どうも。
管理人のKnee-studyです。
今回はTKAについて記事にしていきます。
今現在、人工膝関節置換術は片側の場合と両側同時に人工関節を入れ替える2パターン存在し、Drの判断によって選択されます。
文献では片側の膝OA(変形)がある場合は、高確率で反対側にもOAが存在しているとされており、片側のTKAを行っても、後を追うように反対側のTKAを行うケースが多いとされています。
膝OA患者の93%が反対側も症状を有する
引用文献:Mont MA, Mitzner DL, et al. :History of the contralateral kneeafter primary knee arthroplasty for osteoarthritis. Clin Orthop Relat Res 321:145, 1995
このように、TKAを受ける患者の多くが両側膝OAを有している状態といえるわけです。
このことから、片側TKAよりも両側TKAを行う方が効率的であるように思います。
今回はそういった同じTKAでも、片側のみを選択すべきであるのか、両側を一気に入れ替えるべきなのかについて文献などの情報をもとに考えていきたいと思います。
1.文献から見た両側TKA vs 片側TKA
文献レベルで両側の人工関節と片側の人工関節はどちらが有効であるのかを見ていきたいと思います。
当然、TKAに至る変形性膝関節症の状況によって両側なのか片側なのかの判断がつくわけなので、どちらが優れているといった意味ではありません。
それぞれの適応の理解や、経過の話を少し具体的にまとめていきます。
両側の人工関節を勧める文献一覧
両側TKAの場合、一度の手術で終わるため、コスト面やトータルの入院期間が短縮するなどのメリットが挙げられます。
その反面、術後のリスクが片側TKAに比べやや上昇することも示唆されていることも事実です。
そういった背景の中で、近年は両側TKAを行う施設が増えてきています。
そこには、以下に紹介する研究の結果が影響しているものと思われます。
初回片側TKA患者における研究では、初回TKAを施行した患者のうち約30%が5年以内に反対側TKAを施行し、その内1/3が初年度にTKAに至る
引用文献:P Walmsley, A Murray, et al. :The practice of bilateral,simultaneous total knee replacement in Scotland over the last decade. Data from the Scottish Arthroplasty Project. The Knee 13:102-105, 2006
片側TKAを行っても、数年以内に反対側のTKAに至るケースが思っているよりも高い状況にあります。
これは冒頭で説明したように、膝OA患者は片側のみに症状がある場合でも反対側も同じようにOA(変形)が存在している確率が非常に高いことが影響しているものと思われます。
5年間で26%、10年間で約36%が反対側TKAに至る可能性がある
引用文献:SA Sayeed, YA Sayeed, et al. : The risk of subsequent joint arthroplasty after primary unilateral total knee arthroplasty,a 10-Year Study. J Arthroplasty 26(6):842-846, 2011
このように、片側TKAを行っても数年以内に反対側のTKAに至ることがわかっているのであれば、一度に両側のTKAを行った方が効率的であるという思考になりつつあると思われます。
初回TKA10年後37.2%が反対側TKAを施行し、反対側TKAへの危険因子としてKellgren-Lawrance分類(K-L分類)が抽出され、膝OA患者がTKAに至る危険因子として報告されている
引用文献:M McMahon, JA Block.:The risk of contralateral total knee arthroplasty after knee replacement for osteoarthritis. J Rheumatology 30(8):1822-1824, 2003
例えば、片側のTKAを行ったあと、しばらくの間、健側として機能するのは術側とは反対の下肢になります。
つまり、状況によっては片側のTKAを行うことで、これまでそこまで負荷がかかっていなかった反対側の膝に急に負担がかかってくることが懸念されます。
こういった膝の環境下でベースに膝OAがあれば当然悪化していくことは十分に予測できますよね。
