どうも。
管理人のKnee-studyです。
前回は膝関節のロールバック機構について紹介していきました。
今回は、膝関節に関与する靱帯について少し考えていこうと思います。
皆さん、膝関節に関与している靱帯でパッと思いつくのは何でしょうか?
大体メジャーなところで、前十字靭帯(ACL)や後十字靭帯(PCL)などでしょうか?
あとは、内側側副靭帯(MCL)と外側側副靭帯(LCL)もメジャーなところでしょう。
上記の靱帯は主にスポーツ障害でよく耳にする靱帯かと思います。
つまり運動に関わっている靱帯であるとも言えます。
では、膝関節の安定化に注力している靱帯はどうでしょうか?
意外と知らないもので、調べていくと比較的多くの靱帯は存在し、膝関節を支えていることがわかります。
そもそも膝関節とは、大腿骨と脛骨で構成された関節であり、関節の接する面積が他の関節と比較して少ないのが特徴です。
そのため、膝関節は安定のために、広範囲かつ多くの靱帯に頼らなくてはならない状況にあります。
こういった背景を考慮すると、膝関節に関与する靱帯は一通り理解しておきたいのもですね。
私自身もこの記事を通して理解を深めていきたいと思います。
1.まずは膝関節の安定化に関与する靱帯を部位別に理解する
まずは膝に関与する靱帯を一つ一つ紹介する前に、前面・後面・側面・膝関節内と区画に分けてそれぞれの靱帯の役割を理解していきましょう。
存在する部位を理解するだけでも、機能のほうもわかりやすくなります。
膝の前面を補強する靱帯について
膝関節前面の関節包と靱帯は、主に膝蓋骨の安定のために機能しています。
安定化の鍵となるのは、大腿直筋、内側広筋、外側広筋、膝蓋支帯(縦膝蓋支帯)、膝蓋大腿・下腿靱帯(縦膝蓋支帯)となります。
図:膝前面の靱帯の構造
プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第3版 より引用
膝の後面を補強する靱帯について
膝後面の補助として働く靱帯は、「斜膝窩靱帯」・「弓状膝窩靱帯」が挙げられます。
図:膝後面を補強する靱帯
プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第3版 より引用
また他にも、「膝窩腓骨靱帯」も膝関節からやや外れますが膝関節の後方の安定化として寄与しています。
膝窩腓骨靱帯は、腓骨頭から膝窩筋の停止腱まで走行し、この停止腱と共に大腿骨に停止する。
臨床では、膝窩筋の停止腱、外側側副靱帯、腸脛靭帯とともに「後外側複合体」と呼ばれることが多い。
この後外側複合体は、外転および脛骨後方移動における受動的安定装置として働く。
(Petersen & Zantop,2009)
膝の側面を補強する靱帯について
内外側の側副靭帯がこれに該当します。
内・外側側副靭帯は、膝関節の側面に付着しており、膝関節の内外反の制動に関与しています。
図:膝側面を補強する靱帯
プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第3版 より引用
膝の関節内を補強する靱帯について
関節内に存在する靱帯(関節内靱帯もしくは内在性靭帯)には、「前十字靭帯(ACL)」・「後十字靭帯(PCL)」・「膝横靱帯」・「半月大腿靱帯」の4つが挙げられます。
※ACL・PCLに関しては存在自体は関節内にあるものの、滑膜の外、すなわち関節腔外にある靱帯であるとも言われています
図:膝の関節内に存在する靱帯
プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第3版 より引用
2.膝関節に関与する靱帯の一覧~マイナーな靭帯まで~
上記では、膝関節に関与する靱帯のイメージを作っていきました。
ここからは靭帯一つ一つ分けて理解を深めていきます。
ACL(前十字靭帯 Anterior cruciate ligament)
ACLは脛骨の前顆間区から出て、上後方に向かい、大腿骨外側顆の内側面後部に付着し、脛骨の前方滑脱を防いでいます。
解剖学的、特に機能的観点から、傾斜の異なる2種類の線維足を区別することが出来ます。
※ACLは、機能上、前内側線維束(AM側)と後外側線維束(PL側)の2つに分けられる
図:ACLの2つの線維
プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第3版 より引用
図:ACLの2つの線維の走行イメージ
プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第3版を一部改変し引用
上図が、ACLの2つの線維(AM側とPL側)になります。
