どうも。
管理人のKnee-studyです。
今回も前回の続きで、膝関節のロールバック機構に関する内容について記事にしていきます。
前回記事はこちら。
なぜこんなに膝関節のロールバック機構について記事にしていくかというと、
正常な膝関節だけでなく、膝OAからの手術(人工膝関節置換術)でも、このロールバック機構は必要な機能になるからです。
ただこのロールバック機構を人工的に作り出しているか、自身の組織(後十字靭帯)を温存して再現しているかの違いはあり、後者の場合、リハビリでも意識して介入する必要があります。
TKAのCRタイプは後十字靭帯(PCL)を残存させるタイプであり、「TKA術後の膝関節後方の安定性」や「TKA術後の膝屈曲をスムーズに誘発させる(ロールバック機構)」をPCLが担っているんです。
そもそも、ロールバック機構自体は膝関節そのものの関節運動を正常に行うために必要な機構になります。
なぜ必要なのか?詳しく知りたい場合はこちらの記事をご覧ください。
今回は、このロールバック機構を有したTKAのタイプを紹介して、TKA術後にもロールバック機構が重要な場合があるということをまとめていきたいと思います。
1.TKA術後の膝関節とロールバック機構の関係性について
ロールバック機構はTKA術後のリハビリでも知っておきたい知識になります。
なぜ知っておかなければならないのか?についてここで説明していきます。
まずは簡単にロールバック機構のおさらい
こちらの図は、以前のロールバック機構についての記事で紹介したものになります。
ロールバック機構とは、膝関節の屈曲に伴い、大腿骨顆部が後方へ移動することを言います。
つまりは、膝関節の関節運動時に生じる「転がり-滑り運動」のことを指すわけですね。
膝関節の屈曲運動に伴って、大腿骨が脛骨上を後方に滑っていくことで、関節運動が円滑にいくということです。
このロールバック機構が起きないと、膝屈曲に伴って膝後方のインピンジメントが生じて膝の可動域制限をきたすことになります。
TKA術後にもロールバック機構は起こるのか?
TKA術後にもロールバック機構は生じます。
ロールバック機構自体は膝関節の深屈曲を引き出すための関節内運動になります。
TKA術後でも膝関節の屈曲角度はしっかり獲得できるため、ロールバック機構も十分に機能する必要があります。
TKAの機種によってロールバック機構の方法は違う
膝関節のロールバック機構を有したTKAの機種とは何でしょうか?
もう上に書いてますけど、「TKAのCRタイプ」がPCLの機能によるロールバック機構を有した機種になります。
ちなみに「TKAのPSタイプ」はこのロールバック機構を機械を用いて代用しています。
これをポストカム機構と呼びます。
このTKAのPSタイプとCRタイプが今現在のTKAの使用機種の大半を占めている状況です。
TKAの機種について以前の記事で簡単にまとめています。
https://knee-blog.com/tka-knee-oa
TKAのPSタイプのロールバック機構
CRタイプの特徴やロールバック機構についての詳細です。
図:TKAのPSタイプについて
【PSタイプの特徴】
・術中にACL・PCLともに切除し、靱帯での制動は機械によって代用される(ポストカム機構)
・術後の膝関節屈曲時のロールバック機構は、ポストカム機構によってコントロールされる
・以前よりは軽減しているが、膝関節可動時のポストとカム間での摩擦による摩耗のリスクがある
【インサートの特徴】
・CRタイプに比べてインサートの傾斜はほとんどなし
・ロールバック機構を再現するためにポストが設置されている(CRタイプにはない)
【ワンポイント】
・インサートの構造(ポスト)を利用してロールバック機構を再現しており、軟部組織の影響を受けにくくなっている
・しかし機械でのコントロールとなるため、自身の靱帯でコントロールするCRタイプと比べて”違和感を感じる”や”滑らかさに欠ける”などの問題も考えられる
※PSタイプとCRタイプで明確な差は断言できる所までは至っていないようです
【TKAのPSタイプのリハビリでの注意点】
歩行・起立動作中にインプラント間の過伸展や後方移動による大腿骨コンポーネントとポリエチレンインサートのポスト前方部分が接触する前方インピンジメントが起こることがあり、ポリエチレン摩耗の原因となる可能性が示唆されている
膝関節のバイオメカニクスより引用
このようなリスクがPSタイプには存在します。
TKAのCRタイプのロールバック機構
CRタイプの特徴やロールバック機構についての詳細です。
図:TKAのCRタイプについて
【CRタイプの特徴】
・Opeの際にPCLを温存し、このPCLの機能を使ってロールバック機構を再現している
・通常の膝関節と同じようなロールバック機構が術後でも再現される
※より健常の膝に近い状態
・術後の経過が、PCLの状態に左右される場合がある
※CRタイプはPCLの問題がないことが前提(PCLの変性や断裂などがあれば膝関節の後方支持組織は破綻していることを意味するため)
【インサートの特徴】
・PSタイプに比べ、前方部分の傾斜がややついている
・PCLでのロールバック機構および後方制動となるため、インサートに特別な突出物は無し
※PSタイプの場合はポストが設置されている
【ワンポイント】
もしも、術中にPCLの機能不全を発見した場合は、リップの高いインサートに変更して、インサートにてPCLの不完全さを補うこともあるようです。
【TKAのCRタイプのリハビリでの注意点】
・SHMを意識した可動域訓練を検討
・ロールバック機構が正常に行われているかの評価(PCLがしっかり機能しているか)
・術後の痛み(PCLはACLほど受容器が豊富ではないため、靭帯の残存による過度な疼痛は少ないようですが・・・)
2.まとめ
今回はTKA術後のロールバック機構について考えていきました。
TKAの場合、人工の関節を入れるわけなので、術前の膝関節とは全く違ったものになると思ってしまう事もあると思います。
しかし、意外とそうではなく、入れ替える人工関節も出来るだけ通常の膝関節と同じような動きになるように研究されています。
つまり、中身が変わっても膝関節そのものの動きは術前と同様のものになっているわけです。
今回の話のメインであるロールバック機構に関しても、
TKAの機種によってロールバック機構の再現方法に違いはあるものの、いずれにしても膝関節を屈曲させる過程で必ず起こる反応になります。
このロールバック機構に対してどういった部分が関与しているのかを理解することで術後のリスク管理やリハビリのメニューも変わってくると思います。
それでは本日はこの辺で。
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました!
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