どうも。
管理人のKnee-studyです。
今回は、膝OAや人工膝関節術後に見られる異常歩行についてです。
膝OA患者に関しては、主に疼痛回避行動をとった結果が、異常歩行に繋がっていることが大半である気がします。
対して、人工膝関節術後患者に至っては、膝OA時代の異常歩行パターンがそのまま残った結果として異常歩行が改善されていないケースが多いように思います。
「手術によって関節性の疼痛が消失したにもかかわらず(構造上の改善が得られているのに)、歩行のパターンは術前と変化がない」
という事例はセラピストとして患者さんのリハビリを行う際に感じることは多々あると思います。
今回は、そういった異常歩行について膝OAや人工膝関節術後に多いパターンを紹介していこうと思います。
膝OAやTKA術後の異常歩行パターンについて
膝OAにおける代償歩行・異常歩行としては、lateral trunk lean gait(体幹の支持側への傾斜歩行)とtoe out gait(つま先を外側に向けた歩行)が代表的となります。
●lateral trunk lean gait(体幹の支持側への傾斜歩行)
体幹を荷重側に傾斜させることで膝内側にかかるストレスを軽減させている
●toe out gait(つま先を外側に向けた歩行)
足圧中心点からの床反力線と膝関節中心点までの距離(レバーアーム)を短くすることでKAMを減少させている
※どちらの異常歩行も”床反力ベクトルと膝関節中心との距離を小さくする歩行戦略”である
この2つの異常歩行は、膝のストレスを軽減させるために起こった問題となります。
この異常歩行を理解するためには「KAM」という用語を理解する必要があります。
KAMとは外部膝関節内転モーメント(knee adduction moment:KAM)のことをいい、膝関節内側コンパートメントに生じる圧縮負荷を反映する指標とされています。
膝OAの歩行の特徴である歩行速度の低下、ステップ長の減少はKAMの増大に対応するための歩行戦略であることが報告されています。
また、KAMが増加すると膝OAの進行リスクも増加するといわれ、単純X線画像上での膝OAの重症度の予測因子としても挙げられています。
KAMを減らす歩行修正には、立脚側のtoe-out角度の増大、体幹の支持側への傾斜、歩行速度の低下、歩行補助具の使用等があると報告されています。
KAM(外部膝関節内反モーメント=膝の力学的負荷)とは?
●膝関節の内側に生じる圧縮負荷を反映する指標とされている
●膝OAの進行予測・治療効果判定に有用と考えられている
このように、膝OAおよび人工膝関節術後の異常歩行は、膝関節の内側にかかる負担を軽減するため、つまり膝内側部の疼痛を回避するための代償機構であることがわかります。
「つま先を真っすぐして歩きましょう」。とか「身体が傾いてますよ」といった声掛けは、膝痛が強い患者さんにはよく考えて行う必要がありますね。
人工膝関節術後の場合は、関節性の問題が解消されているため、上記の異常歩行は改善させていきたいところですよね。
lateral trunk lean gait(体幹の支持側への傾斜歩行)に対する評価~治療の一例
【評価】
立ち直りの反応がしっかり出ているかがチェックポイントになる
【治療】
体幹の傾斜側への重心移動練習を実施
※このアプローチでlateral trunk lean gaitが即時的に改善した場合には、体幹のモーターコントロールの問題を疑う
※重心移動および反対側への側方傾斜が困難な場合には体幹ROMや筋力の問題を検討する。
※座位では問題は無いが、歩行で改善されない場合は下肢の影響についても検討すべき
ものすごくシンプルに書きましたが、実際に体幹の支持側への側屈が出ないように、自己修正が出来るか?を診る事が重要になります。
その反応をみて、体幹機能の問題なのか?、下肢からの影響なのか?などを評価し、治療ポイントを絞っていきます。
2.まとめ
今回は膝OAおよび人工膝関節術後の異常歩行についてまとめていきました。
結果として、膝OAで見られる異常歩行は、疼痛回避行動によるもので、人工膝関節術後の場合は膝OA時代の動作パターンが残存している可能性が高いという事になります。
術前後で、異常歩行の意味が異なり、改善すべきなのか否かをしっかり考えていく必要があるわけですね。
見えたものをすぐに変えようとする(安易な声掛け)のではなく、異常歩行が起こっている意味を考えた上で必要な改善案を検討できるようになりたいですね。
それでは本日はこの辺で。
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました!
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