この2本の線維束の長さ(AM側は約38㎜・PL側は約20㎜)と走行が異なるため、関節の位置によって緊張もしくは弛緩する線維束が異なります。
つまり、2本の異なる線維があることで、広い範囲で膝関節を安定させることが出来るということです。
PCL(後十字靭帯 Posterior cruciate ligament)
PCL、は脛骨の後顆間区から出て、前十字靱帯の内側を前上方に向かい、大腿骨内側顆の外側面前部に付着し、脛骨の後方滑脱を防いでいます。
PCLはACLよりも厚く、ACLと同様に2種類の線維に分けられます。
※ACLと反対になり、前外側線維と後内側線維の2種類となる(内外側が入れ替わるので注意)
図:PCLの解剖と走行
プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第3版を一部改変し引用
PCLの機能に関してはこちらの記事に記しています。
MCL(内側側副靱帯 Medial collateral ligament)
MCLは縫工筋・薄筋および半腱様筋(3つ併せて鵞足を形成)とともに安定性保持に寄与し、膝関節の内側を補強しています。
大腿骨の内側上顆から斜め前方へと走行し、脛骨内側顆の内側縁と後縁に幅広く停止します。
脛骨大腿関節には生理的外反があるため内側での負担が大きいことから、外側側副靱帯よりも内側側副靭帯が大きく、また外側よりも内側において膝関節の安定化に関与する筋が多く存在します。
MCLは浅層と深層に分けられ、深層は内側半月板の中節に強く結合しています。
MCLと半月板の結合があることから、膝関節内側部の動きは外側に比べ極端に少なくなっています。
※半月板の構造上の問題以外にもこういった影響もあります
MCLは下腿の外反と外旋を強力に制動し、その走行上前方引き出しにも補助的に制動します。
図:LCLとMCLの解剖
プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第3版 より一部改変し引用
LCL(外側側副靱帯 Lateral collateral ligament)
LCLは、腸脛靭帯と共に脛骨大腿関節の安定性保持に寄与し、膝関節の外側を補強します。
LCLの走行は、大腿骨の外側上顆から斜め後方であり、最終的に腓骨頭に停止します。
LCLはMCLとは違い、円筒状の靱帯で太さは5~7㎜程度です。
MCLは内側半月板に強固に付着しますが、LCLは外側半月板および関節包への結合がありません。
LCLは前方から後方へ走行し、かつ屈伸軸の後方に位置することから内反・外旋・伸展で緊張します。
※LCLと外側半月板の結合がないために、外側半月板の可動性が大きくなります
図:LCLの解剖と特徴
プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第3版 より一部改変し引用
膝蓋靱帯(Patella ligament)
膝蓋靱帯は、大腿四頭筋腱の下方への続きで、膝蓋骨の下部から起こって脛骨粗面に付く強靭な線維束のことを言います。
図:膝蓋靱帯の役割
プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第3版 より一部改変し引用
膝蓋靱帯は膝蓋骨に付く上端は幅広く、脛骨粗面に付く下端に向けて細くなります。
大腿四頭筋の収縮力を、膝蓋骨を介し脛骨へと伝える張力伝達装置になります。
この膝蓋靱帯の炎症による痛みは、ジャンパーズニー(jumper’s Knee)という代表的なスポーツ障害が挙げられます。
また、高齢者の姿勢変換に伴う膝前面のストレス障害でもこの膝蓋靱帯への影響が大きくなります。
年をとるにつれて、円背が進み、骨盤は後傾していきます。
そうなると、重心の補正のために膝関節は前方に偏位していきます。
※円背により上半身重心は後方に偏位するため、代償機構で下半身重心は前方に偏位する必要があり、それを膝関節が引き受ける傾向にある
この姿勢変換を、筋機能に落とし込むと以下のようになります。
ハムストリングスの短縮に伴う大腿四頭筋の過伸長が長期間続くことで膝蓋靱帯も伸長され、結果的に付着部である脛骨粗面へのストレスが増大する。
こういった形で、若年者のスポーツ障害だけでなく、高齢者でも膝蓋靱帯へのストレスは受けやすくなりがちになります。
内側膝蓋支帯と外側膝蓋支帯
膝蓋骨および膝蓋靱帯の両側には、内・外側広筋へと続く膜上の縦走線維束を内側膝蓋支帯および外側膝蓋支帯と呼びます。
この2つの膝蓋支帯も靭帯の一部として紹介していきます。
図:内・外側膝蓋支帯について
プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第3版 より一部改変し引用
