人工膝関節術後(TKA)に対するTENSの鎮痛効果~不安や痛みの破局的思考との関連性~

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TKA術後の理学療法
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どうも。管理人のKnee-studyです。

 

今回は前回記事の続きで、実際のTKA術後のTENS(経皮的末梢神経電気刺激療法)施行効果について研究した文献の紹介を行います。

前回の記事を読むだけでは、TENSを行うことで、TKA術後の鎮痛は容易に行えるのでは?と思ってしまったかもしれません。

ちなみに前回記事はこちらです。

人工膝関節術後の痛みに対する対処法の一例~TENS使用による効果について~
TENSとは、transcutaneous electrical nerve stimulation(経皮的末梢神経電気刺激療法)のことを指し物理療法の中の電気療法に分類されます。TKA術後に予想よりも痛みを訴えない患者さんや、逆にこれでもかってくらい痛みを訴える患者さんもおられると思います。今回の記事を読んで術後の痛みがなかなか取れない場合は、今回紹介するTENSの実施を試みてみるのはどうでしょうか?

 

今回は、TENSを行う上で効果が期待できるor出来ないといった所に関して文献を用いて検討していきます。

 

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1.人工膝関節術後(TKA)のリハビリにおける疼痛抑制のためのTENSについて~プラセボ対象群と比較して~

【参考文献】

Rakel BA,et al : Transcutaneous electrical nerve stimulation for the control of pain during rehabilitation after total knee arthroplasty : A randomized,blinded,placebo-controlled trial.Pain 155 : 2599-2611,2014

 

今回紹介する文献では、

①標準的治療群、②TENS群、③プラセボTENS群の3群に分けて、痛みの強度、痛みの破局的思考で評価し、さらに不安感なども追加で評価を行っています。

結果としては、「痛みの破局化が進んでいないケース」や「不安感が少ないケース」ではTENSの鎮痛効果が認められる一方で、これらの数値が高いケースではTENSの鎮痛効果が少ないと報告しています。

 

つまり、痛みの破局的思考や不安感がベースにあるとTENSの治療効果が予想より得られないということになります。

 

このことから、痛みの破局的思考を評価するPCSなどを用いて適応の確認を行っていく事が必要であることがわかりますね。

 

 

研究の概要

本研究では、人工膝関節術後(TKA)の痛みと痛覚過敏の軽減および機能の向上における経皮的電気神経刺激(TENS)の有効性を評価しています。

 

対象

対象は片側TKA術後患者317名となっています。

この対象者を①標準的治療群、②TENS群、③プラセボTENS群の3群に分けています。

 

評価項目

●評価時期は”術後”および”術後6週間後”の2回

●評価項目は疼痛、機能(膝関節ROMおよび歩行速度)、痛覚過敏(定量的感覚検査)を測定

※追加で、鎮痛剤の摂取量、不安、抑うつ、痛みの破局的思考も評価対象となった

この研究では、不安や抑うつ、痛みの破局的思考など情動面の評価も取り入れてTENSの効果の如何を調べていますね。

 

結果

●TENS群は、標準的治療群に比べて術後の膝関節伸展運動時(P=0.019)および速歩時(P=0.006)の疼痛が少なかった

●TENS群とプラセボTENS群に有意差はなかった

●TENS群のうち、不安と痛みの破局的思考のスコアが低い者は、これらのスコアが高い者に比べて6週間後のROM時の疼痛がより軽減していた(P=0.002、P=0.03)

この結果から、不安や痛みの破局的思考があるとTENSの効果が得られにくい状態にあることが予想できますね。

●TENS群とプラセボTENS群は、標準的治療群に比べて術後の機械的痛覚過敏が少なかった(P=0.03-0.01)

 

結論

TENS実施にあたり、「不安や痛み破局的思考のスコアが低い患者」は「不安や痛みの破局的思考が高いスコアの患者」に比べてROM時の痛みが大幅に減少したと報告されています。

結果として、痛みに対する心理的要因が絡む場合、TENSの効果を十分に得られない可能性があると結論付けられています。

※不安や痛みの破局的思考が高いスコアを獲得した患者は TENSの恩恵を受けない可能性があり、TENSによる治療は不安や痛みの壊滅的な影響を受けていない人を対象とする必要があることを示唆している

 

2.まとめ

今回は、人工膝関節術後(TKA)のTENS施行による効果を情動面の問題を含めた上でどうなるのか?といった部分を検証した文献を紹介していきました。

結果的に、不安や痛みの破局的思考が少ない方がTENSの治療効果が得られやすいことが示唆されており、情動面への配慮も必要であることがわかりました。

 

今回の結果から、どんなケースでも痛みが軽減するわけではない事がわかり、事前の評価の大切さを改めて感じることが出来ました。

物理療法の効果を感じつつ、適応or非適応を客観的に判断できるようにしていきたいですね。

 

ということで、本日はこの辺で。

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました。

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