どうも。
管理人のKnee-studyです。
前回記事で紹介した中枢性感作に対しての続きです。
前回の記事の中で、
「中枢性感作により生じる下行性疼痛抑制系の機能低下を回復させるための内服薬治療などの検討も医師と行っていくことも視野に入れる必要があります。」
と説明しましたが、その内服薬として有名なのが、”サインバルタ”になります。
今回はそのサインバルタについてまとめていきます。
1.中枢性感作に対して効果のある薬剤として挙げられるサインバルタとは?
サインバルタという名前は商品名であり、本来の薬の名称は、デュロキセチン塩酸塩と呼ばれています。
この薬剤は、SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)に分類されており、名前の通りセロトニン・ノルアドレナリン再取り込みを阻害する作用があります。
●SNRIとは「Serotonin Noradrenaline Reuptake Inhibitor(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)」の略称
●SNRIの他にも、SSRI「Selective Serotonin Reuptake Inhibitor(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)」も存在する
サインバルタの効果
脳内でセロトニンとノルアドレナリンの再取り込みを阻害することで、脳内の神経伝達をスムーズにし、憂うつな気分を和らげ、やる気がなくなる、不安といった症状を改善します。
通常、うつ病・うつ状態の治療に用いられます。
このようにメインは抗うつ薬として存在しているようです。
本剤(SNRI)はセロトニンとノルアドレナリンの再取り込みを阻害し、これら神経伝達物質の働きを増改善することで抗うつ作用をあらわす。
またノルアドレナリンやセロトニンは脳内で痛みの抑制に深く関わる下行性疼痛抑制系を賦活(活性化)し、この働きにより鎮痛効果が期待できる。
そのため、本剤の中には神経障害性疼痛などの痛みの緩和に対して使われるものもある。
日経メディカル 処方薬辞典より引用
このように鎮痛効果も挙げられており主な効果としては下行性疼痛抑制系の機能の賦活による中枢性感作の改善を狙って処方されるようです。
サインバルタの使用に対するリハビリに影響するデメリットや副作用は?
リハビリで関わる際に最も気になるところが「効果」のほかに「副作用」ではないでしょうか。
リスク管理をする上で、服薬することで出現するリスクは知っておきたいところですね。
ここでは、普通に調べたら出てくる副作用一覧ではなく、少し視点を変えた部分のリスクについてまとめています。
①患者自身がうつ病だと勘違いする可能性がある
薬を処方された際に薬の説明文も一緒に入ってきます。
サインバルタを処方された際、薬の説明文には「抗うつ薬・うつ病の薬・うつ症状を緩和する薬」などと表記されています。
これをみると、患者さんは「うつ病の薬を出された」などと勘違いしてしまうことがあります。
実際の体験談ですが、私の担当患者さんはTKA術後に膝の痛みが中々改善しないため、このサインバルタを入院中に処方されました。その際に上記のような勘違いをされ、何度も説明をしたのを覚えています・・・。
②情緒不安定になりやすい
「脳内でセロトニンとノルアドレナリンの再取り込みを阻害することで、脳内の神経伝達をスムーズにし、憂うつな気分を和らげ、やる気がなくなる、不安といった症状を改善する」
という効果があるのですが、逆を返せば精神機能の安定に必要な神経伝達物質に作用する薬を服用するわけなので、精神的な副作用も当然考える必要があります。
・不安になる
・いらいらする
・あせる
・興奮しやすい
・発作的にパニック状態になる
・眠れない
・ちょっとした刺激で気持ちや体の変調を来す
・敵意を持つ
・攻撃的になる
・衝動的に行動する
・じっとしていることができない
・異常に気分の高揚した状態が持続する
上記のような症状があらわれることがあります。
③転倒しやすくなる
高齢の方は、めまいなどにより転倒することがあるため注意が必要になります。
転倒リスクに関しては、サインバルタに関わらず多くの薬剤に共通するリスクになりますね。
2.変形性膝関節症にサインバルタが効果的な理由は?
最後に、まとめ的な内容になりますが、
サインバルタ・変形性膝関節症・下行性疼痛抑制系といったキーワードを繋げていきましょう。
変形性膝関節症だけでなく、変形性関節症全般的に疼痛誘発の一つの原因として「下行性疼痛抑制系」が関与しているとされています。
サインバルタは、下行性疼痛抑制系を賦活することによって痛みを抑制します。
つまり、変形性膝関節症の疼痛に関与する下行性疼痛抑制系に対してサインバルタを取り入れていくことで、以下のような変化が生まれます。
図:サインバルタの効果機序のイメージ
このように、サインバルタはセロトニンとノルアドレナリンの再取り込み阻害作用を介して下行性疼痛抑制系を賦活させ、鎮痛効果を発揮すると考えられているわけです。
3.まとめ
今回は、中枢性感作の問題から、感作の改善に有効とされているサインバルタについてまとめていきました。
サインバルタは、中枢神経系のセロトニン、ノルアドレナリン再取り込みを阻害し、下行性抑制系を賦活することによって鎮痛効果を発揮しているとされています。
故に中枢性感作に対して効果的であるといわれています。
しかしサインバルタの効果機序の表向きは「うつ症状の緩和」となっていることから、リハビリで関わる際は患者さんへの追加の説明も考えていく必要があると思います。
サインバルタが追加処方される際は、一度患者さんに説明すると思いますが、あまり理解されていないこともあります。
そんな時、定期的に関わるリハビリ中に再度説明できると患者さんの理解度も高まると思います。
それでは本日はこの辺で。
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました!
コメント