内側膝蓋支帯の起始は内側広筋であり、膝蓋骨を介さず脛骨の内側上端に広く付着します。
内側膝蓋支帯の前方は膝蓋骨の内縁から膝蓋靱帯、後方は内側側副靭帯へと繋がります。
一方、外側膝蓋支帯の起始は、外側広筋であり、こちらも膝蓋骨を介さずに脛骨の外側上端に広く付着します。
外側膝蓋支帯の前方は膝蓋骨の外縁から膝蓋靱帯、後方は腸脛靭帯へと繋がります。
これらの両膝蓋支帯は膝蓋靱帯と共に膝蓋骨の保持に役立ち、膝蓋骨の側方動揺の阻止に寄与しています。
内側広筋と内側膝蓋支帯の力学的関係
内側膝蓋支帯は内側広筋と連結しています。
故に、内側膝蓋支帯の緊張は内側広筋に依存しており、併せて内側膝蓋支帯を介した牽引力は下腿の内旋トルクと伸展トルクを発生させます。
外側広筋と外側膝蓋支帯の力学的関係
外側膝蓋支帯のは外側広筋と連結しています。(内側膝蓋支帯と流れは同じ)
故に、外側膝蓋支帯の緊張は外側広筋に依存しており、併せて外側膝蓋支帯を介した牽引力は下腿の外旋トルクと伸展トルクを発生させます。
内側膝蓋大腿・脛骨靱帯と外側膝蓋大腿・脛骨靱帯
この靱帯は深層の靱帯であり、教科書によって表記が違います。
プロメテウスでは、この靱帯を「内側・外側横膝蓋支帯」と呼んでいます。
※この場合、前述した「内側・外側膝蓋支帯」のことを「内側・外側縦膝蓋支帯」と呼んでいる
つまり、膝蓋靱帯を境に両サイドに膝蓋支帯が縦走線維と横走線維はそれぞれありますよってことです。
図:内・外側横膝蓋靱帯について
プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第3版 より一部改変し引用
用語の相違に違いはありますが、機能は同じです。
この内・外側の横走する膝蓋靱帯ですが、膝蓋骨低位の症例では、内側および外側膝蓋靱帯の瘢痕化が膝蓋下脂肪体とともに生じる場合が多くなります。
つまり、膝蓋腱周囲での滑走性不全による可動域制限の原因は、
膝蓋下脂肪体だけでなく、両側の横走する膝蓋靱帯も影響しているということです。
また、階段昇降時の痛みが主体の膝蓋大腿関節症のケースでは、この横走する外側膝蓋靱帯の拘縮が痛みに影響している場合があり、臨床上チェックポイントになると思われます。
斜膝窩靱帯
半膜様筋腱の下端からおこり、膝関節包の後方を斜め上外方に走り、大腿骨の外側顆後面に付着します。
この斜膝窩靱帯は弓状膝窩靱帯と共に、関節包後面を補強する役割があります。
図:斜膝窩靱帯と弓状膝窩靱帯について
プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第3版 より一部改変し引用
弓状膝窩靱帯
大腿骨の外側顆後面から起こり、膝関節包の後面を下方に走り、膝窩筋腱の後方を横切って腓骨頭に付着します。
この弓状膝窩靱帯も上述した斜膝窩靱帯と共に膝関節後方の安定化に寄与しています。
図:斜膝窩靱帯と弓状膝窩靱帯について
プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第3版 より一部改変し引用
後半月大腿靱帯
後半月大腿靱帯は、外側半月後方と大腿骨内側顆の内面をつなぐ靱帯です。
この靱帯は、関節内靱帯であり、膝関節の深層に位置する靱帯になります。
関節内に存在することから、関節内の安定化に寄与しているものと思われます。
図:後半月大腿靱帯の走行
プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第3版 より一部改変し引用
膝横靱帯
膝横靱帯は、内側半月の前縁と外側半月の前縁をつなぐ靱帯です。
関節内靱帯であり、膝の前面側に位置します。
内・外側の半月板の間を走行し、両側の半月板に付着を持ちます。
図:膝横靱帯の走行
プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第3版 より一部改変し引用
3.まとめ
今回は、膝関節に関与する靱帯についてまとめていきました。
靭帯を一つ一つ挙げていくと、思っているよりも多くの靱帯があります。
膝関節の構造上、安定性が低く可動性の高くなっています。
そのため、安定性の面で周囲の組織に依存しなければなりません。
その膝関節の安定に靱帯組織は非常に大きな影響を与えており、膝関節にとって靱帯の存在は必須となります。
今回はそういった膝関節に関与する靱帯について理解を進めることが出来ました。
それでは本日はこの辺で。
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました!
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