした文献
今回、膝痛に閉鎖神経が関与している可能性を提示するに至ったきっかけになった記事はこちらです。
この記事以外にも、閉鎖神経と膝痛の関連性を報告した研究はいくつかあり、マイナーでありつつも比較的重要なポイントになると思われます。
また、閉鎖神経は腰痛との関連性も報告されており、「痛み」との関係は密であり痛みを訴える患者に対しては評価対象になることは多くなりそうですね。
●閉鎖孔部での圧痛所見を認める症例に対し、閉鎖神経ブロックを施行することで下肢の諸症状が改善されたという報告が散見されている
●股関節周囲筋の機能改善により膝内側部痛および可動域制限が改善し、正座が可能となった一症例について報告している
※膝関節への直接的な治療は行っていない
●対象は70歳代の女性
●変形性膝関節症の診断あり
●主訴は膝屈曲時の膝内側部痛のために正座が出来ない
●膝周囲での圧痛-、膝窩部(脛骨神経)や閉鎖孔部、梨状筋に圧痛+
●股関節屈曲90度での内旋5度、股関節屈曲90度での内転0度と制限+
●治療の経過で閉鎖孔部や梨状筋の圧痛は軽減し、膝の可動域は改善し正座も患側への荷重は不十分なものの可能となった(内転は20度、内旋は35度まで改善を認める)
●今回の症例では膝関節包の上内側部を支配する閉鎖神経の絞扼性神経障害が関与しているものと考えられた
●膝内側部への疼痛が中心でありかつ、閉鎖孔部に著明な圧痛を認めたことから閉鎖神経障害の関与が疑われた
●平野らは、股関節90度屈曲位において内旋を加えると外閉鎖筋が、内転を加えると内閉鎖筋が強く伸張されたと報告しており、股関節内転や内旋は両筋の伸張による閉鎖神経絞扼を強める肢位であると考えられる
●正座時による股関節が屈曲運動が、内・外閉鎖筋の伸張性を高め、結果的に閉鎖神経の絞扼を引き起こしたために動作が困難になったと考えらえれている
●股関節周囲での神経絞扼障害によって膝関節可動域制限が引き起こされる可能性が示唆された
2.膝の痛みと閉鎖神経の関連性
図:閉鎖神経の走行について
閉鎖神経の走行について
上記の図が大腿の前内側部を支配する神経の走行になります。
主に、大腿神経と閉鎖神経の走行が記されています。
プロメテウス 第3版 から引用すると閉鎖神経の走行は以下のようになります。
閉鎖神経は、第2‐4腰椎の脊髄分節から神経線維を受ける。
腰神経層を離れた後、閉鎖神経は大腰筋の後内側を小骨盤へ向かって下行し、分界線の下方で閉鎖動脈・静脈とともに閉鎖管へと入る。
さらに遠位において外閉鎖筋に筋枝を出し、最終的に前枝と後枝に分かれる。
これらの分枝はさらに遠位に向かい、短内転筋の前方と後方に進み、そのほかの内転筋群(恥骨筋、長内転筋、短内転筋、大内転筋、小内転筋と薄筋)に運動線維を送る。
前枝は、薄筋の前縁で感覚性の終末皮枝となり、大腿筋膜を貫いて大腿下方に至り、手掌大の広さの皮膚に分布する。閉鎖神経損傷(出産や骨盤骨折など)に付随する運動障害を評価する際には、大腿神経は恥骨筋への、坐骨神経は大内転筋への神経支配を助けていることを留意しておくべきである。
今回紹介する”閉鎖神経”の走行を見ると、内転筋群の支配をしており、皮膚枝は膝内側部まで及んでいるようですね。
前述しましたが、伏在神経に関しては、閉鎖神経よりももっと下部まで支配しているのがわかりますね。
閉鎖神経の絞扼部位は?
この閉鎖神経ですが、内閉鎖筋の硬さや外閉鎖筋の硬さなどがあり、閉鎖神経が絞扼されると膝の内側に痛みが出現したり、大腿の内側部の感覚が異常になることがあります。
閉鎖孔は内閉鎖筋と外閉鎖筋で覆われていて、その上部に閉鎖管という穴がありここを閉鎖神経、閉鎖動脈、閉鎖静脈が通過していきます。
閉鎖神経は主に、内外閉鎖筋の影響を受けるといわれていることから、この閉鎖孔付近での絞扼が考えられますね。
閉鎖神経の絞扼に関連する組織と動き
上述しましたが、閉鎖神経の絞扼に影響する組織としては、内外閉鎖筋が挙げられます。
ここでしっかり把握しておきたいのが、この両筋が伸長される運動になります。
●股関節内転‐内閉鎖筋
●股関節内旋‐外閉鎖筋
上記の運動にてそれぞれの筋の伸長が起こるといわれています。
この結果、膝内側部の痛みと関連すると考えられています。
閉鎖神経の絞扼による症状について
閉鎖神経の絞扼による症状としては、腰部~膝にかけての疼痛が報告されています。
●鼠径部内側深部
●股関節前面あたりの局在のはっきりしない痛みや違和感
●膝関節内側への放散痛
●大腿内側部の感覚異常(知覚異常)
伏在神経と若干被る部分もあり、鑑別が必要になってきますね…
ただ、伏在神経の場合は、走行上、股関節への症状は出さないのが違いを評価するポイントになりますね。
3.伏在神経と閉鎖神経の症状の違い
こちらも先程軽く触れましたが、
”影響を及ぼす範囲で判断する”ことが大切になると思います。
●伏在神経の場合
大腿内側~膝内側まで波及する痛み
●閉鎖神経の場合
股関節~大腿内側部にかかる痛み
閉鎖神経の場合は、「膝関節まではいかないが、膝内側部付近まで神経が伸びているため、膝内側部痛と間違えることがある」ということが重要になります。
ここで再度理解しておきたいのが、伏在神経の場合は、大腿内側から膝内側部、そして下腿内側部までの異常感覚を引き起こします。
それに対し、閉鎖神経は伏在神経と比べて下肢遠位まで症状を引き起こさず、膝内側のやや上部までとなっています。
ここを理解し、膝関節までしっかりかかる症状なのか?若干膝よりも上方に症状が強いのか?を判別するとどちらの問題なのか?(神経系に絞るとですが…)がはっきりしてくるのではと思います。
あとは、閉鎖孔付近の圧痛所見があるか否か?も閉鎖神経の問題であるかの大きな判断基準になってきますね!
4.まとめ
今回は、膝痛と閉鎖神経の関連性についてまとめていきました。
ほんとうにどこの部位でも同じですが、局所だけの問題ではなくて、遠位からの影響もしっかり理解したうえでリハビリを行っていかなければな…と思う次第ですね。
ただし、大前提に局所の評価と治療が出来なければ、根拠のない治療が先行する傾向が強くなり、結果的に何がしたかったが分からなくなってくると思います。
「局所ばかりに注力する視野の狭い治療」でもなく「他関節からの影響ばかりをみる視野を広げ過ぎて本質を見失う治療」でもなく、この間を取った「丁度いい治療」を行って心掛ける必要があります。
他関節の治療を行うためには、局所の問題をしっかり評価したうえで”ここではない”と判断された場合に行うことが大切になると思います。
また、局所だけでなく、他関節との連動性を考える上で、痛みの繋がりや再発予防を考慮する場合、他関節へのアプローチも重要になりますね。
…考えると混乱してきますね。
ただ、どの治療でもほとんどの場合、悪影響を及ぼすことはなく患者さんのためになるわけなので、精一杯治療を行っていきたいと思います!
それでは本日はこの辺で。
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました。
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