この辺が、片側のTKAを実施後、比較的早い段階で反対側のTKAが施工されている一つの因子であると思われます。
反対側の膝にもOAが存在する場合は、両側TKAが望まれるのではと思われます。
ただし、両側TKAを行う上でのリスクを考慮するべきです。
思考を変えると、片側TKA術後のリハビリを行う場合は、上記のような背景を理解したうえでリハビリプログラムを検討する必要があります。
※反対側の膝への考慮も大切ということです。
片側のTKAを勧める文献一覧
片側の膝が極端に変形している場合は片側のTKAが選択されます。
術後は、非術側の下肢を軸にしてより早期からADLupが可能になります。
その反面、健側つ術側で左右の違和感を感じやすくなったり若干の脚長差(術側が伸びる)が生まれることが臨床での問題点として挙げられます。
・片側のTKA患者を対象とした研究では、前額面上における下肢のアライメントに非対称な変化を生じさせうると報告されている
・TKA後は非手術側の膝関節に屈曲拘縮が存在すると、脚長差が生じることで手術側の膝関節も軽度屈曲位となり完全伸展を妨げる
・過去の研究においても、一側の膝関節拘縮は対側の膝関節に影響を及ぼすことが報告されている
引用文献:Kengo Harato, Hiroki Yoshida, Toshiro Otani:Asymmetry of the Leg Alignment Affects Trunk Bending in the Coronal Plane After Unilateral Total Knee Arthroplasty.The Journal of Arthroplasty 28 (2013) 1089-1093
以下のサイトでは英語論文を日本語に翻訳してくれていてわかりやすいです。
片側の人工膝関節置換術後における非対称な下肢アライメントは前額面上における体幹側屈に影響を及ぼす
このように、TKAを行うことで、膝の屈曲拘縮が改善することが多いですが、反対側の膝に屈曲拘縮を認める場合、立位で脚長差を生じます。
そのため姿勢調整が働き、手術によってせっかく伸びた膝も、非術側に合わせて再び屈曲位での姿勢制御となる可能性が出てきます。
対象症例は32例(両側TKA13例・片側TKA19例
・片側TKA群に比べ、両側TKA群の術後入院期間は有意に長くなった
・術後3ヶ月の膝関節筋力は片側TKA群が有意に高値を示した
※両側TKA群の術後回復過程は片側TKA群に比べ遅いことが示唆された
・両側TKA群の膝関節筋力は退院時と術後3ヶ月の間に変化はなく,片側TKA群では退院時に比べ術後3ヶ月で有意な改善が認められた
引用文献:大河原ら 両側同時人工膝関節全置換術と片側人工膝関節全置換術の術後膝関節機能の回復過程の検討
術後の脚長差や違和感の左右差などの課題がある反面、両側TKAと比べて「機能面」はやはり片側TKAの方が改善度が高いという研究結果も出ています。
片側TKAと両側TKAを比較した研究はいくつか散見されますが、多くは在院日数の比較や術後リスクの比較などが多く、機能面に着目した研究が少ないのが現状です。
そのため、機能的に片側TKAと両側TKAはどちらが良いのかは不明な部分がありますが、上記のような結果もあるということですね。
2.まとめ
今回は、両側の人工関節と片側の場合でそもそも何がどう違うのか?どちらが効率的でメリットが大きいのか?などを理解するために記事にしていきました。
近年では両側同時TKAを行う施設が増えてきて、TKA術後のリハビリの考え方も少しづつ変わってきているように思います。
片側TKAと違い、両側とも人工関節に入れ替えるわけなので、「健側」という概念が無くなります。
そのため術後のADL訓練を行う際に「健側下肢」が無くなるわけなので、軸にする下肢が無く不安になる患者さんもいます。
そういった場合の、動作指導のポイントや介入の仕方は片側TKAの場合と少し違ってきます。
現状、両側TKAのデメリットは術後のリスクが高くなることや機能回復の遅延の可能性が挙げられています。
その反面、片側TKAの場合は、術後数年後に反対側のTKAを行う率が非常に高くなっており、結局両側を人工関節に入れ替えるといった例が増えていることが課題となっています。
両者ともに課題やデメリットがあり、逆を返せばデメリットを事前に把握してそれに対して対応することで、デメリットがデメリットがでなくなることが考えられますね。
それでは本日はこの辺で。
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました!
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