TKA術後の歩行獲得および歩行自立時期は術前のTUGテストで予測できる

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TKA術後の理学療法
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どうも。

管理人のKnee-studyです。

 

今回はTKA(人工膝関節)についてです。

 

TKAは膝の痛みを取るために非常に有効な手段として、年々手術件数が右肩上がりに増加しています。

当然、痛みの軽減に伴って、移動能力の向上も得られるわけですが、術後の各歩行獲得期間において、その評価に担当理学療法士の主観や経験が影響し、客観性に欠ける点が挙げられます。

 

今回はこのTKA術後の歩行獲得時期や歩行自立時期について、実際の臨床場面で感じる事と、歩行の獲得および自立に影響する因子を文献を交えて考えていきたいと思います。

 

 

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1.現場で感じるTKA術後の歩行獲得までの道のり

まずは実際の臨床で感じることから書いていきましょう。

TKA術後数日は痛みが強く、なかなか立てない

術翌日~2日目などは立ち上がるための膝の屈伸で痛みを訴え、立ち上がるまでに時間を要すことが多いです。

意外と立ってしまえば歩けるといったケースは多いです。

しかし自力で立つことにかなりの労力を要すため、動くのが億劫になることもしばしば・・・。

 

術後3~4日で移動が可能になるが、まずは歩行器からがスタンダード

歩行自体はこの時期から可能になりますが、多くは歩行器を使用しての移動となります。

たまに独歩ないし杖歩行にて移動可能な方もいますが、大半は歩行器から開始していきます。

 

術後1週間から2週間で杖歩行ないし独歩自立へ~本来の移動手段になっていく~

この辺りから、歩行に対してはある程度自信がつく時期になります。

しかし、膝の痛みやこわばりなどが残存することが多く、歩容の改善が必要な場合が多いです。

 

 

2.TKA術後の移動手段の獲得および自立を判断する上で困ること

次は実際に、TKA術後に歩行が可能になったけど、自立にしていいか悩むケースがありますが、その背景についてまとめていきます。

 

高齢の場合

TKAの適応年齢は年々広くなっており、比較的高齢の方でも既往歴や身体機能に問題がなければ

手術を行うこともあります。

 

当然、60歳代、70歳代であれば身体機能および認知機能はしっかりされており、術後もそんなに気にすることなく歩行自立に移行可能です。

 

しかし、80歳代や90歳代(稀ですが)になると、転倒リスクを考慮して歩行自立のタイミングを考えていく必要が出てきます。

 

 

転倒リスク

前述の話の続きになりますが、

”術前に転倒歴があること”や”歩行状態が悪い場合”などは術後の転倒リスクが高くなるため、自立への変更は悩みます。

 

定期的なバランス評価や適切な歩行補助具の使用を促し検討していきます。

 

疼痛回避行動が多い

術後の膝痛が強い場合、自立の時期を遅らせる場合があります。

また自立に踏み切れないケースもあります。

 

逆に安定性自体は高いため、杖歩行ないし独歩自立に変更した途端、痛みが強くなって歩行状態だけでなく、膝の可動域制限が強くなる例も存在します。

 

このような場合で身体的な問題からくる痛みの要素が少ないと判断される場合は、痛みの捉え方などメンタル的な要素が関わっていることがあります。

この場合はPCSなどの評価を並行して行いながら判断していきます。

 

歩容が悪い

そもそも歩容が悪い際は、無理に移動手段の変更を行うと悪い歩行を学習し、不要な痛みや可動域改善の妨げになる可能性があります。

 

 

3.TKA術後の歩行獲得に影響する因子は「術前のTUGテスト」である

実際の臨床では上述したようなことを考えながら歩行自立を検討していきます。

術後の転倒は最も避けたいところであるため、適当に進めていいものではありません。

 

文献では、術前のTUGテストの結果が、術後の歩行獲得および自立時期と関連していたとの報告があります。

これは、術前のTUGテストの結果が良ければ、術後は比較的早期から歩行を進めてもいいということになります

逆に、術前のTUGテストの結果が悪ければ、術後の歩行訓練及び自立への変更は少し慎重にしていくべきであるとも言えます。

 

以下に関連する文献をいくつか紹介します。

 

 

TKA術後の歩行および入院期間に及ぼす影響について研究した文献

●対象は28例31膝

●術前因子は、TUGテスト・VAS(安静時・歩行時)・両膝屈伸ROM・FTA(大腿脛骨角)・JOA score・BMI・年齢の7項目

●術後因子は、歩行器獲得時期・歩行自立時期・入院期間の3項目

●上記の「術前因子」と「術後因子」の関連性を検討している

●結果は、TUGと歩行器獲得時期および歩行自立時期に有意な相関が認められた

●その他の結果として、どの術前因子も「入院期間」との間に有意な相関は認めなかった

 

【ポイント①】

術後の自立歩行獲得期間の予測に際しては、疼痛やROMといった単一的な膝関節機能ではなく、TUGのような複合的な移動能力を加味していく必要性があると考えられる。

 

【ポイント②】

入院期間に関しては、身体機能以外の因子として、心理的要因や社会的要因などにも着目する必要がある。

※近年、患者中心の医療を提供する上で、患者立脚型アウトカムによる健康関連QOLの評価が重要視されている。

引用文献:眞田祐太朗ら 人工膝関節全置換術施行前の身体機能が術後の歩行および入院期間

に及ぼす影響 理学療法科学 29(2):197–200,2014

 

 

TKA術後の早期歩行獲得に関する文献

●対象は変形性膝関節症によりTKAを施行された113名

●術前の評価は、膝ROM・膝関節伸展筋力・10m歩行時間・5回立ち座りテスト・TUGテスト

●杖歩行自立に要する期間と術前の評価項目、年齢、BMI、各手術情報との関連性を検討

●さらに杖歩行自立に要する期間と有意な相関関係を認めた項目も検討

●結果として、術後から杖歩行自立に要した期間は、術前におけるTUG、10m歩行時間と有意な相関関係を認めた

●さらに、杖歩行自立に要する期間を決定する因子として、術前のTUG、10m歩行時間が抽出された

 

【ポイント】

TKA後早期の杖歩行自立に要する期間の予測に最も有用な術前の運動機能はTUGあることが明らかとなった。

単純な伸展筋力などではなく、術前の歩行能力や立ち上がりからの歩行、方向転換動作などを含めた総合的な移動能力が杖歩行自立に要する期間に関連することが示唆された。

 

引用文献:飛山義憲,山田実,和田治ら:人工膝関節置換術後の早期杖歩行獲得に影響を及ぼす因子の検討.第51回近畿理学療法学術大会抄録集,2011: 10

 

 

4.まとめ

今回は、TKAについて記事をまとめていきました。

TKA術後は比較的早期から移動手段が確保でき、早期から積極的なリハビリが可能になることが大半です。

しかし、全くの問題がないわけではなく、高齢化が進み高齢者でもTKAを受ける割合が増えてきています。

それに伴って、転倒リスクや合併症などのリスクが潜んでおり、我々理学療法士も事前の身体機能の評価の必要性は高くなっています。

 

今回紹介した文献では、術前のTUGテストの結果が術後の歩行獲得および自立時期と関連していると結論付けられており、

術前からTUGテストを行うことで、術後の経過がある程度予測できるとされています。

 

TKAを施行される予定のある患者さんを担当している場合は、あらかじめTUGテストを行い、術後の経過を予測していくことをお勧めします。

 

それでは本日はこの辺で。

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました!

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