どうも。管理人のKnee-studyです。
今回は変形性膝関節症の方に見られるラテラルスラスト(Lateral thrust)についてです。
内反変形した方の歩行状態をみると、立脚期に膝が外側にブレる反応が見られると思います。
見るからに痛そうな反応ですよね…。
今回はこの膝のブレ(ラテラルスラスト)についてまとめていきたいと思います。
1.ラテラルスラストと変形性膝関節症(膝OA)との関連性
まず初めに、今回の話の中心となるラテラルスラストですが、変形性膝関節症との関連性が報告されています。
大前提として、ラテラルスラストを理解する”意味”をここで把握していきましょう。
変形性膝関節症の発症のリスクファクターとして、年齢、女性、肥満、大腿脛骨角(femoro-tibial angle:FTA)及び歩行時のラテラルスラスト(膝関節が外側に動揺する反応)が挙げられています。
FTAについてはこちらの記事をご参照ください。
このように変形性膝関節症とラテラルスラストは主従関係のような形で存在します。
ラテラルスラストを認めれば、膝の変形を助長する可能性が高まるという事ですね。
2.ラテラルスラストとは?
少し話が前後しますが、ラテラルスラストを理解する”意味”が出来た所で、本題のラテラルスラストとは何ぞや?という話になります。
このように、日本語では”外側動揺”と表現されます。
歩行時に外側に膝がブレることを意味しており、膝OA患者の歩行でよく見る反応となります。
膝関節の動き
正常な膝関節は、1軸性の関節であり大きな屈曲伸展方向への可動域をもつ一方で、内反外反や回旋の可動域は小さいのが当たり前です。
ですが、関節軟骨に退行変性が生じると関節に弛緩性が生じ、それに伴って内反外反や回旋の可動域が大きくなってきます。
ラテラルスラスト発生のメカニズム
膝関節の動的支持機構を見ると、前後方向には大腿四頭筋やハムストリングスのような屈曲伸展を制御する大きな筋肉が付着しています。
それに対して内反外反や回旋方向に大きな力を発揮する筋肉は存在していないのが現状です。
このことから、退行変性の進んだ不安定性のある変形性膝関節症患者では、歩行の立脚初期(荷重がかかる時)、膝関節の側方不安定性を制動することができず急激に内反運動が生じるラテラルスラストが生じます。
ラテラルスラストと変形性膝関節症の関係性
ラテラルスラストが生じると膝関節の回転中心が外側へ変位してしまいます。
そうなると、膝関節内反運動のレバーアームが長くなります。
それにより、変形性膝関節症患者はレバーアームの長さと床反力の大きさの積で表される膝関節内反モーメントが増加することになります。
膝関節内反モーメントの増加は、膝関節内側の関節軟骨に対する過剰な圧縮ストレスを生じさせ、変形性膝関節症を進行させると考えられています。
これまで述べたように、膝関節の側方動揺を制動する筋肉は付着していないことから、膝関節のサポーターや隣接関節である”股関節”や”足関節”に対するアプローチを行うことが、ラテラルスラストの抑制に一役買う可能性があります。
KAM(膝内反モーメント)とラテラルスラストの関係性
“KAM”(膝内反モーメント=膝の力学的負荷)とはラテラルスラストを定量化したもので、変形性膝関節症の進行予測・治療効果判定に有用と考えられているようです。
現時点で1,000以上もの論文報告がされ、変形性膝関節症の予後予測の精度はおおよそ感度90%、特異度85%と、世界から脚光を浴びるデジタルバイオマーカーとされています。
引用元:Care Net
KAMについてはこちらの記事で以前簡単に紹介しています。
このように、ラテラルスラストもKAM値として定量化できることで、その対処法やリハビリに対する反応も客観的に知ることが出来ます。
最近ではこのKAMをわずか5分で計測できる機器も登場し、知名度はどんどん上がっています。
以下にリンク先を示しておきます。
3.まとめ
今回は、変形性膝関節症で見られるラテラルスラストについてまとめていきました。
ラテラルスラストは膝関節内側へのストレス増大に繋がります。
もしかするとTKA後の膝内側部痛もこの内側へのストレスが影響している可能性もありますね。
この判断には術前からラテラルスラストが生じているのか?、術後はどうなったのか?を把握していく必要があります。
ということでラテラルスラストへの理解を深め、臨床に活かしていきたいものですね。
それでは本日はこの辺で。
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました!
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